見出し画像

初冬

 暗澹たる暮夜の窓に吹きつける木枯らしの響は、慟哭した稚児と相違なかった。さらに、古事記に於いて、天若日子(アメワカヒコ)を射抜いた還矢の如く天空から堕ちた氷雨も加わった窓の向こう側は、自然の脅威を感じられずにはいられなかった。「風が叫び、雨が殺気を纏い、大地が唸る。雉よ、許し給え。………雉も鳴かずば撃たれまい………雉も鳴かずば撃たれまい………。」自然の前では人間は無力であるがためにそう信ずるしかなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?