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“失敗”から学ぼう!―マシュー・サイド『失敗の科学』―

「失敗」や「ミス」。正直、後ろめたい。誰かから責められそうなものである。よく、研修などでは「失敗」したっていい、なんていうが、あれは方便。実態は明らかに違う。それに、「失敗」が許される、そこから学ぼうとする姿勢があったとしても、やっぱり避けられるなら避けたい。それが「失敗」というものだろう。

そんな失敗に関する本を数年前に買って読んだことがある。そして、その本を最近また読んでみた。

失敗から学ぶ姿勢という意味では、航空業界がいつも例に挙げられる。航空事故は死亡事故に直結しやすい。そのため、実際には事故にならなくても、「インシデント」として、原因究明がなされ、その対策が練られる。現代の安全運航も「ハドソンの奇跡」に代表されるような、機長らの活躍も、過去の事故から学んだ教訓が多く盛り込まれている。
(余談だが、アメリカの国家運輸安全委員会のHPを見ると、ハドソン川の奇跡についてのレポートが「ここまで公開してもいいのか?」と思うくらい事細かに公開されている)

企業レベルなら「トヨタ生産方式」にも同様の仕組みが含まれている。しかし、航空業界の優れている点は、それ企業レベルで完結しないこと。そして、「世界レベル」で共有されていることだ。しかも、一般人でも割と簡単にアクセスできる。それは他の業界にない特徴だろう。

一般企業で航空業界と同等の仕組みを作るのは、正直厳しい。というより、予算的にも時間的にも無理である。企業レベルではトヨタ生産方式など、様々な工夫がなされているが、業界全体での取り組みとなると、企業間競争の問題から厳しい部分がどうしても出てしまう。それでも、彼らの姿勢から学べる要素は大きい。

失敗から学ぶ姿勢を身につけるためには、単に失敗を隠さない仕組みを作るだけでは足りない。些細な失敗を公にしやすいよう、会社組織・チームに仕組みを作らなければならない。どのような仕組みを設ければ、より失敗から学べるか、得られた知見をうまく運用できるかを考えなければならない。会社組織によっては「常識」を変える必要すらある。

とはいえ、失敗から学び、それをしかと教訓にできている場合と、テキトーに済ませている場合、長期的には天と地ほどの差が生まれる。

どんな経営メソッドよりも、どんな自己啓発書を読むよりも、失敗から学び取る視点をきちんと持つ。それが個人にとっても組織にとっても「成長」につながるのだろう。

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