見出し画像

光化学スモッグを喜ばない【キナリ杯を終えて】

「んー、んー、んー」と長方形のパッション屋良がうるさくて起きた。

6月3日20時20分のことである。何かと思えばそれは「スキ」の知らせ。そして共に「あなたの記事が話題です!」。

ほわぁああ?と開きっぱなしにしていた岸田奈美さんのnoteを開き直すと準々優勝に自分の作品が載っている。急に目がさえた。さえまくった。いやはや、どうしてこんなことに。なんでこんなことに。

小説家になろう

昨年、30歳を迎えた。

学生時代に書いた小説がある賞を取ったことから、ずっと「小説家になるのが夢です」と言い続けてきた。就活の時、出版社の面接で「将来はどのように我が社で成長していきたいですか」という問いに「こちらでたくさんの経験を踏んで、もし機会があれば小説家としてデビューしたいです」と答えた(どうかしてる)。当然そこにはフラれたが、何とか入れた会社でも異動希望面談の度にメディア系の部署に行かせてくれと懇願。少しでもその道のりに近づけるよう「小説家になるのが夢です」と喧伝して歩いた(「夢は言葉にすると叶う」とか「引き寄せの法則」とかよく言うじゃん。こういうことなんじゃないの?知らんけど)。とりあえず「小説家になりたいです」と言い続けてきた。

じゃあ一体30歳まで何かしてきたんですか、と問われると途端に返事に窮する。毎日何となくのんべんだらりと生活を送ってきた。はた、と思い立ってブログを書いてみたり、小説のアイデアを書き留めたりはするものの続かない終わりまで書けない。映画を見ました→感想書くぞ→あ、でもあのイベント今日までだったよな→あ、買い物行かなきゃ→あ、容量いっぱいになるから録画みなきゃ。それらを繰り返し映画の内容も忘れる。言い訳ばかりで光化学スモッグを喜ぶ運動部みたいだ。自分の好きで始めたんだろう。できないことに喜びを見出すな。

そんなこんなで30歳を迎える去年、1か月に1個なにか創作物を作ろうと決めた。それはちょっとした絵でもいいし、毎年記念日に作っているアルバムでもいい、旅行のために作る「しおり」でもいい。とにかくひと月に一つ、何か自分が考えたことを形にしてそれを作りきろうと考えたのだ。

幸いにして何とか一年継続し、自分で物事を作る習慣ができてきた。だが、それはただの自己満足でしかないし見る相手も限られる。じゃあと思って始めたのが毎月1個応募しましょうの約束だ。略して「一応約束」。略すと「行けたら行くわー」くらいのテンションになってしまうが、サラリーマン川柳でも標語コンクールでもなんでも、とにかく誰か第三者が見てくれ、ともすれば表彰されるものに応募することを義務付けた。

そうして公募ガイドでとりあえず応募しやすい、字数のできるだけ少ないものを探す日々。5月は何に応募しよっか・・・。そんな中で出会ったのがキナリ杯だった。

キナリ杯顛末

岸田奈美さんについては何度も記事がバズっていたので読んで知っていた。きわめて個人的な感想だが、同年代で多分笑いのツボが近いし文章のスタイルも似ていると感じた。何より加藤はいねさん好きってだけで分かり合えると思った。

そんな岸田さんが特別定額給付金の10万円をなげうって自分の好きな作品に賞を授けるキナリ杯を開くという。その記事を目にした段階で、すでに10万円だったはずの賞金が30万円台まで化けていた。賞金に目がくらんだ、というよりは賞金を分けに分け、賞がたくさん増えていっていたので「これなら「かする」のでは?」と思ってしまった。傲慢なことに、笑いのツボが近いから岸田さんだけが審査員なのならいけるだろうと踏んだのだ。

特にリスペクト賞は選考基準まで明記してあり、応募者からすればとってもありがたい。過去の受賞作もないキナリ杯で手探りで書いても手ごたえが全くないからだ。ある程度、望まれる文章に寄せて受賞確率を上げるくらいのことはしたいので、この記事と過去の岸田さんの記事を改めて読み漁った。

そこで私が狙ったのは「素振りでホームラン賞」だった。簡単に言えば、初めてnoteで投稿した人に贈る賞。幸い、まだnoteは使ったことがなく受賞対象にはなっていた。が、ホームランか・・・。ホームラン級に面白いことを1か月の間に思いつくのはなかなかにハードだ。それならば、とこれまでの経験で一番面白いことを書こうと決めた。

うざい絡みの一つに「なんか面白い話してよ」というのがある。「最近いいことあった?」と「簡単なアンケートにお答えいただけませんか?」に並ぶ3大ウザ絡みだ。「簡単なアンケートにお答えいただけませんか?」への適正解はなかなか難しいのだが、他の2つは最初から用意しておけばいい。私は話のネタストックのメモ帳を作って来たるときに備えている。そんなストックの中からどれが一番面白いか吟味し、書いたのがあの記事だ。

書き終わって投稿した時は「もうちょっと反応が来るかな」と思ったが当然note初心者。多少の「スキ」がつくくらい。もちろん嬉しいのだが「こんなんで受賞できるのかな」というのが正直なところだった。というのも「#キナリ杯」で検索するとバケモンみたいに「スキ」のついた記事がザクザク出てくる。「スキ5か・・・ゴミめ・・・」てなもんで、戦闘力もといスキの大洪水が起きてる記事にわんさか出会ってしまった。こんな中なら絶対埋もれてしまう。どうしたもんかと心配になった。

だが、投稿して2日。「岸田奈美さんがスキしました」。はー、受賞しました。受賞しましたねこれは。だって審査員が「スキ」って言ってんだもん。これで受賞逃すわけないやん。はー、やったやった。しばらくはその「スキ」にのたうち回っていたのだが、ふと他の人の記事を読んでみるとその記事にも「スキ」が。あれ、どの記事にもついてるやん。「スキ」「スキ」「スキ」「スキ」・・・。ジモティーのCM並みに「スキ」つけるやんけ。

理解した。読みましたの証拠だということに。そんなわけで結局フラットな気持ちで6月3日を迎えた。

キナリ杯の受賞作を14時から1時間ごとに発表していくという。たまたま休みだったのでだらだらしながら14時を待った。14時、なし。まだ53個のうちの5個ですから。15時、なし。15時の発表で「素振りでホームラン賞」が発表されていた。あ、ホームラン打てなかった。ウィットに富む「素振りでホームラン賞」はこちら↓

16時、なし。結構写真付きの記事多いな。俺のは写真ないけど。17時、なし。ちょいちょい、これライターとか本職の人多くない?無理やん。そんなん勝てへんやん普通。18時、なし。いや、特別リスペクト賞終わったしー。こっから優勝ゾーンかい。きっつ!19時、なし。一発逆転優勝できなかったー。逆転ホームラン打てなかったー。

もうこのあたりで晩飯のお供のハイボールで酔っ払っていたし、しかもなんでかnoteは落ちるしでもう無理やんけってなってました。で、ふて寝。そこで冒頭に戻る。

これから

長方形屋良ことスマホはばかすかパッション出してくるし、岸田さんはそのあとライブ動画で書籍化に向けて動き出すとかいうし、もう疲れましたよ私は。感動と驚きでいっぱいです。こんなに文章読まれて感想言われたのは久しぶり。そして「スキ」してくれた人のキナリ杯の文章を読んでみるとやっぱみんな面白い。というかすごい。だって皆文章書いてるんだもん。

会社で「小説家になるのが夢です」とバカ言ってると、いっつも「すごい」って言われるんです。趣味で文章書くなんてすごいねって。圧倒的に回りに物書きがいない。同好の士ってものが今までいなかった。それが急にこんなたくさんいたんだと思い知らされました。文章書くのって家で一人でやることがほとんどだから、なかなか同じ志向の人に出会えないと思うんです。それにコンクールとかに出しても受賞作しか読めないから、その差に絶望するばかり。なかなか自分の立ち位置がつかめない。ただ、今回いろんな人の「#キナリ杯」を読んで、この人はここが面白いな、この言い回しはすごいな、こんなに毎日投稿してるんだすごいな、と文章を書く人たちがどういう生活を送っているのか見えた気がします。「スキ」やフォローで関係を持てた人達の文章はこれからも追っていくと思うし、それに負けないようにきちんと継続して投稿していかなきゃなという気持ちでいます。「素振りでホームラン賞」の要件に「継続して投稿していると受賞確率が上がる」とあったので、2つ目の記事を書いたのですが途中で力尽きました。が、受賞した日の深夜、その続きを急遽仕上げました。そんな感じでこれからも綱渡りですが何とか文章書いていくのを続けていきたいなと思っています。

作品が受賞することが、会話のきっかけになったり、縁をつないでくれたり、自尊心を爆上げする火種になってほしかった。

まさに岸田さんの思うつぼです。一人あぶれてこそこそ創作活動をしていたんですが、やっぱり皆でやると継続していきやすい。それで見いだされる可能性が上がるならなおさらやらないといけない。それが将来の道につながるのであれば。岸田さんはそういったロールモデルでもあると思っています。岸田さんのように巻き込む力が台風並みにあるわけじゃないですが、継続は力なりとなることを祈ってこれからも書き続けていきます。光化学スモッグを喜ばないように。

PS:さっそく見いだされた


この記事が参加している募集

スキしてみて

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはチロルチョコ代と加藤諒の捜索費用に充てられます!