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『パニック障害になった話(8)』〜スタートラインに立つ日:中編〜

※この記事にはパニック障害についての記述、発作の話が出てきます。フラッシュバックにお気をつけて、お読みください。

前回の記事はこちら↓↓ 

V6が解散するーー
20年来追いかけ続けた6人の最期の勇姿をその目に焼き付ける為、11月1日までにパニック障害を克服しなければいけなくなった私。
未だに車で遠出も出来ず、電車に乗るなんてもってのほか。
更には最大の壁として、新幹線が私の前に立ちはだかる。
果たして私は、無事V6最後のコンサートに臨むことが出来るのか!?(あらすじ風)

1.いざ祖父母の墓参りへ


2021年の夏。私はついに祖父母の墓参りに挑戦した。
母や旦那と相談した結果、お盆時期は道路が混むだろうと予想して、盆よりももっと早い時期に行くことした。
当日の朝、全員が緊張した面持ちで車に乗り込む。ここから往復4時間。果たして私は無事に帰ってこられるのだろうかと、背後ににじり寄る不安を首を振って打ち消した。

これまでの傾向で、私は高速道路が苦手な事がわかっていた。どこかに閉じ込められるとか、すぐに出られないとか、咄嗟に身動きができないとか、前の記事で述べたように、私はそういった空間がとても苦手だった。

前回の記事の最後で話したように、周りに協力を仰ぐこと、頼ることを思い出した私は、旦那や母と何回も相談を重ねた。
そして墓参りを無事に乗り切る為、決めたことが以下の3つである。
ひとつ、高速には極力乗らない。
ひとつ、途中のサービスエリアで必ず休憩を取る。
ひとつ、私は常にガムを噛み、空腹にも満腹にもならない状態にする。

これは私だけかもしれないが、満腹又は極端に空腹状態の時に発作が起こりやすい
空腹時の胃がキュッとなる時とか、ちょっとした感覚がトリガーになったりする。
私にとってガムは安定剤の役割を果たすので、ガムを噛むのはつまり常に頓服を服用しているような状態にするということである。

そしてこれは1番大事なこと。
発作は必ず起きると覚悟をしておくことである。

発作を起こさない、というのは正直無理に等しい。やるだけ無駄、どんなことをしても発作は起きると確信していた。
どうせ起きるものならば、いかに軽く済ませるか、そっちに重点を置いた方がいい。大きな発作さえ起こさなければ、こんなもの多少不快な思いをするだけで済む。

緊張していたからなのか、“それ“は意外と早くやってきた。
高速に乗ってすぐ。次の出口まで約13キロ。
ゾワゾワとしたあの感覚が、足先から這い寄ってくるのをすぐに感じ取った

怖い。下りられない。車から出られない。
怖くない。隣には旦那がいる。後ろにはお母さんがいる。誰も私を見捨てたりしない!
複雑に絡み合ってせめぎ合う感情と戦いながら、ギュッと拳を握りしめた。
一気に2つガムを口に放り込んで、むせ返りそうなキシリトールの味に神経を集中させる。
大丈夫、大丈夫、大丈夫。
絶対に負けたりしない。

キッと前を睨みつけると、意外なほど発作は早く引いていった。発作が“こりゃ無理だ“と悟ってくれたのかどうかは知らないが、ふわふわとした感覚は残るものの、震えと動悸はすぐに止まった。

途中のサービスエリアに着いて、大きく深呼吸をする。
行けるかもしれない“と、初めて希望が湧いてきた瞬間だった。

2.行きは辛いが帰りはよいよい


その後も数回軽い発作はあったものの、なんとか祖父母の墓にたどり着いた私達は、数年ぶりとなってしまった祖父母に挨拶をして、無事に線香をあげることが出来た。
この時は不思議なことに、フッと重いものが取れたような気分で、祖父母の墓を掃除している間、パニックのことを忘れられたような気がした。
肩が軽くなったというか、呼吸がしやすくなったというか。気分的なものもあるだろうけど、不思議だった。

帰り道。私は1度も発作を起こさなかった
祖父母に会えて安心したのか、これまで出来なかった墓参りを終えて罪悪感がなくなったのか、逆にスッキリとした気持ちで、危なげなく帰宅することが出来た。
これから家に帰るんだ、と。向かう場所が自宅であることも関係しているのかもしれない。
この、行きは辛いが帰りは楽という傾向はこれからも続いていく。

こうして私は目標の50%を達成する。

3.一抹の希望


ーー行ける。
祖父母の墓参りという、私にとっての一大イベントをこなし、大きな自信をつけた。
これなら新幹線に乗って、V6のコンサートにも行けるかもしれない。

確信とまでは行かなくとも、一抹の希望を得た私は、V6の解散コンサートに行くことを決める。

東京にさえついてしまえば、原宿までは約30分。
そこまでは電車だが、20年間何度も何度も通いなれた道である。山手線なら一駅の間隔も短いし、最悪途中で休み休み行けばいい。

V6の聖地。国立代々木第一体育館。
解散コンサートがそこで行われると疑いもしなかった私は、実際のツアー日程の発表を受けて仰天することになる。

そう、実際の会場はまさかの“幕張メッセ“。
一抹の希望があっさりと打ち砕かれた瞬間だった。

さて、本日はここまで。
やはり長すぎたのでここで一旦切ります。
次回、伸ばし伸ばしにしてきましたがようやく最終回。
ちょっとゆっくり書きますので明後日までお待ち下さい。

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