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第七話 産業医面接

熱い思いを持って、ベンチャー企業で働く人たち。
縁の下の力持ちである人事の方々がこのような人たちを支えている。
ベンチャー企業に入社2年目の江川千里の産業医採用への挑戦は続く、、、

※このシリーズを初めて読む方はこちらからご覧ください。

衛生管理者資格取得の勉強の合間に、産業医紹介会社とのやりとりも進めている。

産業医紹介会社はある程度こちらの希望を聞いてくれるので、なるべく若い精神科の先生を、とお願いしていた。

その返事が来たのが2週間後である今日だ。驚くべきことに、約30名もの産業医の履歴書が送られてきた。

特に強く斡旋してもらったわけではない。この30名は、紹介会社に弊社の情報(業種や事業場)を産業医のメーリングリストに流してもらい、それに応募してきてくれた医師たちだ。

「思っていた以上の応募ね…。お医者さんも産業医先を探しているということなのかしら」

病院勤務の医師は人手不足のため日勤と夜勤で永遠に忙しい、というイメージだったので、これほどの応募があったことが驚きだった。

とはいえ、まさかこの全員と面接することはできない。人数を減らすため、紹介された産業医30名の中からまずは精神科をピックアップする。

欲しい人材は若い精神科医と決まっていたが、最終的に選出した3名は、30代、40代、50代とあえて世代をばらけさせた。

若手に若手の良さがあるように熟練には熟練の良さがあるかも、と思ったからだが、さて、この初志貫徹しない迷いが吉と出るか凶と出るか。

紹介会社を介してやりとりを行い、3名の医師との面接の日程を組んで、一段落。

「よし、勉強だ。いや、その前に仕事!」

そして人事労務の仕事に戻っていった。

面接の日。
選んだ3名との面談において、千里は以前一度だけ行った面接でした質問を繰り返した。

相変わらずこういう場合は何を聞けばいいかがわからなかったし、単純に、以前面談した医師と比較するにはそれしかなかったからでもある。

「うーん、悩むー」

そして結果はご覧の通り。どの年代の医師も精神科医だけあって優しく相談しやすい雰囲気があり、とても選べないのだった。

社員採用面接もそうだが、現実ではゲームのように賢さや器用さのステータスが見えるわけではないので、どうしたって最善最優を判断することが難しい。性格面だって、一度の面接で相手の真価を見極められたら世話はない。

その上、今回の相手は医師だ。自分より賢い人、自分が仕事内容を把握できない人を正しく選出するなんて、もはや不可能に近い。

「せめて試用期間があれば…、…ん?」

千里は、以前産業医を紹介してくれた社員の話を思い出した。

「面接どうでした? 保留? ああ、他にいい医師がいるかもしれないですもんね。でも、アレだったら交渉しましょうか? 向こうも乗り気だったみたいですし」

交渉。そう、紹介会社を介して応募してきてくれた産業医と違い、知人の産業医の場合は費用面などの条件も含めて交渉できる余地があるのだ。

なぜなら知人だから。

「…ダメもとで交渉してみようかしら…」

何もわからなかった頃と違い、今なら紹介会社から来てくれた医師と比較検証することができる。

よし、そうしよう。通常業務も衛生管理者の資格取得勉強もある千里は、できるだけ楽な方に、得な方に、舵を切っていくのだった。

■次回予告
再度、知人の産業医とZoomを行う千里。悩みや迷いを相談しがてら、融通を利かせてもらえる範囲を絞り込んでいく、、、<次の話にすすむ>


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