初めて日本を発つ


当日の朝、目が覚める。グズグズしてはいられない、出発まで30分だ。前日の移動や準備で睡眠時間は4時間。出発までの支度を急いでして家を出た。

空港ターミナルに到着。親が送ってくれた。移動中に調べた通りの道へ行き、なんとか搭乗券を取った。前には日本人の旅行者。「私は初めてのインド」だとか、「この人は5回行ったことがある」とか。後ろには欧米のバックパッカーらしき人もいる。話しかけようと思ったけど、自分のことに精一杯だった。手続きを経てようやく搭乗ゲートへ。あたりは8割以上がおそらくインド人。 
「インド人多っ」って感じ。

搭乗前の並ぶ際、緊張というものを感じる。新しいことに挑戦するときのこのゾワゾワした緊張は久しぶり。いつぶりかは覚えてない。

「そろそろか」「ついにか」
なんとなく想像し、行くと決めてから約一カ月。この1カ月は、いろんな場所へ行き、たくさんの人と話した。自分でも調べた。
正直色々考えて行かなくなってしまうことも恐れた。調べれば調べるほど危険で、楽しみより不安、時に恐怖が勝ったことは間違いがない。

搭乗口から飛行機のあの音が聞こえる。
「ようやくここまできた」
機体に乗り、目の前にはたくさんのインド人。
いやもう全員がインド人じゃないかって(笑)

座る席に着く。すると日本人の女性がそばへ来た。
どうやら隣だった。嬉しい、落ち着く、最高。
正直隣が日本人なだけでめちゃくちゃ落ち着く。そしてその後男が左隣に来た。右隣になった女性の名前はゆいさん。ゆいさんは、10ヵ国以上の海外旅行経験がある。しかも彼女の初めての海外は自分と同時期で中国。そのこともあり、彼女にめちゃくちゃ質問した。
この時ゆいさんが持っていたガイドブックを見せてもらうが、そういえば自分は行く場所をなにも調べていなかったことに気づく。でもこれくらいでちょうどよかった。

しばらくすると、CAさんが飲み物を持って来てくれた。何を頼めばいいかわからず、目についたコーラを一杯、彼女はビール、男はペプシとワインをもらった。そして俺が貰う時に男とふと目が合う。男がニヤけた。気にはなったが、俺はコーラを一口飲む。
男が話しかけて来た。

「君達はどこから来たの」
同じ空港の同じ飛行機に乗っている以上答えは一つしかないと思ったけど、俺は陽気に答えた。

「I'm from Japan!」
すると男が次々と話し出す。
名前はフェルナンドでメキシコ人の会計士で今は長期休暇で旅行を愉しんでいる。インド、日本と行き、日本ではロンドンで共に英語を勉強した日本人の友達と遊んでいたなど。友達との写真や日本の観光地などの写真も見せてもらった。そして今からドイツに行くというのだ。つまりインドでの乗り継ぎでこの飛行機を利用したわけである。
俺は会話に若干苦戦しながらも英語が堪能なゆいさんと一緒に1時間くらい3人で喋り倒した。 

その後機内食を食べた後は、起きては寝て、寝ては起きての繰り返しって感じ。

そしてついに着陸の時。急に心配になる。このあとどうやって行くんだろって。(笑)
着陸してフェルナンドとは別れた。飛行機を降りて検査とかパスポートをみせて、そこでゆいさんとは別れた。その後、Wi-Fiがどうしても必要だったため、空港にいる人に聞きまくってようやく繋げれた。そして両替も済ました。
最初の心配が嘘のように順調で、こんなに楽しいものかと実感してた。

出口に来た。出口は人と車と騒音と異臭を帯びており、なんともカオスな状態。うるさ過ぎて、叫んでも見向きもされないくらい。とりあえずホテルに向かおう。俺はタクシーを早くも使おうと思ったが、せっかく時間もあるので、電車を調べた。調べたはいいものの行き方がよくわからない。ここがセカンドフロアなのかサードフロアなのか、警備員みたいな人に聞いたらあっちへいけこっちへ行けって。何もわからんかった。
仕方なくタクシーを呼ぶことにした。呼んだはいいけど自分がどこへ行ったらいいかわからない。タクシーが到着すると電話がかかってくるが、携帯を通してだから尚更わからん。そもそも英語喋ってんのか。何人にも代わってもらって13回くらいハローって言ったわ。結局わからなかったけど。

仕方がなく、道にいる人に電話を替わってもらった。すると快く受け入れてくれたが、その人もよく分かってなかったらしく、30分くらい歩いては電話しての繰り返し。

もう諦めようと思っていた時、ようやくその人とタクシーの乗り場に行くことができた。正直これだけで解放された気分だった。
そして一緒に来てくれた人にチップを渡そうとすると、いらないという。
感動した。インド人は本当に困った時は助けてくれるとネットに書いてあったけど、これがそうなのかなって思った。俺たちは熱い握手を交わしてよくわからないヒンドゥー語を言って別れた。

次は、タクシーからホテルに行くが、運転手は50分かかるという。
「ふざけんな!」と思って携帯を取って道を調べた。実際は20分くらい。
危ない危ない、事前に見といてよかった。
降りる時にお金を渡すが50.3ルピーって言われた。調べた時は43とか6とかだったけど。まあ待たせてしまったし、道の兄さんに感動して50ルピー払ってしまった。
そしてホテルでチェックインをしてWi-Fiを繋ぐのだが、これがまたどうしても繋がらない。頭を抱え込む。絶望。Wi-Fiがなければ何もできない状況でこれは確実に詰む。しかし何回も受付に行くと、女性の1人がやってくれてなぜか繋がった。意味わからん。何でか聞こうと思ったけど、疲れすぎて身体は部屋に向かってた。
部屋で、これはホームシックになると思った。自分の言っていることがよく伝わっているのかわからなかったし、空港でも受付でも少し笑われたから。外に出ても同じことが起きるんじゃないかって、部屋にいた方が楽なんじゃないかって。
ホテルに着いても異国の言葉が飛び交う。自分の部屋は唯一の自分だけの空間になり、何も気にするところのない場所だった。
とりあえずその日はネットを見て寝た。


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