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圧巻だった長岡花火と、その前後の街歩きの話 その① 醸造の町・摂田屋

降ってわいた長岡花火行き


「カメラは持っていく?」
「ううん。目に焼き付けた方がぜっーーーたいにいいから!花火はテレビでもやるから、自分が撮らなくてもいいの。スマホしか持っていかないよ。」

写真好きのKさんが断言するので、わたしはせっかくの長岡の花火だけれど一眼のカメラを持っていくのをやめた。こっそり、スマホ用のミニ三脚は持ったけど。
この花火に誘ってくれたKさんは長岡出身、もともと花火大会好きの人ではあるが、長岡の花火への思いはひときわ強いようで、この花火の素晴らしさについて行く前から力を入れて説いてくれた。

桟敷席が取れたから、と声をかけてくれたのだけど、誰か友達を連れてきてとのリクエスト。Kさんは夫婦で行くので、あと一人座れる、とのこと。平日なので難しいなと思いつつ、休みを取りやすいであろうベテラン会社員Sちゃんに声をかけてみたら即「休める~」との嬉しい返事。かくしてSちゃんと長岡に向かうことになった。

Sちゃんとはお昼前の新幹線で待ち合わせ。お弁当を買って乗ってね、と言ったのにも関わらず手ぶらで乗ってきた彼女は「車内販売で買うから大丈夫~」と言ってたけど、車内販売どころか自動販売機すらなかったので、何も買えなくて、全然大丈夫じゃなかった。

その点わたしなんて気が急いて早く着いちゃったもので、駅弁売り場を3周して念入りに選んだプレミアムな鮭弁当&飲み物持参。
しかたなく、見せびらかしながら食べるしかなくて心苦しかった。このご時世、回し飲みなんてご法度だし、悪く思わないで欲しい。
逆の立場なら発狂してたかもしれないな。2時間の断食行。

結局、シンプルイズベストの鮭弁当。


長岡の駅は、思っていたよりも大きかった。改札を出た瞬間から、花火・花火・花火の文字が目について、祭りの浮かれている感じがあちこちから伝わってくる。浴衣の人も多い。
夕方、K夫妻と待ち合わせするまでは、長岡を観光する予定。ちなみにSちゃんのお昼は駅のスタバ。

醸造の町・摂田屋へ


夕方までの数時間、どこで何をするかはまったく決めてなかったので、新幹線の中で慌てて検索した。
そこで目に留まったのは、酒蔵。いいじゃないですか。新潟といえば米、そして日本酒。試飲会もやっているというので、そこへ行ってみようと話がまとまった。

長岡から電車で一駅の宮内駅に行くと、摂田屋という蔵元が集まっている町があるという。目的地は、即決定した。異議なし!異議なし!

さて、ここで問題です。長岡駅から、宮内駅に行く電車は1時間に何本あるでしょう。
答え、1時間に1本。
ちょっと微妙。3、4時間で街歩き(&試飲)して戻ってこれるだろうか。行きはよいよい、になる可能性もある。ただ、バスでも行けることがわかったので、帰りもどうにかなるだろう。
出発時間の早かったバスで向かってみることにした。
駅を離れるとあっという間に空が広くなり、普通の人の暮らす街並みになっていく。から揚げ屋さんが目につくのは、最近どこも同じか。

ぼんやり外を眺めながら、バスに乗ってる楽しさを知ったのは最近だ。前はいかに早く目的地に着くかだけが重要だった。もっともそれは、約束の時間を守れない体質の自分のせいなのだけど。
(いろいろ人生を論じたくなったので、中略)約束の時間に余裕があるということは、人としての余裕につながるのだ。ちょっと良いこと言っちゃった。

宮内駅までは15分ほどで到着した。意外と近い。ちなみに電車だと乗車時間は4分。
宮内の駅前は、長岡とはだいぶ趣が違っていた。いきなり旅情を感じざるを得ない。駅舎の大きさの割に、がらんとした駅前。唯一行列があるのはラーメン屋さんだった。駅員さんにこの辺りの観光名所を聞きがてら地図をもらって、まずは酒蔵を目指す。

風情のある駅舎。宮内駅。

吉乃川で飲み比べ


曇り空はこういう時にはありがたい。暑いけれど、歩けるのが苦じゃないくらいの暑さで、時折セミがうるさい場所があって。
なんだか、昔の夏休みみたいだね。そんなことをSちゃんとしゃべりながら歩いた。大通り沿いだが、車はあまり通らない。
Sちゃんとわたしには、長岡在住の共通の知人がいる。もちろん今回の長岡行きを連絡したのだけれど、返事はこなかった。その理由も考察しながら。

歩いて10分ほどで、目的の酒蔵、吉乃川に到着。新潟で一番古い酒造だそう。なんと470年も続いていて、創業は室町時代に遡るんですと。
蔵はミュージアムになっていて、はっぴ姿の蔵の方たちが出迎えてくれた。お祭りムードはここでも。蔵の中は、そそられる香りに満ちていて、すでにたくさんの人たちで賑わっている。

みんな同じことを考えてて、蔵の中もお祭り騒ぎ

吉乃川は、長岡花火では毎回正三尺玉を上げるそうで、花火の模型も置いてあった。直径90センチの大きな玉。一抱えくらいの大きさなんだけど、花火って重いのかな。ちなみに打ち上げられると、地上600メートル位のところで花開くそう。

ちゃんと重さの説明も書いてあった。三尺玉は280㎏!

花火と酒造りの展示コーナーはあっという間にクリアし、早速、試飲コーナーへ。迷うことなく5種類の飲み比べを選ぶ。ほら、だって、暑い中歩いてきたから水分を欲しているのだ、体が。
500円なのに、飲み比べなのに、まいった。とにかく量が多い。
こっちが好き、わたしはこっち、これはおじさんぽい、なに、この新潟のおもてなし、とか言いながら飲み比べ。モニターには以前の花火大会の映像が流れていて、思わず見入る。花火の予習もばっちりだ。なんなら、おつまみも欲しくなる。

蔵の人から「フェニックスは絶対見逃しちゃだめ。その時間はトイレに立たないように」とのアドバイスをもらう。
お土産を物色して、街歩きを再開。お酒でちょっと良い気分。


蔵を巡る街歩き


吉乃川を出てすぐのところにあった、機那サフラン酒という謎の看板の蔵に引き寄せられる。
蔵の鏝絵がものすごく個性的で派手なので、寄らずにはいられない。


酒ンラフサ の看板。インパクト大。


アイデアマンだった初代吉澤仁太郎が明治時代にサフラン酒というのを作って、成功を収めたとのこと。バイタリティのある変わった人だったというのが、建物を見ただけでも窺える。蔵の2階が資料室のようになっていたのだけれど、収蔵品と見せ方の中途半端な感じが地方にありがちで、なかなか楽しい。この仁太郎氏、花火を自作して、400m離れたお寺を燃やしてしまった、などなかなか破天荒なエピソード目白押し。実業家然とした写真とのギャップが大きく、年表を見て人柄を想像するだけでも面白い。

ちなみに、サフラン酒は最初は薬草酒として、あの養命酒と人気を二分する勢いだったそう。今はリキュールとして売られている。黄色のお酒を恐る恐る味見したら、かなりの甘さの後にハーブのさわやかさ。炭酸などで割ったらなかなかよさそうな味だった。

蔵も派手にできるんだな、と目からうろこ。


その後も味噌・醤油の蔵やお寺などを見て回った。数時間の散策にちょうど良い規模の場所だ。
蔵を覗いて何か買いたくなるたびに「荷物は少なく!」とKさんから口を酸っぱくして言われていたことを思い出し、帰りに買おうと財布を引っ込めた。醤油も味噌もこれからの行程を考えると、重いしかさばる。

時折流れてくるお醤油の匂いにそそられて、どうしても買わずにいられなかったのは、「越のむらさき」の大粒柿の種。本当に大粒で食べ応えがあって、醤油の加減もちょうどよく、お酒のつまみにぴったり。あっという間に無くなっちゃったので、もっと買えばよかったと後悔している。WEBショップを確認したら、醤油と、名物のだし醤油は売っているのに、柿の種はなくてね。お土産用に買った分に手を出してしまいそうな自分を、今必死に抑えている。

お地蔵さんがかわいい「越のむらさき」


明治・大正期の建物が残るこの地域、歩いていて気づいたのは、道が赤いこと。車道は真ん中に融雪のための穴があるアスファルト。建物と道路の間が、特に鉄さびのような赤みを持っている。
土のせいだろうか、味噌・醤油のせいだろうか。他の地域もそうなんだろうか。

後で長岡出身のKさんに聞いてみると「えー、そうなの?全然気にしたことない。そもそも摂田屋に行ったことない。地元の人ってそんなもんよぉ。」とのさっぱりした答えが返ってきた。うん、うん。そうだよね。地元の人は観光地に行かないよね。

歩道がなんとなく赤い。ちなみにこれは駅前。

歩き疲れたときに、お洒落なカフェを発見。並んで入店した。有名なお団子屋さんがやっているお店のようで、かき氷はみたらし味。小皿のお団子を乗せてを食べる。

初めてのみたらし味の氷に魅了され


これにて、摂田屋観光終了。成り行きの割に充実していたので、大満足だ。
しかし、帰りもやはりちょうどいい電車はなかった。バスで長岡駅に戻る。

軽く食事を取ってからKさん夫妻と落ち合うはずだったのだけれど、食べる前に混雑する駅でKさんを見つけたので、早めに会場に向かうことになった。
Kさんはアパレル出身なので、見つけやすい色合いのファッションがお好きなのだ。駅の人込みの中でも、そこだけスポットライトが当たっているかのようで、すぐに気づいたのだった。もちろん、花火大会の混雑の中ではとても目立って助かった。

長岡駅から、歩いて会場に向かう。

つづく。








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