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人はなぜ動かないのか

 「地方スーパーの従業員はロクでもないものばっかり。なぜこうも言うことを聞かないのか」と地方スーパーの再生を請け負った大企業の経営者の嘆きをよく聴きます。理由は①上からの指令を実行する能力がない、②実行する意思がない。さぁ、どちらでしょうか。

 答えは、後者なのです。上からの指令が腑に落ちないので実行する気がしないのです。なぜ、腑に落ちないかというと本能的に小さいもの、弱いものを虫けら同然の扱いをする大きいもの、強いものに腹が立つからです。

 大企業から見れば、地方スーパーは超零細企業です。企業どころか家業の域を未だ抜け出ないお店もあります。大企業に入社してくるのは、学業の成績もよく、教えられたことが実行できるよう訓練されてきました。できなければ落ちこぼれの烙印を押されるので、要領だけは身につくのです。指示されたことを実行するふりをするのはお茶の子さいさいなのです。

 ところがそうでない人もいますが、ほとんどの地方スーパーの従業員は純真です。純真とは、ソロバンを弾かず、面白いこと、楽しいこと、興味があることに心惹かれるからです。

 言っていることとやっていることが同じである“真心”のある指導者の言葉には従いますが、「自分だけ・今だけ・お金だけ」と部下を食い物にするエセ指導者には従わないのです。

 要領が悪いのと家庭の事情から“いい学校を出ていい会社に就職する”というお決まりのコースに乗れなかっただけなのです。

 要領が悪いからエセ指導者から見ると反抗しているように見えるのです。反抗していると落ちこぼれの烙印が押されます。彼らは皆の前で認めて誉めれば動きます。ところが大企業出身のエリートは、落ちこぼれを認めて誉めることができないのです。

 人間だけでなく、動物も植物も、そして鉱物ですら「意識」と「意思」をもっています。「意識」は波動の受信装置です。「意思」はプログラムです。

 宇宙の大法則は、「共生」「調和」「絶対愛」です。「共生」とは、自分は他者に生かされているのであり、他者を生かすことは自分が生かされることなのです。「調和」とは、性質の違うもの同士が、不離一体となって新しい性質を作り出すことです。「絶対愛」とは、太陽が万物に分け隔てなくエネルギーを注ぐように、生きとし生けるものは見返りを求めず周りに愛情を注ぐということです。

 「共生」「調和」「絶対愛」に関する話を聞く。実際のその光景を見ることによって、「意識」という受信装置のスイッチが入り、「意思」というプログラムが発動するのです。

 そのプログラムとは、「喜ばれると嬉しい」ということです。見返りを求めず相手の喜ぶことをし続けるようプログラムされているのです。

 「共生」「調和」「絶対愛」に関する「いい話」を雨あられのようにすれば、「意思」という受信スイッチが入り、「意思」というプログラムが発動します。

 ところが、現在は「いい話」をすると、「それって宗教?お前なんか変な宗教入ったの」とか「自分だけ損をするのはイヤだ」という人間が多くなりました。

 赤塚不二夫著「赤塚不二夫120%」によると、戦前はこんな話があったそうです。東京に住んでいた家族がありました。犬を飼っていました。いつもその犬の首に「豚小間切れ100g」などと書いた紙を入れた風呂敷をくくりつけ、道順を教えて買いに行かせていたそうです。ところが、急に青森に転勤になってしまいます。犬も連れていきます。「今度はこのお肉屋さんに行くんだよ」と言って、いつものように首に風呂敷を巻いて送り出したら3ヶ月たっても帰ってきません。

 その犬は歩いて東京の馴染みの肉屋まで行ったのです。青森の新しい家に戻った時には、姿はボロボロ、しかも風呂敷の中のお肉は腐っています。普通でしたら、お腹がすいたら主人の肉でも食べてしまいます。しかしその犬は、3ヶ月何も食べないでずっと歩いていたのです。これは実話だそうです。

 このような話を学校の先生から聞かされて育った少年少女は、大人になっても他人の痛みもわかるし、他人に優しく接することができるのです。そして自分を生かしてくれた両親や家族、学校の先生、友人、会社の同僚、すべての人に感謝し続けるのです。自分の都合ではなく相手の都合を優先し、相手に喜ばれることを実践し続けます。

 新しい指導者は、「粗利益率は30%以上確保せよ」「人時生産性を上げよ」「残業時間を減らせ」など数字だけ見て評価します。お客が喜んでくれればと、新しい商品、新しい売り方をしようとすると、「勝手に仕入れるな」「勝手に安く売るな」と𠮟られます。

 数字だけを見て、現場や自分たちの思いを汲んでくれないエリートに愛想をつかしているのです。反抗すればクビになります。誰も庇ってくれません。

 業績を上げるのは、新しい商品、新しい売り方に挑戦し、お客を感動させ、感動したお客がリピーターになることなのです。そのためには、「こんな商品やってみたら?」「こんな売り方したらどうだろう」と従業員に投げかけ、「失敗してもいいんだよ。それで会社が傾くわけではないんだから。それより、お客が喜ぶことをどんどんしようよ。責任はオレがとるからさ」と言えば皆奮い立ちます。

 「意識」のスイッチが入り、「意思」のプログラムが発動するからです。「意思」のプログラムとは、「相手に喜ばれると嬉しい」ということです。

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