GENJO〜げんじょう〜4


【はじめに】
この物語は遥か未来、しかしそう遠くない時代に起こりうるであろう架空の話であるが、本当に起こらないとは限らない・・・。
【あらすじ】
時は西暦2027年。
そして舞台は日本・第三新横浜臨海森公園前総合病院。
そこに勤める「石崎 裕(いしざき・ゆう)」はこの物語の主人公で、まだまだ新米の医師である。
前回、永美が突然亡くなった。ユウはDr.利賀(トガ)の行う司法解剖に立ち会う事にしたのだった。そして、それと同時に横浜を中心に新種の感染症が発見され、国中が大パニックに包まれたのでした。

GENJO〜げんじょう〜4

Dr.利賀(トガ)は突如亡くなった永美の身体を司法解剖し終え、検査の結果をDr.ユウに報告した。

「ユウ先生、これが亡くなった永美さんの身体のデータです。・・・見てわかる通り変なのです。」
Dr.トガが変だと言うのには理由があった。それは亡くなる数分前まで身体の免疫機能が全く機能していなかったという状態だったのだ。

「トガ先生・・・、このデータが本当なら、私達はすぐにこの"原因物質"とやらに対する策を編み出さなければいずれこいつに人類は滅ぼされる」
Dr.ユウは声を震えさせながら当院院長である外川謙三(Dr.トガワ)にこの事を報告した。

それに対してDr.トガワは「感染症が院内で発生している状況なので、この病院を全封鎖する」と発言するのだった。

感染症は時間との勝負であり、迅速な行動が肝心要。この様な状況に陥り、先ず必要なのは感染症を外部に出さないという事なのだ。

ユウは唯一信頼出来た臨床医の前田邦平(Dr.マエダ)と共同で調査をする事に出た。

検査室内で早速亡くなった永美の体細胞に何かが居るのではないかと調べ始めてから、まる2日経った頃他の病院でも同じ様にこの感染症と思しきものが発生したとして緊急閉鎖された事が判明した。

新たに分かった事があった。それは患者は血液中の白血球が極端に少なくなっている現象が続いているというものだった。

異物が原因の病気になれば通常は白血球らの数が増加するという傾向をみせるものが、何故か逆に減っていたというのだ。

おかしい・・・。体内に侵入した異物の進行を抑える為に免疫細胞は活性化するものが、どの患者達も共通して「免疫がほぼ機能していない」という状態だった。

まるでこれでは体内で誰かが免疫細胞を侵食している様だ…そう思いながらもせっせとDr.ユウらは未知の病原体が居る筈だと信念を持ち長い時間を掛けて発見できる様に努めた。

そしてその3日後、遂にDr.マエダら研究チームの働きにより患者の体内より見つけ出し、新種のウイルスを分離する事に成功するのだった!!

その形は何処となく見た事のある様な形状のウイルスだった。

因みにその形状としては「直径約40nmと言うごく小さな円形で、1つの個体に数百本の長細い棒の様な突起物が付いており、内側には約5000〜12000程度の塩基からなるRNAが濃縮され、まるで毒の入ったミクロなカプセルと言った方が早い。

すると一人の研究医がある事に気が付いた。

「このウイルスの形状は、何かに似ている」

コンピュータからこのウイルスの形状と似ているものを探し調べていると、「ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)」と形状が酷似している事を突き止めた。

患者達はエイズを発症していたのだろうか?免疫力が低下していた為に、健康な人が苦しむ事はあまりないような感染症になったのだろうか?だとしたら、どこでもらったのだろうか?

Dr.ユウは亡くなった永美のカルテを確認の為に何度も見返した。

彼女は「覚醒剤の使用歴あり」だった事、妊娠中だった…HIVが体内に入っても何らおかしくはなかった。

しかし、彼女の体からはHIVが検出されておらず行き詰まった。

広義にはHIVの潜伏期間は5〜10年とされるが、背景に大手術をした、体が弱っていた期間がある、などの条件があれば体内のHIVが通常よりも早くその人の体の中で免疫をじわじわと弱らせていき、ある日突然AIDSを発症するとされている。

長い年月の中で彼女の体内にいるHIVが牙を剥き出したのかも知れないが、見つからないのはそれが犯人はHIVでは無かった事の証明となり、自分の推理が間違っていたとなる。

(待てよ…。形状が似ているだけで、これはHIVが変異したモノではないのだろうか?)

そう思い、Dr.ユウは研究医らと意見を交換しあった末に「HIVとは別の個体であり、新種のウイルス」と結論が出され、すぐさま政府に新型感染症が見つかった事を報告するのだった。

日本政府は水際で海外へ流出させてはならぬとの先人の教えに則り日本国民、並びに海外の人々へ国内に留まるように報道を一斉に配信するのだった。

その日、新型感染症の情報を日本医師協議会の代表者らより説明を受けその間、過去の感染症によりパニックが起きた事の経験を生かす為に暴動鎮圧を目的に再び機動隊員の病院強襲を防ぐ活動が昼夜ひっきりなしに続き、いつ終わるかもわからないミクロの敵に対して人々はかつての災厄を今度こそ根絶させる為、科学的に対策を取る手段に出るのだったー・・・!!

GENJO〜げんじょう〜4 おわり/5 へ続く