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北の大地を巡る列車旅、そしてその風景(1)木古内―長万部間

北海道への7泊8日の旅が終わってから早くも半月が経った。函館や旭川の街ですら静かに感じさせるほどの都心の人混みの中でも、ふとした瞬間に北海道で見た光景が蘇る。ニシン漁や石炭の積み出しで栄えた小樽や留萌の街並み、樺太への玄関口稚内、どっちが本当の駅名かわからなくなりそうな留萌本線恵比島(明日萌)駅…、どれもいい思い出だ。

今回の旅は「北海道Love!6日間周遊パス」を利用して、各地を回った。6日間で普通列車に加え、特急の自由席まで乗れ、特急の指定券も4回まで取れる。それで12,000円は安すぎる。北海道から50%の補助が出ていたようだが、それを加えても24,000円。それでも安い。実際に乗った区間をまとめてみたら、6日間で特急料金を含めて50,000円強かかるはずであった。それが、12,000円で済んだのだから、利用する側からしたら非常にありがたい。ただ、非常に厳しいJR北の経営状況を考えると、ちょっと後ろめたい感覚も無きにしも非ず…

さて、今回はその列車旅で出会ったものたち、特に車窓から見た風景を中心にまとめてみよう。

①道南の"観光"列車―「ながまれ海峡号」―

北海道上陸初日、降り立ったのは北海道最南端の木古内駅。宿は函館にとってあったが、北海道へ鉄道で行く以上、木古内には降りねばなるまい。北海道で最初に止まる停車駅なのだから。新函館北斗まで行ってしまうと、北海道に「降り立つ」感覚に乏しい。というわけで木古内から道南いさりび鉄道を使って函館まで向かったのだ。

道南いさりび鉄道の普通列車に使われる車両には、観光列車として使われることもある「ながまれ海峡号」もある。それ目当てで乗る人もいるのだろう。今回の旅は行きに利用した列車がまさに「ながまれ海峡号」であった。おかげで木古内駅からかなりの乗客が乗り込んでおり、海側のロングシート席を確保できただけでもラッキーであった。なお、列車の運行予定は道南いさりび鉄道のHPで確認できるので、乗ってみたい車両があれば、車両の運行予定に合わせてスケジュールを作成することもできる。

車内にはいさりび鉄道を応援するコメントがちりばめられていた。津軽海峡を見ながらゆっくりのんびりと函館へ向かう旅。新幹線や特急で一気に移動するのもいいが、旅情を味わうならば、やはりゆっくりとした移動の方が心地よい。潮風を感じながらゆるりとした旅を満喫させてくれた約1時間の旅路であった。

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②「引退」間近の列車での旅路―キハ281系で行く山と海の旅ー

先月末をもって定期運航を終了したキハ281系。函館から長万部へ向かう際、乗車した北斗7号がそれであった。本州へ戻る道中に乗った北斗はキハ261系であったので、文字通り一期一会となった。キハ281系での列車旅は、進行方向右側(時々海が見える)の窓側座席がとれた。大沼駅まではそんなに違いはない。大沼駅を通過するとすぐに大沼公園駅に停車する。ここも観光にはうってつけの場所だ。ここから列車は湖沼地帯のど真ん中を突っ切る。鬱蒼とした森と湖沼の風景が非常に美しい。それを過ぎると、今度は山間部に入る。駒ヶ岳が間近に見える。この区間はトンネルが多いだけでなく、目の前には木々や斜面が立ちふさがる区間が多く、遠くまで見通せる場所はまれである。ただ、そういうところから見える駒ヶ岳が美しいのだ。

山間部を抜け、一気に山を下ると、森駅へ出る。今度は内浦湾を窓から眺めながらの旅路となる。この日は太陽に照らされた海がきれいに映っていた。晴れの日には海の向こうには室蘭方面と思しき陸地、というよりも山々が見える。また、列車も進行方向左手(陸地側)は比較的近いところに山が見える。列車の車窓を見ると、内浦湾沿いは湾を中心にかなり急峻な地形をしているのがよくわかる。噴火湾と言われているのも頷きたくなるが、「噴火」でできた湾ではないらしい。周囲には活火山もあれば、カルデラ湖もある。温泉地もたくさんある。直接の噴火口でなくても、火山とのかかわりがありそうにも思えなくもないが…そのあたりは専門家の方々の判断に委ねよう。

新幹線が開通してしまえば、この区間からの風景はおそらく見られなくなる。そう思うと、かなり貴重な経験をした旅路となった。

③リゾートトレインとの"遭遇"

函館から長万部へ向かうために駅に入り、北斗7号に乗るためにホームへ向かった所、電光掲示板の行先に「出発」と書かれているものを見つけた。「なにそれ?」という感じで近づいてみると、トランスイート四季島の文字。まずこれでビックリ、しかも、ちょうど入線してくるところでもあったので、記念にパシャリ。

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そして、この日は道中長万部で昼食を取り、函館本線経由で小樽へ向かう予定であった。その長万部でも四季島と遭遇する可能性があった。そこで、あるブログサイトの情報を見ると、12時30分過ぎに長万部駅に入線してくるらしいことが判明したので、時間を見計らって、長万部駅近くの鉄橋へ行くと、そこへ四季島が入ってきた。俱知安方面への列車接続時間の都合上、長万部の町をゆっくり回っている時間のなかった身としては、良い思い出をもたらしてくれる列車となった。

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