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2024年5月の記事一覧
夏目漱石「行人」考察(18) 二郎の「卑怯」ポエムはごまかし?
「行人」において、一郎が妙にポエムを連発し、それが二郎の言葉によって「それ要はモテない苦しみだよね」と暗に示されていることを指摘してきた。
しかしその二郎も、一郎よりも前にこれまたずいぶん大袈裟なポエムをつぶやいている。
まだ一郎が物語に登場するよりも前の段階、序盤で三沢の入院中、他の室で入院中の「あの女」と、その担当の「美しい看護婦」をめぐる二郎の一人語り。
自分の「あの女」に対する興味は
夏目漱石「行人」考察(16) 一郎は何故ずれた問い掛けを繰り返すのか?
1、明らかに間違った認識を振りかざす一郎
夏目漱石「行人」に描写された一郎の苦悩が、妙に大袈裟であり、この苦悩は一言でいえば
「(直やお貞に)モテないよ」
であると私は解釈している。
上記の記事ではふれなかったが、「パオロとフランチェスカと三勝半七」の話も、やはり不自然に大袈裟である。
「二郎、何故肝心な夫の名を世間が忘れてパオロとフランチェスカだけ覚えているのか。その訳を知ってるか。」
自
夏目漱石「行人」考察(14) 二郎は「信用できない語り手」か?
1、「行人」は長野二郎の連載手記
何度かふれているが、夏目漱石の大正元年(1912年)連載の小説「行人」は、登場人物である長野二郎が、語り手として話を進行させている。
しかしリアルタイムでの二郎の内心ではなく、事が終わってから一定以上の期間が経過した後(おそらく数年以上後)においての、二郎の回想である。
かつ、単なる内心での回想ではなく、二郎が第三者に対して、一連の出来事を公開した形式である。
夏目漱石「行人」考察(11) お兼とは何者なのか?A
「行人」序盤で、岡田の妻として登場する女性:お兼。
お兼について語り手である二郎は、なかなか強烈な表現をする。
―― お兼さんは岡田に向かって、「あなたこの間から独で御得意なのね。二郎さんだって聞き飽きていらっしゃるわ。そんな事」と云いながら自分を見て「ねえ貴方」と詫まるように附加えた。自分はお兼さんの愛嬌のうちに、何処となく黒人(※くろうと)らしい媚を認めて、急に返事の調子を狂わせた。お兼さ