【読書note_009】最軽量のマネジメント 山田理

理想のマネジメントとは?
本書は、働き方改革の先進企業であるサイボウズで副社長を務める著者が、マネジメント機能を最小限にする組織運営の仕組みについて、自社の事例を交えながら解説した本です。

著者は、マネージャーの役割を最小限に抑える「最軽量のマネジメント」が理想だといいます。

『この本を書く本当の理由。
それは、極論サイボウズは「マネジメントなんていらない組織が理想だ」と考えているからです。
「これからのマネジャーはどうすべきか」という重荷ではなく、
「どうすればマネジャーの仕事を減らせるのか」という軽やかさを示したい。
本書は、寄せられた過度な期待と責任から、マネジャーを解放するための本です。』(はじめに)
『マネジャーを、もっとだれでもできる役割にしたい。
抱え込みすぎているマネジメントの仕事と責任を分散させたい。
いや、むしろ「なくして」しまいたい。
サイボウズは、「マネジャー」という役割を、より希少価値が高い重要なもの、ではなく、もっと「大衆化」することに挑んできました。』(P33)

これは、世間一般の常識とは真逆の考え方ではないでしょうか。
私自身も、マネジャーは管理し、教育し、決断し、責任をとることが仕事で、役割が多く大変なポジションであるというイメージを持っていました。

著者は、マネジャーは完璧じゃなくていい、「理想のマネジャー像」なんていらない、と明言します。

「100人100通り」の働き方を目指す
それでは、著者が、サイボウズがそう考える理由は何なのでしょうか。

サイボウズは、過去に徹底した成果主義を導入し、失敗しています。
その時の反省から、社員一人ひとりが働きやすい職場を目指すことにしました。
社員「みんな」が働きやすい会社ではなく、「100人それぞれ」が働きやすい会社です。

そうして辿り着いた答えが、「100人100通りの自立」。
社員全員がハッピーになる施策ではなく、社員それぞれが自由な働き方を選択できるようにしたのです。

社員100人が100通りの働き方を選択し、自立する仕組みとしたことで、マネジャーは管理することが仕事ではなくなりました。
管理することが不可能になったとも言えます。

その結果、多くの企業で要請されるような「理想的な」マネジャー像は、不要になったのです。

情報公開がマネジメントを軽くする
では、著者が考える「最軽量のマネジメント」の要諦は何でしょうか。

それは、「徹底した情報公開」です。

情報公開により、生まれるもの。
1つ目は、「理解」です。

マネジャーや経営陣への理解。
他部署への理解。
会社全体の理解。

情報によって自分以外への理解が生まれることで、仕事にまつわる様々な事柄が自然に調整されていくのです。

情報公開に関する仕組みの中で特に印象的だったのは、各部門から自己申告方式で予算を設定するという方式です。
当初は、各部門から申告された予算を合算すると大幅な赤字になるものの、その状態を公開して再度検討してもらうと、最終的な収支が改善され利益が出る計算になるというのです。
この事例は、雷に打たれたような衝撃がありました。

そして、もう1つ生まれるものが、「主体性」です。

サイボウズでは、マネジャーや経営陣に説明責任を課す一方で、メンバーには「質問責任」を課しています。
つまり、情報は可能な限りオープンにするので、分からないことやモヤモヤすることがある場合は、そのことを質問したり問題提起しない方に責任がある、としているのです。

このような文化を作り上げたことで、サイボウズではメンバーに強力な主体性が生まれました。

多様性がますます進むこれからの社会では、メンバーが自立的に働くことが求められるはずです。
トップダウンのピラミッド型ではなく、ボトムアップのキャンプファイヤー型の組織にならなければ、変化のスピードが早い時代を生き抜くことは難しいのです。

そのために必要なことは、マネジャーが管理することをやめること。
勇気を持って仕事と常識を手放すことが、組織に進化をもたらすのだと感じました。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
Happy Reading!

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