奥ゆかしくてまどろっこしい
ジントニックの入ったグラスをゆらゆら揺らす。
氷がからんと音をたててグラスにあたる。この音がたまらない。
さらに平日に飲むというこの背徳感が,いつも以上に美味しく感じさせてくれる気がする。
最近はもっぱらビール,ジントニック,冷酒をぐるぐるローテーションして飲んでいる。今はあれこれ試すより,お決まりのものをゆったりとしたペースで飲みたい気分なのだ。
このグラスが空になったら,次は日本酒と決めている。
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お酒好きを知っている友人が,誕生日に可愛らしいぐい呑みをくれた。
角度によって,キラキラ光るのでいつまでも見ていられる。これまで使っていたコップで飲んでも味気ないなと思っていたので,とても嬉しかった。
冷蔵庫の中からとっておきの日本酒を出してきて,そっと注いでみる。
とくとくと注がれる日本酒に思わずにんまりしてしまう。こう毎日暑いととりあえずビール!と言いたくなるが,こんな季節だからこそ実は冷酒が美味しい。
燗にいくつも名前があるように,冷酒も温度によって,涼冷え(すずびえ),花冷え(はなびえ),雪冷え(ゆきびえ)と呼び方が違うらしい。15度から5度刻みで呼び名が変わるとのこと。
その呼び名の美しさにぐっときてしまった。温度の説明が名前でわかるわけではないのに,情景が浮かんでなんとなく分かるのがすごい。
まさに、いとおかし。
カクテルの名前も素敵なものが多いが,同じお酒なのに温度によって名称が変わるのは日本酒くらいではないだろうか。色でも情景でもほんのわずかな違いを表現できる日本語が,たまらなく好きだな,と思う。
高校時代,英単語は何度読んでも全く頭に入らなかったのに古語単語はいくらでも覚えられた。英語を悪く言うわけではないが,cold colder coldestと言われてもなんだかなぁと思ってしまう。きっと私は,よく言えば奥ゆかしい,なんともいえない日本語特有のまどろっこしさが好きなのだ。
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日本酒が好きな話か,日本語が好きな話かだんだん分からなくなってきたが,そんなことをお酒の席で偉そうに語らないよう,気をつけようと思う。
酔っ払いが語るうんちくほどつまらないものはないのだから。
そのお気持ちだけで十分です…と言いたいところですが、ありがたく受け取らせていただいた暁にはnoteの記事に反映させられるような使い方をしたいと思います。