アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第20回配信 禁断のクスリ
♢ぐーぐー:ユメオさん、ロッカールームは危険です。行かないでください!
♠︎仮面人:クスリだけはいけません。子どもたちの夢を壊さないで!
♣︎風雲降り龍:キヨ、なにしてんねん。吉永小百合さんが泣くで!
♡糸車:清原さんのこと、信じています。もう決してヤクは射たないと……
♣︎顔しゃもじ:ロッカールームで二岡とモナを対決させて!
僕と清原選手は、ロッカールームに入った。
ほかにも選手たちはいた。すぐ目の前で、憧れの三冠王落合選手が、信子ラブとプリントされたパンツ姿で立っていた。
「キヨ、聞いたか?」
落合選手が、気さくに清原選手に話しかけた。
「ミスターが、まちがえて中畑さんのパンツを穿いて帰っちまったって」
「またですか」
清原選手が、呆れたように肩をすくめた。
「今月で、もう3回目やないですか」
「あいつはアホや」
落合選手と清原選手の会話に、相手チームのロッカールームからやってきた、キャッチャー野村が割って入った。
「中畑が困っとったで。だからわしのパンツを貸してやった」
「それはそうと、ノムさん。星野さんに殴られた頭は大丈夫ですか?」
清原が心配そうに、野村捕手の頭を撫でた。
「どや、割れとるか?」
「意外と絶壁ですね」
「沙知代もようそう言うとったで。あいつ、わしを置いて先に逝きよってからに。寂しゅうてたまらん」
野村捕手が鼻をぐしゅぐしゅ言わせると、これまた相手チームの新庄選手が入ってきて、
「ノムさん、キヨさんに話を聞いてもらえなくて、泣いてるんですか?」
「アホウ。わしが泣いとるのは、お前と一茂がアホすぎるからや」
「またまた。僕のこと好きなくせに」
新庄選手がハグすると、野村捕手はオェーと吐く真似をした。
僕はすっかり、スーパースターたちに見とれていた。
しかし、意外とスターたちは、ロッカールームでは野球の話をしないものである。ほぼバカ話だ。これはちょっとした発見だった。
「ところでユメオ」
清原選手が、腕に注射をするゼスチャーをしながら、
「1本、いくらで射つ?」
「あ、お金を払うんですか?」
果たして転生した先で、僕はいくらくらい持ってるのだろうか?
「特別安くしたる。500でどうや?」
「えっ! 500万?」
清原選手のパーにした大きな手を見て、僕はたじろいだ。
「アホか。500円や。チームメイトに500万も払わせるわけないやろ。ワイをなんやと思ってるんや」
「500円? それだけ払えば、180キロの球を打てるようになれますか?」
「楽勝や。あー、めんどくさい。タダでええわ。腕貸してみ」
清原選手がロッカーから注射器を出したのを見て、オールスターズが壁をつくった。
「キヨ、早よせい。選手の中には、マスコミに売るスパイもいるからな」
野村捕手が、肩越しに囁いた。その真剣な顔を見て、僕はだんだん怖くなってきた。
「すみません、やっぱりやめます。クスリの力じゃなくて、技術とパワーを鍛えて打つことにします」
「ユメオ、いいか。この世には2種類の人間しかおらん。クスリを知ってる人間と、知らない人間や。お前も知る側になったらええ」
「名言ですね、キヨさん」
新庄選手が嬉しそうに、光る歯を見せて笑った。
「僕にも名言がありますよ。野球なんてマジバイトっての。どうですか?」
「ワイのは名言やない。清水先輩の受け売りや」
「清水先輩? そんな選手いましたっけ?」
「失恋レストランの清水健太郎先生や。大先輩やないか。知らん?」
すると落合選手が、鼻歌で失恋レストランを唄った。なかなかいい声である。
と、ロッカールームの入口のほうから、
「注射をやめて〜注射をやめて〜私のために〜ヤク射たないで〜」
なにか変な節をつけて唄うような、若い女性の声が聴こえてきた。
「むむ。女人禁制のロッカールームに、女?」
オールスターズのあいだに、緊張が走る。
と、そこへ現れたのは、ウサギのアバターになったエリスだった。
僕が絶句していると、清原選手が立ち上がり、
「モナ、入ってきたらアカンやろ。二岡ならとうに引退したで!」
と言った。どうやら清原選手は、エリウサを山本モナアナウンサーと勘違いしたようである。
「今日はバニーガールの恰好かいな。しっかしすごい色気やな。たまらんで」
清原選手は本能のままに、山本アナウンサーと思い込んでいるエリウサに抱きついた。
すると、エリウサはスポーンと宙に飛んだ。改良された転ゲーでは、R18にならないため、異性には接触できないように設定されているのである。
「ウナギみたいになったな、モナ。まあ、ええわ。またいつか抱かせてくれ」
そう言うと、ものすごい力で僕の腕を引っ張った。
「あ、やっぱり射つんですね」
「上物やで。感謝しいや」
清原選手の力に勝つのは不可能だった。僕は上腕部に注射され、ロッカールームの床にへたり込んだ。
「どうや、感想は。暑いか、寒いか?」
「……どっちかというと、暑いです」
「なら効いてきたで。どや、ニンニク注射の力は」
「ニンニク注射?」
「そうや。ビタミンBが豊富で、疲労回復にもってこい。いいクスリやろ?」
「はあ……」
僕は床に着地したエリウサを見あげて、ため息をついた。
「ニンニク注射だって。変なクスリじゃなかった」
「良かった。心配しちゃった」
と、そこへ野村捕手がやってきて、妙に優しげな声で囁いた。
「早よう行け。みんなでマスコミから隠したる。ユメオも男なら、わしらのマドンナ、モナちゃんを大切にせいよ」
あらすじ(第1〜3回配信のリンク有り)
第19回配信 スーパースターとの共演!
第21回配信 野球選手のプライベート
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