弁護士なしで労働審判 | 金銭的・精神的に納得する結果を得るまで

はじめに

約4年勤務した職場から不当な理由で雇い止めされ、最終的に弁護士なしで労働審判を起こし、その解決金や失業手当で約半年自由に過ごした、という経験を元に、不当な解雇・雇い止めなど、職場との間に問題が起こったが、弁護士を雇うには金銭的に厳しい、という方のために記事を書き公開することにしました。

この記事に辿り着いた方はある程度労働審判についてご存知かと思いますが、詳しくは裁判所の説明をご覧ください。

労働審判に至るまで様々な段階があったので、以下の記事にまとめています。

労働審判よりも前の段階で解決するのであれば、お互いに良いに越した事はないので、いきなり労働審判する前に、上記の記事に書かれている事を試してみることをお勧めします。

また、労働審判に至るまでに色々と行動してきた、という証拠にもなります。

今回は4年間毎年契約更新が行われていたというケースで、契約更新年数や回数によって同じようにはいかないこともあるかと思います。

ちなみに、上記の記事にも記載しましたが私が経験したケースはとても特殊です。
どのように「特殊」であったかは後記します。
内容は上記の記事に書いたことと同じです。
はっきり言って読んでも読まなくてもいい内容なのですが、読むと良い点としては「この状況でもできたのなら自分だったらもっと簡単にできるのでは?」という自信がつきます。

「頑張ったね。飲み物一杯奢るよ」という感覚で、気が向いたら見てやってください。

弁護士なしの労働審判について、無理と言ってくる人がいたり、ネット上でそのような情報をみることもあると思います。

しかし、今回のように弁護士なしで特殊な状況で、納得のいく結果を出せたケースもあります。

泣き寝入りせず、戦おう。


労働審判の準備

1. 労働審判の申し立てに必要な書類を集める

必要書類は裁判所が出しているこちらに沿って集めました。

上記リンクのPDFをチェックすると「正本」「写し」「相手方の数 + 3」と書いてあるのですが、こういう意味です。
自分用(正本)
裁判所提出用(コピーx1)
相手方用(コピーx1)
労働審判委員会用(コピーx3)←労働審判委員が3人なので3部必要

労働審判前の段階ではセブンイレブンのネットプリントを使っていたのですが、労働審判では何部もコピーが必要で書類が膨大な量になるので、大量印刷できる場所がオススメ。
私はキンコーズを利用しました。

以下、各必要書類について追記していきます。

■労働審判手続申立書
裁判所のサイトにあるサンプルを見ながら書きました。
書き終わったら労基の担当者の方や、無料の弁護士相談で確認してもらいました。

■予想される争点についての証拠書類
契約書や今までのやり取りのメール・チャットのスクショや録音内容など、証拠になる書類を用意します。
以下提出した証拠書類:

  • 契約書(働いていた4年分)

  • 雇い止め通告を受けてから労働審判までの全てのメールのやり取り

  • 相手方から送られてきた雇止理由通知書(相手方に要求する方法はこちらで解説しています)

  • その他相手方から送られてきた書類

  • 相手方弁護士から送られてきた書類

  • その他相手方が述べる雇い止め理由に反論する証拠となる書類(病院の診断書、LINEのやり取りのスクショ等)

  • 社員・元社員など職場の人の証言(証言者本人に事実を書いてもらい、捺印してもらいました。今回2名協力者がいました。)

  • あっせん」を行ったことを証明する書類(あっせん申請書・あっせん確認書・あっせん開始通知書・あっせん打ち切り通知書)

  • 反訳書(相手方会社との電話の会話の録音を書き起こしたもの。書き方は「反訳書 書き方」など、ネットで検索すると出てきます。録音した証拠はこの方法で書面にします。)

  • 陳述書(事実関係を裁判所へ詳細に説明するため、当事者の名義で作成する書面。こちらもネットで探すと色々と例が出てきます。本件に近い労働審判の内容で書いたサンプルがあったので参考にしました。必須ではないですが労働審判手続申立書に書けなかった詳細や感情面についてなどもこちらに書きました。)

    それぞれの書類の右上に「甲第#号証」と番号を振ります。
    書類が原本で番号を直に書けない場合などはポストイットなどに書いて右上に貼りました。
    番号の順序は労働審判手続申立書に出てくる順にしました。
    労働審判手続申立書の方にも、関連する文章が出てきたらその都度出典番号を書いていきます。
    労働審判手続申立書のサンプルを確認してみてください。

■証拠説明書
上記の各証拠書類についてリストにしたもの。
こちらも裁判所から書き方のサンプルが出ています。

■資格証明書
こちらは最初は何か分からず、裁判所に尋ねたところ代表者事項証明書という書類とのことでした。
会社の代表者氏名や住所、商号などの情報が記載されている紙です。

証明書は全国の法務局で誰でも交付申請できます。
場所によって異なる等あるのかもしれませんが、法務局内にある機械で、会社名を探すという申請方法でした。

発行に手数料もかかりますが、そちらも最寄りの法務局で尋ねれば教えてくれます。
窓口、オンライン、郵送など方法によって金額は変わるようです。

■申立手数料(収入印紙)
申立手数料として収入印紙を購入します。
購入金額は申立の価額によって変わり、こちらもネットで検索すると出てきますが、よく分からない場合は裁判所に尋ねるのが一番良いと思います。

ちなみに、労働審判手続申立書に申立の金額と印紙の額を書く箇所がありますので、労働審判手続申立書を書いている時点で尋ねるのが良いと思います。

私は申請の際に裁判所内にある売店で購入しました。

■郵便切手
裁判所が申請書類を相手方へ郵送するので、そのための切手代です。
こちらも申請の際裁判所で確認して、裁判所内に売店があったらそこで購入するのが良いかと思います。

2. 裁判所へ書類を提出

書類を裁判所へ提出。

提出部署は民事部となりますが、裁判所で尋ねるとどこへ提出すればいいか教えてくれます。

印鑑を押す場面があるので、お忘れ無く。

ちなみに、提出後に裁判所から書類に訂正が必要な箇所があると連絡が来ました。
また、証拠が増えた場合なども書類を追加することもできると教えてもらったので、書類の追加も行いました。

訂正や追加が必要な場合は訂正申請書を追加で提出します。
証拠資料を追加する場合は追加分の証拠説明書も訂正申請書の中に入れます。

提出から数日後、電話で労働審判の日程調節が行われて、決定したら「期日呼び出し状」という労働審判の第1回期日等が書かれた書面が裁判所から送られてきます。

3.答弁書に対する準備書面の作成・提出

書類提出後、相手方(弁護士)から答弁書・証拠書類・証拠説明書が送られてきます。

答弁書の提出期限は第1回期日の10日ないし1週間前程度と設定されているようです。

必須ではないですが、第1回期日までにその答弁書に対する反論として「準備書面」を提出しました。
第1回期日まで残り少ない日数かもしれませんが、できれば提出したほうがいいと思います。

書類は準備書面と題し、相手方の答弁書の各項に対して1つ1つ順番に答弁していきます。
(相手方の答弁書はでっち上げの証拠や嘘ばかりでイライラすると思いますが、冷静に1つずつ回答していきましょう。めちゃくちゃなことが書いているのはあるあるのようです。)

  • 事実であれば正直に「事実である」と書く

  • 事実と異なれば「事実と異なる」と書いてその理由と証拠を記す

  • スルーされて説明・証明されていない事柄(でっち上げの証拠すらも準備できない、または会社にとって回答するとマイナスになるのでスルーしている)もあったので、「答弁・説明・証明されていない件」についても記す

準備書面が書けたら急いで提出しましょう。
郵送もできますが、第1回期日まで日数がないのでできれば裁判所へ直接持ち込みで提出がよいと思います。

労働審判当日

裁判所から送られてくる期日呼び出し状に記載された日時に裁判所へ向かいます。
到着後どこに行けばいいかも記載されています。

記載された場所で手続きをしたら、待合室に案内されます。
待合室は相手方と別々になります。

労働審判を行う部屋へ案内されますが、人数に対して大きめの普通の会議室でした。
コの字型に長机が置かれていて、自分は相手方と向かい合う形で、3名の労働審判委員はコ←の部分に座るという配置でした。

まず自己紹介や労働審判委員から概要の説明があって、労働審判委員から双方が質問されていき、回答します。

準備書面までしっかり用意していたからか、あまり質問されずそんなに話さなくてよかったです。
逆に相手方はかなり質問攻めにあっていました。

素人が書いた文書ですが、労働審判委員の方々がしっかりと隅々まで読んでくださっていたんだなと感じる場面が何度もありました。

一通り双方から話を聞いたところで一方が待合室に戻る、を2回繰り返しました。

最後に待合室から会議室に戻されて、全員揃ったところで調停成立したことが告げられ、調停条項や今後の流れなどが告げられました。

相手は先に退出して、こちらは解決金の入金の手続きなどの説明等聞きました。

今回は1回目で調停成立しましたが、労働審判は全3回なので、2・3回目までいくことや、控訴手続きに進むこともあると思います。

後日決まったことが労働審判手続き期日調書という書面で送られてきます。

労働審判を終えて

タイトルにもありますが、労働審判をして金銭面はもちろん、精神面でも納得ができる結果を得られました。

金銭面では、相手方から納得できる金額で解決金が出ました。
もちろん金額は高ければ高いほど良いですが、労働審判委員の方も相手方に出せる限り出してもらえるようにする、とおっしゃっていたので、決定した金額が相手方が出せる限りの金額であったのだと思います。

労働審判ではどちらが正しい・間違っている、良い・悪い、という判決が出るわけではありませんが、労働審判委員の態度、会議室の空気はこちらにとって優位であると終始感じました。

また、相手方が労働審判委員に色々と質問されている・注意を受けている場面がありました。
第三者、しかも法や経営に携わる大人に相手方が詰められている場面を見るのは精神的にもスッキリとしました。

雇い止め通知を受けてから労働審判まで約半年かかりましたが、本当にやって良かったと思います。

その他やること

労働審判の解決金の他に、失業手当も出ました。

こちらはハローワークに申請する必要があります。
詳しくはこちらで確認できます。
最寄りのハローワークに行って説明を聞くのも良いかと思います。

自己都合と会社都合退社で金額も入金を待つ期間が異なります。
今回は確実に会社都合ですが、会社が勝手に自己都合にする場合もあるという話を聞いたので、反論する準備もしていましたが、ハローワークで確認するときちんと会社都合になっていました。

解決金と失業手当で過ごしていた期間は、理不尽な理由で不当に雇い止めされ傷つき、労働審判の準備で疲れた心が癒されるのには十分な期間でした。

ハローワークで新しいスキルなどを取得できるクラスも紹介してもらえたり、中には給付金をもらいながら学習することもできるクラスもあるようなので、別の業種に転職したい方などはその期間に受講しても良いと思います。

何か特別な理由がある方は別ですが、もし可能であれば次の仕事を見つけるまで少し間を取って、ゆっくり過ごしてください。

「特殊」とは?

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