『介護労働問題はなぜ語られなかったのか』( 高木 博史 著、本の泉社刊)

お布団〜😊
みかん〜🍊

あ、ぽんニャンです🐈

今回は某顔本に投稿した内容です。
それではどーじょー😃

※本を読んだ感想です。私が所属する団体、企業とはなんら関わりはございません😅

問題提起と考えていただけたら幸いです😅


2008年の著書ですが、全く色褪せないどころか、状況が変わっていないと思います。

介護業界の話題としては、利用者さんやそのご家族に対する話題が多いと思いませんか?
「その人らしく」
「尊厳を守る」
そうしたことを実現していく私達の業界は素晴らしい業界ですし、私も転職して数年経ちますが、その通りだなと思います。

一方で、問題のない業界というのはないわけで。

利用者さんの尊厳だったり、介護技術だったり、地域包括ケアなどの話題で何かキラキラしたことばかり目にしますが、そこで働く人達がどんな労働環境であるかはあまり語られないのではないでしょうか。

介護職のイメージとして、この本では「大変」「偉いですね」というイメージがあると書かれています。
これ、繰り返しますが2008年の話です。
あれから15年、介護従事者がかけられる言葉は変わりませんね。

異業種から来た私からしてみれば「どの仕事も大変」で、大変の種類も違うし、度合いも違うよねと思います。

なぜ介護の仕事を「大変」と思うか?それは「お金にならない仕事を自ら進んで行う『愛』『自己犠牲』『ボランティア精神』」というイメージがあるからだということです。
これは、永らく介護は女性の仕事、特に嫁の仕事だと思われてきたということですね。
ホームヘルパー国家賠償訴訟でも同じことを訴えられています。

しかし、専門職として福祉の業務を行う時、『愛』『自己犠牲』『ボランティア精神』が求められていいのでしょうか?

利用者さんの笑顔のために、私達は頑張るという一面があります。
利用者さんからかけられる「ありがとう」の一言に報われる。そうした介護職は少なくありません。
では、その「ありがとう」のために、「お前たちは好きでこの仕事をしているんだろう。利用者様の笑顔のために働けるのだから文句を言うな」と言われ続けたら?
当然のように残業をし、その残業代が支払われなかったら?
実はこれ、福祉業界だけではなく、教育の現場などでも起きていますね。
そこで職員が「そうだよな。現場は人がいなくて大変だし、私が頑張って残ればいいよな」となり、善意による無償奉仕が当たり前になったら、それは魅力ある業界と言えるのでしょうか?

ここで現実的なことを1つ。
総務省「全国消費実態調査」
1世帯あたりの所得の中央値。
1994年は505万円。
2019年は374万円。
つまり、25年間で131万円所得が下がっています。
さらに、介護職は全産業平均より100万円少ない状況です。
つまり、世間から「大変だ」「偉い」と思われている仕事が、実際はその仕事だけでは生活が成り立たないということを表しています。

ちなみに先程、利用者さんの「ありがとう」の話を出しましたが、その「ありがとう」のために、私達介護職は「専門性」を発揮します。
そして日々その「専門性」を磨いているのです。
一口に「専門性」と言っても、15年前とは変わっているでしょう。
「多職種連携」が叫ばれて久しいからです。
介護職は、生活関連だけでなく、薬の知識、医学の知識、栄養の知識、理学療法や作業療法の知識、IT、事務処理、DIY、災害対策などなど、広ーい見識や技術が必要になっています。
これ全てできれば、霞ヶ関の官僚なんて目じゃないですよね?
世界平和も実現できますよね?
でもできなければ「使えない」判定されたり、「専門職なのに◯◯のことも知らない」などと言われてしまう場合もあり、この本からさらに厳しい状況にあると言えます。
しかし、そうした「専門性」を学べる環境にあるかというと、所得の面で生活がギリギリで、ほんの一部の人だけだよという現実があるのではないでしょうか。

介護保険というシステムについても書かれており、「市場原理」「契約型福祉社会」という話が書かれてあります。
私は「契約」という方法は別に問題はないと思います。ただ、そこに「市場原理」はいらないだろうと考えています。「契約」して利用料をとらなければやっていけない状況は、常にコストを考えなければいけないし、労働者をコストと見なし、低賃金化、非正規化に追い込むからです。それにより、介護サービスが提供できなくなり、利用者の不利益になるということです。

この本に書かれてあることで、もっとも重要なテーマは「安心できる介護が保障される社会を目指すには、安心して働ける労働環境を作ること」ということです。

利用者さんの笑顔のために、私達が笑顔でなければならない。そして、私達介護従事者もいつかは介護サービスをうけます。その介護業界がいつまでも不安定で、過酷な環境だったとしたら?

魅力発信、やりがい発信。
でもその業界は低賃金で自己犠牲が求められる。
そこに呼び込みますか?

外国人材についても、低賃金化につながると看破されているのはさすがだなと思いました。

この本にも憲法25条のことがかかれてあります。
『健康で文化的な最低限度の生活』
これは、利用者さんだけでしょうか?
これは人権の問題です。
人権は誰もが等しく持つものです。
利用者さんの人権は守られて、従事者の人権は守られない。
それは本当に魅力ある業界ですか?

最後に。
この本を読んで、またしても高木さんの見識に感服しましたし、同じ価値観を抱いている方がいらしたということに嬉しく思いました。
高木さんはこうした問題を考える上で、経営者と労働者が一緒に考えて、訴えていかなければならないと書いてらっしゃいます。
まさにその通りです。
介護業界も「公定価格」であり、制度は国が作っています。
しかも、基本的人権を保障する義務は国にあり、私達国民は国に人権を保障させる義務があるんです。

経営者と従事者が業界のことだけではなく、広く社会を学び、政治に対して労働環境などの人権を守れと働きかけなければならない。

そうした警鐘を、この本は鳴らしているのだと思います。

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