ききゅう

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科学・数学関連の、少し(だいぶ?)エンタメよりの記事を作成しています。 よろしくお願いいたします。 ※ページ内のテキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

マガジン

  • 神様のアルファベット

    高校生の大翔と陽菜は、ある日偶然から、自宅近くに知らない神社があるのを見つけた。 ほとんど存在を忘れられ荒れ放題になったその神社には、一風変わった身なりと権能の神様がいた・・・。

最近の記事

第10話 情報を活かせるかどうかは工夫次第?

 叔父の豪との電話を終えた後、大翔は筆記用具をカバンに入れ、塵劫神社へ向かった。  家から神社の入り口までは100メートルほどしかないが、大翔は周囲を警戒しながらそこを歩いた。数日前に来たときは夕暮れ時で人目もなかったが、今は土曜の真っ昼間である。下手をすると、神社に入るところを誰かに見られるかもしれない。 「ちょっと、千坂さん? おたくの坊ちゃん、誰の家かもわからない茂みに勝手に入って行きましてよ?」 などとタレ込まれてはコトだ。  数日前とは打って変わって、境内の中は明る

    • 第9話 戦国武将とトランプと暗号と

      「え、暗号?」 「おう。RSA暗号、言うてな。インターネットのセキュリティを支える大事な技術や。」 「え、マジで?? どういうこと?」 「なんやお前、暗号に興味あるのんか?」 「うん、ちょっと。」  大翔が最初に“暗号”という言葉と概念を知ったのは、幼い頃に見た何かの映画だった。タイトルはまったく覚えていないが、ニヒルなスパイが活躍するストーリーで、クライマックスで暗号を解読するシーンが出てきたのだ。敵国の警察の気配を感じながら、それまでに集めた情報をつなぎ合わせて、みごと

      • 第8話 お釈迦さまの手の上で計算していたという話

        「陽菜、俺とつき合うてくれ!!」  大翔は、清水の舞台から飛びおりる覚悟で頭を下げた。すると、彼女はニンマリと笑い、 「ええよぉ。ただし、これの数学の問題をぜんぶ解けたらな?」 と、2冊の本を渡してきた。どこかで見たことのある、ペーパーバックの分厚い赤いデザイン。  その表紙には、「京都大学 理系」、「東京大学 理科」と書かれていた。  ビクンとはねるようにして目を覚ますと、外はまだ真っ暗だった。 「夢か・・・。」  大翔はだるい体を動かし、枕元のスマホの待ち受け画面を開い

        • 第7話 問題を出したからには答えられなきゃウソだよね? 後編

          「ヨシザカエ様って、イヌ派ですか、ネコ派ですか?」 「はあ? なんえ、いきなり?」  大翔が「1人で問題をとく」と言って境内の入り口に座り込んでから、もうずいぶんたつ。神社に来た時は、夕焼けであたりいちめん朱色だったのに、今はだいぶむらさき色になってきている。  幼ななじみは、ときどき消しゴムや新しいルーズリーフをとり出したり、シャーペンの芯をかえたりしてはいるが、腰を上げる様子はまったくない。  最初はそんな彼を見まもりつつ、陽菜はまわりのケサランパサランにちょっかいを出

        第10話 情報を活かせるかどうかは工夫次第?

        マガジン

        • 神様のアルファベット
          10本

        記事

          第6話 問題を出したからには答えられなきゃウソだよね? 前編

          「回答に答えだけ書くな。必ず解き方を書け。」  中学のころから、数学を担当する教師はみな口を揃えてそう言った。いや、小学校の算数ですら、似たようなことを言われたような気がする。  それを聞いた時は、大翔にはその理由がわからなかったが、今なら理解できる。 $${2}$$  絵馬の真ん中に放り出すように書き殴られた“答え”。  解き方などどこにも書かれていない。はたしてこれが、ちゃんと解いて書いたものなのか、それともカンで書いただけのものかもわからない。ついでに、相変わらず

          第6話 問題を出したからには答えられなきゃウソだよね? 前編

          第5話 仕返し

           夜の9時すぎ。  大翔は自分の部屋で、ベッドの上にうつ伏せになっていた。胸元に引き寄せた枕にアゴを乗せ、口は半開き。手元には充電中のスマホ。 「そろそろ明日、ボス討伐行こうぜ。9時集合な。」  最近ハマっているオンラインゲームのグループで、昨日、そんな約束が交わされた。  だがいざ集まってみると、メンバーのテンションはいずれも異様に低かった。 - はあ、なんでか全然やる気出ないわー - 俺も 今からダンジョン入っていくとかムリ ダルい - 今日数学の補習があって まじウザか

          第5話 仕返し

          第4話 幻覚

          「なんや、食べへんのかいな?」  吉栄光比売が大翔に言った。 「いやだから、俺甘いのん苦手なんすよ。果物とか特に。」  彼が手に持っている菓子は、陽菜イチオシの、アテナ製菓のハムスター・フルーツ大福。普通の大福のあんこもだめなのに、中身がフルーツときては、ますます無理である。中にどんなフルーツが入っているかは「食べてみてのお楽しみ」らしいが、食べて何が出てこようが同じである。  対照的に、陽菜は満面の笑顔で大福をほおばっている。 「んー!! いちご! めっちゃ好き!」  ふに

          第4話 幻覚

          第3話 最初の算額

          次の数字を $${11}$$ でわったあまりを求めよ: 「大翔〜。この前の数学の小テスト、何点やった?」 「・・・51・・・。」 「そうか〜。51かぁ。・・・私、39・・・。」 「悪っ。」 「ふええ・・・。」 「いや、つっこめよ。『お前も大して変わらへんやんけ』って。」 「50超えとるだけでもええやん・・・。もう、数学嫌いや・・・。」  そう言って陽菜がふさぎ込んでいたのは、先月終わりのことだった。その彼女は今、酔狂な女神の餌に釣られて、熱心に算数の問題に取り組んでいる。

          第3話 最初の算額

          第2話 算額

           次の数字を $${11}$$ でわったあまりを求めよ: 「え。なんすか、これ?」  大翔は吉栄光比売を見た。 「数学、いや算数の問題や。」 「いや、見たら分かるて、そのくらい!」  大翔が無遠慮にツッコミを入れた途端、吉栄光比売の目尻が釣り上がった。慌てて陽菜がフォローを入れる。 「ええっと、そうやなくて、なんで絵馬に算数の問題が書いてあるんですか? 絵馬って、願いごと書くためのもんやないんですか?」 「ああ。“算額”、言うてな。数学の問題を解いた者が、それをわらわに報告

          第2話 算額

          第1話 吉栄光比売

          五より大なる数はすべて、ソスウ三つの和に表せる、 これは真か偽か? 「この問いに最初に答えられたものを、我が夫と致します。」  彼女は高らかにそう宣言した。  頭が真っ白になる。  ”ソスウ”ってなんだ? 数を数で“表す”ってどういうことだ?  浅はかだった・・・。  数刻前まで抱いていた甘ったれた希望は、たった一つの謎かけによって打ち砕かれた・・・。 「なあ。今から大翔んち行ったらあかん?」 「ええ?? なんで?」  下校中、幼馴染の陽菜に唐突に言われ、大翔は聞き

          第1話 吉栄光比売