見出し画像

「無駄」とは何なのだろう?―西成活裕『無駄学』―

「無駄」とは何だろう?

仕事の場で言うならば、伝票やExcelなどへ何度もデータを転記すること、営業で何度も往復すること、メール送受信時にPPAPを設定すること、といったものが挙げられそうだ。

また、日常生活のレベルでいえば、食材を買いすぎて腐らせてしまうこと、外出前にエアコンを切り忘れてしまうこと、といったものが挙げられそうだ。

だが、あまりにも様々な分野で「無駄」という言葉が使われていて、いまいちピンとこない。果たして、どういうものだろう?

その疑問へのヒントになりそうな本があったので、読んでみた。

著者は、人々が「無駄」という言葉を使う局面について、以下のように述べている。

「お金に換算できるもの、つまり、時間、労力、資源などが有効に使われなかった」と気がついたときに無駄という言葉を使う。

「時間、労力、資源などが有効に使われなかった」…。確かに、それが無駄と感じるのだろう。最初に挙げた例も何かしら有効に使われなかったものがある。

著作自体は、著者の知人(もともと企業で業務の無駄とりを行っていた方)の話や、自身の経験をもとに展開される。よって、「学」という表現をつけるには、客観性が足りない。

しかし、それでいよいのだ。そもそも、「無駄」という言葉を使わなくてもよい、もしくは「いくらか無駄があっても問題ない」という余裕があればよいのだ。

実際、著者は「ムラがあるから、ムリをする」と指摘している。そして、そのムリが無駄を生む、と。

となれば、理想は「無駄」と、考えなくて良い状況にすることであろう。それこそ、「『無駄』について考えたり、行動したりすることこそ無駄だ」と言えるような。その時は、もしかすると、現代が抱える様々な社会的な問題も、案外解決しているかもしれない。

もっとも、著者は無駄そのものを無くすことに注力されているようだ。それも当然に重要なので、必要に応じて、無駄なものがないかを探さなくてもよいくらいには、効率化しておくのが、「業務」上は必要なのだろう。とりあえず、木乃伊取りが木乃伊にならない程度には。

最後に、余談であるが、この本でもエンデの『モモ』に触れる局面がある。本当に幅広い分野の人々に読まれていることを実感させられた。

この記事が参加している募集

#読書感想文

188,357件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?