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『映画ドラえもん のび太と雲の王国』〜夢のない世界なんてつまらない

※この記事には結末までのネタバレが含まれます


私が子供の頃、よく観てたアニメと言えばドラえもんやクレヨンしんちゃんである。
特にドラえもんは大好きで、毎年映画館で劇場版ドラえもんを観るのが楽しみだった。その映画館も今では閉館してしまい、少し寂しかったのを思い出す。

最近映画ドラえもんが、アマプラで全作公開されたので、休みの日には必ず観ている。
今見ると突っ込みどころも多いけど、今だから気付くことも沢山あったので、のんびり作品を鑑賞しながら語ってみる。

1.のび太の自由な発想

この『雲の王国』や『竜の騎士』、『パラレル西遊記』もそうだけど、のび太の夢のある発想が物語の導入になる。
冒頭「雲の上に天国は存在する」と、図書館で調べ物をしてまで主張するのび太。子供ってありもしないものを夢見るのが好きだけど、のび太を見ていると自分も昔はそうやって空想していたなア、と懐かしい気持ちになる。
そののび太の努力は、ドラえもんの「宇宙には衛星があって、世界中の空を監視しているからありえない(要約)」という一言で台無しにされるわけだが。のび太しょんぼり。
まあ結局、そんなのび太を可哀想に思ったドラえもんと共に、雲の上に天国という名の理想郷ーー雲の王国を1から作り上げることになるのだけど。

ドラえもんって、のび太の無茶なお願いに対して「そんなの無理」と厳しく突っぱねる時と、なんだかんだ文句をぶちぶち言いながら手伝ってくれる時と、あまり前向きにのび太を先導することって意外と少ないんだけど、この『雲の王国』では珍しくドラえもん側がやる気でビックリ。
“雲固めガス“とか“ロボッター“とかいろんな道具を出して積極的に王国作りに協力してくれる。

ふわふわの雲を整地して、ぺったんこでツルツルの真っ白い大地が出来るシーンが綺麗で地味に好き。
1から理想の町を作り上げるってゲームでもそうだけどワクワクする。ここにコレを置いて、ここには川を作って、とか。私がドラクエビルダーズにハマったのも同じような理由なので、ここら辺のシーンが1番ワクワクして好きだ。

2.子供にとっての理想郷


ドラえもんの映画って、のび太の発想を元に自分達の安息の場所を作り上げるものが結構多い。
ねじまき都市しかり、日本誕生しかり。
先生にも、親にも誰にも邪魔されない理想郷
これって意外と子供には大事なことで。
ひとりになれる時間、ひとりで好きなことを好きなだけ出来る時間って子供には意外と少ないので、子供の頃、家でひとりで留守番しなきゃいけない時って、不安もあったけどめちゃくちゃワクワクしたなぁ。
のび太達が偉いのは、そういう自由な時間を過ごしても、必ず夜には家に帰るところだ。
非日常を堪能したら、必ず日常に戻っていく
そういうメリハリは、現実世界においても大事なところだと思う。

途中、雲の王国を建設する資金が足りなくなり、株式投資を思いつくのび太。
ドラえもんの「お金がないんだ!しょうがないだろ!」がリアルで面白い
夢とか空想一辺倒にならないのがドラえもんの面白いところ。
結局お金持ちのスネ夫に3万円投資して貰って、ドラえもんは未来デパートに買い物に行くわけだけど、ロボッターとかが高いって言う割には、3万円でそれなりの数を仕入れられるんだから、実はそんなに高くないのか?と思ってしまう。
1体1000円くらいなのかしら。

そうしてスネ夫の資金力と未来デパートの力で完成した王国は、めちゃくちゃ夢の都市に成長している。
ドーム球場とかゲームセンターっぽいのとかテニスコートとか。
まあ、外側の建物は結局雲で出来てるのだから、材料費は0円で済むけれど、内装は一体どうしたんだろう。
のび太の家にはテレビもある。
絶対3万円じゃどうにもならないと思うんだけど、実は未来では型落ちのテレビだから100円とかで売ってるのだろうか。テーブルとかも古いから10円とか?
でも骨董品コレクターとかもいそうだから、プレミアがついていたりはしないんだろうかと気になってしまう。

3.テーマ云々抜きにして


『雲の王国』は環境問題がテーマである。
のび太達は完成した雲の王国を優雅に堪能したのち、ひょんなことから本当に存在した天上人と邂逅する。
私はここであえて言わせてもらうと。
天上人が大嫌いである。

中盤、のび太達と出会った天上人は、のび太達に自分達が絶滅してしまった動物、これから絶滅しそうな動物達を保護していることを教え、地上人の環境汚染について憤っていることを伝えてくる。
見かけ上だけは天上世界に迷い込んだのび太達を歓迎するが、その実、逃がさないように部屋に閉じ込めたり、そのことで不信感を抱き、“自分達の王国に帰ろう“としたのび太達を追いかけて捕まえようとしたりする。

結局、のび太とドラえもんだけが逃げ切り、しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンは天上人に捕まって天上連邦の首都に連行されてしまうのだが。

あなた達と同じ人間で、住んでる場所が違うだけだ」と天上人のパルパルは言うが、ノア計画なんてものを立てている時点で、とてもそう思っているようには見えないし、パルパルはあくまで友好的に接してくれているが、それは結局、のび太達を地上世界に帰さない為にやっているだけであって、今見ると偽善的にしか見えない。
まだ警戒心丸出しのグリオのほうが正直で誠実である。
そのグリオは逃げ出したのび太達や、のび太達が一度保護した“南の島の少年“タガロを見て、どうしていつも地上人は逃げたがるんだ、と発言するが、その発言自体、地上人より自分達が上だと思っているとしか思えない。
地上人を管理する保護動物と同じだとでも思っているのだろうか。

そして天上連邦の首都に連行した後。発信機付きの指輪をしずか達に渡すのだ(実際渡したのはパルパルじゃないけど)
しずかちゃんとパルパルはそれなりに仲良くなっていったのに、指輪をつけた3人を見てもパルパルは何も言わない。
本当に地上人を警戒しておらず、仲良くしようと思うなら、指輪のことを教えてくれてもいいはずなのに。

途中ジャイアンが「アイツら気に食わねえ。お高くとまりやがって」と悪態をついたり、スネ夫が「天上人は何か恐ろしい陰謀を企んでいる」と邪推するが、実のところ、その感覚は間違ってなかったのである。

当時子供だった私も、あんまりパルパル達は好きじゃなかったから、やはり子供ながらにこの大人達は信用ならない、と思っていたのかもしれない。

4.ドラえもん屈指のトラウマシーン


中盤から終盤にかけて、ドラえもん達はさまざまな困難に見舞われる
ドラえもんは雷に打たれて故障、しずかちゃん達は首都に連行されてわけのわからない裁判にかけられる、のび太は自分の王国に戻る為、いろんな人の助けを借りながら奮闘中。
そして作中屈指のトラウマシーンにさしかかる。

紆余曲折ありながらも、ホイくんの万能たずなで動物を操ったのび太は、なんとか故障したドラえもんと共に雲の王国に辿り着く。
というかこのシーン、のび太が手綱を握ってドラえもんを後ろに乗せるのだが、故障したドラえもんが大人しくのび太の背にしがみついている姿は、なんというかこの2人の信頼関係が見えてすごく尊い。
そして2人はどこでもドアを開けて、自宅に帰ろうとするのだが……。

のび太ママが時差調節ダイヤルをぐちゃぐちゃに回したせいで、のび太は今の時間よりも10日先の未来の時間に迷い込んでしまう。
その未来では天上人の“ノア計画“が発動し、地上は大洪水に見舞われていた。

天上人のノア計画とは、大雨を降らせ地上世界の文化文明を洗い流し、原始的な生活に強制的に退化させるというもの。
環境汚染を繰り返す地上人に対する報復、天上世界の環境を守るためだというが、その絶望的な光景を目の当たりにしたのび太の「世界の終わりだよお」がなんとも悲痛で辛い。

空も陸も海も汚しっぱなしだと天上人は憤るが、だからといって全てを洗い流す前にできることはなかったのだろうか。
例えば天上人は光だの水だので物質を生成する技術を持っているのだから、それを地上に提供するとか、技術者を派遣するとか。
ノア計画発動か否かの裁判で、しずかちゃん達3人を地上人代表として法廷に立たせるが、何も知らない小学生を法廷に立たせて、寄ってたかって責め立てるとか明らかに大人のやることじゃない

大洪水を一足先に知ったドラえもんは、天上世界を全て消滅させる武力を誇示し、相手に交渉を迫ろうと考えるが、絶対に使うつもりはないとのび太に言う。
天上人があっさり地上世界をぶっ壊しているのに、なんて優しいのだろう。まあ結局雲の王国に乱入してきたクソのような悪役のせいでぶっ放すことになるわけだが。
 

5.ふたつの世界を救ったドラえもん


悪役が“雲戻しガス“をぶっ放し、天上世界の州を消滅させたことを知ったドラえもんは、「天上人何千万人の命には変えられない」と、雲の王国のみを消滅させるガスタンクに頭から突っ込み、自分の道具が起こしたことの責任を取る。これにより、天上世界も地上世界も、どちらの世界も救われることになった。

結果的に命を救われた天上世界の人々は、ドンジャラ村のホイくんや、これまでドラえもんに命を救われた動物達、そして懐かしのキー坊の懸命な訴えもあり、ノア計画を破棄することを決めるのだが。
いや、綺麗にまとまったように見せてるけど、結局天上人が一度はノア計画を実行したという事実は消えないわけで。そんな奴らと仲良くなるとか無理じゃね?と思ってしまう。

天上人は、地球の環境汚染が良くなるまでキー坊が住む植物星に移住するから、地球の空からはいなくなるんだろうけど、結局どこかの未来でまた地上人が環境を破壊し続けたままであれば、天上人がキレてしまう可能性もゼロではないわけで。
まあ、だからこそ環境を守ろう、って話なんだとは思うけど、なんかこう、スッキリしないなぁ、と思ってしまう。
映画とか物語の終わりって、悪役をぶっ倒してハッピーエンド的なスッキリさっぱりとした明快なエンディングが好きなので、余計になんかモヤモヤとしたものが心に残る。
でもこの映画はドラえもん映画の中でもかなり好きな方に入るので、決して嫌いな映画ではない。
原作派だったから、キー坊が成長した姿も感慨深いものがあったしね。

6.小さな“好き“ポイント


序盤、のび太が雷雲に襲われて海の中に落ち、ドラえもんがそれを助けるシーン。
お姫様だっこじゃん!!ときゅんとしてしまった。

相変わらずドラえもん映画は食べ物が美味しそう。ドラえもんはいつもどら焼きだけど、のび太も大体スパゲティ食ってるよね。

ドラえもん故障中、のび太が四次元ポケットに手を突っ込んだ時に言う「えっち!」
たしかに断りもなく相手に触れたらセクハラである。ドラえもんかわいい。

ドラえもんがガスタンクに頭から突っ込んだ後、しずかちゃんやスネ夫と共にのび太が城から身を乗り出して、ドラえもんの名を叫ぶのだが、誰よりも1番前に乗り出している。
小さいところだけど、この2人の絆が描かれていて良い。

大の大人がドラえもん映画の感想を言うってどうなんだろう、と思ったけど、思いの外楽しかったのでこれからもやろうかなー。

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