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新生「笑の大学」~じっくり二人芝居!

劇作家・三谷幸喜の代表作にして二人芝居の傑作「笑の大学」が、四半世紀ぶりとなる待望の再演!
内野聖陽と瀬戸康史という新たな布陣は「大好きな作品だから、演じてほしいと思う役者さんに出会うまでは再演しないと決めていた」という三谷幸喜が、今のベスト・キャストと公言する組み合わせです。また、今回は三谷氏が演出も手掛けています。
ワクワクしながらパルコ劇場に足を運びました。

笑の大学 2023年版

時は昭和15年。戦時色が濃くなる中、演劇界でもお上による検閲が厳しさを増していた。
警視庁の取調室を舞台に、軽演劇を低俗と決めつけ上演中止に追い込みたい堅物の検閲官・向坂睦男と、何とか検閲をクリアしようと向坂の執拗な要求を逆手にとって更に笑いを追求する劇作家・椿一との、7日間にわたる攻防が繰り広げられる。

三谷氏の喜劇作家としての矜持が詰め込まれた、2時間弱の二人芝居です。

三宅裕司(向坂)と坂東八十助(椿)出演の1994年ラジオドラマ版、
三谷氏の劇団サンシャインボーイズ時代からの盟友、西村まさ彦(向坂)と近藤芳正(椿)による舞台1996年・1998年版、
役所広司(向坂)、稲垣吾郎(椿)が組んだ2004年の映画版
そして今回の2023年版の舞台
更にはロシアやイギリス、韓国など国外での上演や、柳家さん生師匠が手掛けた落語版もあります。

私は、ラジオドラマ版、98年版、映画版、落語版、そして今回と視聴しており、この作品の大ファンです。
俳優の個性の違いは勿論大きいですが、向坂と椿以外の人物の登場の有無等もあり、それぞれ異なる味わいで、三谷ファンとしては、どのバージョンも甲乙つけがたいところです。
ただ! 観客の笑い声が喜劇を完成させるという意味で、舞台版がやっぱり一番好きかな(^^)/

今回の2023年版で際立つのは、二人の年齢差と持ち味(強面でいて愛嬌が滲む内野・向坂と、無邪気に見えて案外冷静、したたかな瀬戸・椿)からくる一種の「親子感」でしょうか。
初演の西村v.s.近藤では、年齢は近いが立場が正反対の二人が、笑いを媒介として結果的に強い絆を育む友情物だったのに対し、内野v.s.瀬戸では、年長の権力者と年少の被支配者との力関係が笑いをテコに変容し「個と個」として対等になっていく成長譚の趣。
特に終盤、その相違が際立つように感じました。

三谷氏は役者あっての「当て書き」で知られますが、彼の完成度の高い脚本ならば、その時々にふさわしい役者を得られれば、色合いを変えた幾度もの再演に値しますね。

今回観たのは初日。嬉しいことに、ちょうど見やすい高さのセンター席で、お二人の表情の細やかな変化も楽しむことが出来ました。緊張感からか内野さんが数回台詞を嚙みましたが、作品世界が崩れるようなことはなく充実した舞台で、カーテンコールでは自然にスタンディングオベーションが起こりました。

パンフレットも、写真・テキスト(インタビュー、寄稿、対談、資料…)共充実の内容で「お値段以上♪」。買ってよかったです。

貴重なチケットをシェアして下さった方に、感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございました!!

終演後は、地下の茶寮翠泉で、とろとろの出来立てわらび餅を。渋谷パルコ限定のほうじ茶味で、本当にあったか、とろっとろ。
いいお芝居を見た満足感で、沢山食べられる感じではなかったので、食事代わりにちょうど良かったです。

ほうじ茶のわらび餅




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