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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第28回配信 妄想爆発!

 次回、いよいよ二刀流同士の対決、というところで、ゲーム配信を終了した。

 ベッドギアを外すと、僕はエリスに沈黙されるのが怖くて、すぐに話し始めた。

「視聴者数はどうだった?」

「途中、150人までいったよ」

「マジで? 記録更新じゃん!」

「でも最後は90人に減ったけど」

「そっかー。もっと松井選手に、見せ場をつくってあげたほうが良かったかな?」

「そういうことじゃないよ。視聴者数が増えたのは、ASMRをやってたときだもん。あれが終わったとたん、バタバタと減ったから」

 僕はエリスの冷たい視線から逃げるように、首を捻って腕組みをした。
 
「うーむ。あれが一部にはウケたのか。かといって、今後ASMR動画をメインにするわけにもいかないし」

「当たり前よ。転ゲーを紹介するための配信なんだから。あれで少々数字が増えたって、あとが続かないでしょ?」

「わかってるよ。あれはたまたまアクシデントで発生したイベントだから。もうそういう方向には行かないように努力するよ」

「転ゲーは、ユメオの願望を読み取るんだからね。ユメオが美女に耳元で飴を舐めてほしいと思ってたら、またおんなじことが起きるよ」

「大丈夫。そんなことは思ってないから。これっぽっちも」

「どうだかねえ。私これから、ユメオの前では飴を舐めるのをやめようっと」

 とエリスが言ったとき、その顔に、明らかに面白がっているような笑みが浮かんだ。

(……良かった)

 僕はホッとした。

(エリスはもう、巨大チュンチュンのASMRを、本気で怒ってはいないようだ。それに心配したように、僕のことを軽蔑してるわけでもないらしい。なんなら、僕が音フェチであると想像して、それを面白いと思っているようだ。これはなんだか、くすぐったくなるようなリアクションだぞ)

 正直に告白しよう。

 僕は、エリスがなにかを食べているのを見ると、心臓がドキンとしてしまう。

 もし、その食べる音を耳元で聴いたら、切なくて切なくて、どうかなってしまうだろう。

(ああ、エリス。僕はそこまでは求めない。だから冗談でも、飴を舐めるとかなんとか、そういうことは言わないでくれ!)

「そうそう、ユメオ。チャンネル登録者数が、25人に増えたよ。これもきっと、ASMRを期待しちゃった人たちだね」

 僕の頭の中で、エリスは飴を舐めながらしゃべっていた。そうなるともう、会話の中身が頭に入ってこない。

「え?」

「かといって、その人たちの期待に応えるのは無理よね。次回野球をやったら、登録者数はきっと元に戻るよ」

「ああ、野球ね。頑張るよ」

 このとき僕は、確かにエリスが飴を舐める音を聴いた。

「……どうしたの、ユメオ。目が虚ろになってるけど」

「あ、ゴメン。今ちょっと、明日の配信のことを考えてた」

「とにかくさ、ユメエリちゃんねるの特徴をよく考えてね。転ゲーの可能性を感じられるような配信にしようよ。さっきの配信を見てたら、どうもユメオ、ドラえもんのしずかちゃんも変な目で見てるようだし」

「へ? しずかちゃんなんか出てたっけ?」

「スネ夫くんが言ってたでしょ。僕は金、ジャイアンは暴力、しずかちゃんはナントカって。あれもみんな、ユメオの潜在意識が言わせたセリフだからね」

 しずかちゃんは○○○○。確かにスネ夫がそう言っていた。そんな目で見たことは1回もないつもりなのに、意識の底では、実はそういう愉しみ方をしていたということか。

 そしてそれを、エリスに知られてしまった。

(今度こそ、本当に軽蔑されてもいい事案だ。なぜなら僕の潜在意識は、小学5年生の女子を、○○○○の象徴と思っているのだから)

 しかしエリスは、やはり軽蔑の表情は浮かべていない。逆に、僕に少し顔を近づけて、内面を探るかのようにじっと見てきた。

 僕はたまらなく、息苦しくなった。

 エリスは今、僕のことを、飴を舐める音を聴くのが好きな、小5の女子を○○○○の対象と見る男だというふうに思っている。

 よくよく考えたら、いや、よく考えなくても、パーフェクトな変態だ。

 エリスは高2の女子だ。もし同じ部屋に変態がいると思ったら、嫌悪感を表したり、距離をとろうとするのが普通ではないだろうか?

 ところがそういう様子はない。距離的には、むしろ近づいている。心なしか、昨日までよりも、僕に対する興味が増しているようにも見える。

(エリスは僕を変態と疑っても、嫌いにはなっていない!)

 この確信は、僕に勇気を与えた。

(エリスは、僕の意識の底に潜む性癖を、必ずしも嫌がってはいない。男の性癖を知り、なおかつ嫌がらないエリスの一面に、僕は切ないほど惹かれてしまった。ああ、エリス。きみこそ本当に、僕が求める完璧な女性だ。好きで好きでたまらない!)
 
 僕の妄想は、激しく燃えた。

(僕の性癖を嫌がらないということは、ひょっとしたら、エリスにもなにか性癖かあるのかも。だから似た者同士だと思って、面白がるように笑ってくれたのかもしれない)

 僕はこれまでにないほど、エリスに女性を意識した。

(僕には性癖がある。だとしたら、きっとエリスにもある。僕らはそれを、互いに軽蔑していない。逆に距離を縮めている。ああ、ダメだ。これ以上考えたら、僕は過ちを犯してしまいそうだ!)

 僕はハアハアと息をついた。エリスがそれを心配するかのように、ますます近づいて顔を覗き込んでくる。

「よしっ! 明日も頑張るぞ!」

 僕は逃げるようにして、エリスの部屋を出た。僕の妄想の中のエリスは、それを見て、「意気地なしのユメオ」と吐息混じりに囁いていた。


あらすじ(第1〜3回配信のリンク有り)

第27回配信 小学生の闇

第29回配信 彼女の部屋での闘い


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