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夫が脳梗塞になったときの話 その7

お正月を病院で過ごす哀しさ

リハビリ病院で夫の本格的なリハビリ生活が始まった。
夫の症状は右半身の温度や痛みの感覚の麻痺やしびれと嚥下障害。
入院直後は物が二重に見えていたというが、それは治ったようで、リハビリの中心はものを飲み込む練習と、主に体幹を鍛える運動。

わたしが病院に行ったときに、ちょうどリハビリが始まるときだったことがある。
理学療法士さんと夫が外に出ようとしていたとことろに遭遇、「よければ奥さんもご一緒にどうぞ!」という明るいお誘いに、つい「はい」と答えた。
その日は病院の周りを歩いてみる、という歩きのリハビリだった。
ゆっくり歩く夫。杖を使わずに歩けて良かったという思いはもちろんありつつも本当に病院の周りをくるっと歩くだけ。わたしは何が始まるか知らずに、ちょうどコートを脱いで病室においてきたところだったのだ。寒くてしょうが無くて、リハビリ早く終われと祈ってたのはしょうがないよね。

お正月も夫は当然病院だった。普通、入院していても、元日くらいはおせちっぽいおめでたい系の食事が出るものだけど、夫の鼻からの栄養にはまったく関係のない話だった。
一方わたしはといえば、準備万端だったお正月の準備。カニやお節やその他もろもろ。続々とお取り寄せ品が届いて、やるせないことこの上ない。
それまで毎日病院へ顔を出してはいたものの、大晦日はごちそうを抱えて実家に向かった。

痩せた?

父から聞かれた。そりゃ痩せもするよ。一人だと全然食事が楽しくない。
気を遣って友達が食事に誘ってくれたりはしていたが、お酒はしばらく飲まないことに決めていたので、痩せたことは間違いなかった。(もう戻ってますけどね。)

実家から戻ったらすぐ病院へ。
年末年始はリハビリの予定も通常よりも少ないようで、かなり時間をもてあましていた夫。
こっそり、病院を抜け出して病院のそばの神社に一緒に初詣に行った。鼻のチューブの上からマスクをして。なんか夫の顔もほっそりしたなあ、と思った。
小さな神社は、もう人出があまりなかった。早い回復を祈りながら手を合わせた。
なんか、老夫婦みたいになっちゃった。

つづく




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