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組織行動論から学ぶ、マネジメントのエッセンス

マネジャーとは何する人ぞ?

最初は一人会社でスタートしても、会社の規模が大きくなるにつれて従業員が増え、次第に仕事の中心は、最前線の業務から、メンバーに仕事をしてもらうための仕事にシフトしていきます。こうした、組織の人やモノをうまく使って仕事の成果を出す役割をマネジャーと呼びますが、マネジャーの役割や求められるスキルについて、学んだことがある方は、どれぐらいいるでしょうか?

今この記事を読んでいる方の多くは、トップマネジメントの方々か、又はマネジャーとしての役割も担って日々お仕事をされていることでしょう。
業種や職種問わず、人とモノを束ねて成果を生み出す優れたマネジャーとなるには、どのような役割を果たせばよいのでしょうか。そのために必要なスキルやマインドセットは何でしょうか。そんな疑問に答えを与えてくれるのが、経営学の中のOrganizational behavior(組織行動論)という分野です。

MBAで学ぶOrganizational Behavior(組織行動論)

組織行動論は、心理学・脳科学・社会学・人類学・経済学・政治学などの学問分野の研究成果から組織における人と集団を研究する学問で、即実務に展開できる知見が多く、とても面白い学問分野です。
今回は、MBAの組織行動論で使ったOrganizational Behavior(Stewart Black et al. 2019)のテキスト約250頁分を、ギュギュっと絞って、マネジャーが心得ておくべき組織マネジメントのエッセンス5箇条を抽出しました!
これが、「マネジャーに求められるスキルやマインドセット」の答えになります。

早速みていきましょう!

1.ソリストでなく、優れた指揮者を目指そう!

マネジャーの仕事は、自分が仕事をすることではなく、メンバーの仕事を通じて成果を上げること。多様な特性を持ったメンバーから最高の音楽が奏でられるよう、自分が何をできるかを考えよう。メンバーのモチベーションを高め、フィードバックしながら適切な成長機会・サポートを見極めよう。マネジャーになったら、メンバーの成長と組織の成果があなたの成功だ。
※モチベーションを高める3つの要素
①目的意識、②学習・成長機会、③認められること(まずはこまめなフィードバックから)

2.合理的に答えが出ない問題は、誠実で高潔なあなたの中に答えがある!

マネジャーの仕事には倫理観も非常に重要。対外的には、ステークホルダー資本主義の流れの中で、企業の社会的責任がより重要になってきており、誤った判断はブランド失墜につながる。社内的にも、公平感がモチベーションと密接につながっており、不公平な扱いはメンバーのモチベーションを低下させ、組織のパフォーマンスを下げる(Equity Theory)。
あなたの人格の誠実さ・高潔さが試されている。正解はない。自分を誇れる判断を

3.組織とメンバーの利害は対立するのが当たり前!怒りを鎮めて前頭前野を動かそう。

組織とメンバーの利害は基本的に対立する構造となっている(Basic Incongruity theory)のを思い出そう。メンバーは組織のために生きていないのが当たり前。怒りは大脳基底核のreactive systemを活性化し、短絡的な思考を生み出す。今のあなたのように。まず感情を落ち着かせてから、reflective systemを動かしてメンバーの立場に立って考えよう。組織の利害とメンバーの利害を一致させる方針が見えたら、望ましい行動を引き出すシステムを設計しよう。

4.カオスを丸ごと愛そう。VUCAの海への船出にシビれてこそ、トップマネジメント!

マネジメントの階層が上がるほど、非定型意思決定の比率が上がる。①カオスな状況を丸ごと捉え(cognitive complexity)、②メンバーと自分の感情を上手にコントロールし、③テクノロジーを味方につけて、④新たな問題解決方法を考えることのすべてを楽しもう。ビジネスの判断も人材マネジメントも、Cognitive Complexityの高さがKSFとなる。常識を疑い、自分の認知を疑い、思考の枠を壊し、不整合に満ちたカオスな現実を丸ごと飲み込む知的タフネスを鍛えよう

5.最後は必ず自分が決める。責任を引き受けるのがマネジャーの仕事!

誰かの意見でも、みんなで会議で決めたことでも、必ずあなた一人で最終決定を下そう。あなたが責任を引き受けることで、みんなは安心して能力を発揮できる。ためらわなくていい。完璧な意思決定などありえない。より良い選択肢が見えたらそのたびに修正しよう

英語の表現は、和訳するとニュアンスが変わるのでそのまま残しています。Google検索していただくことで、より深い背景知識に辿り着けると思います。

マネジャーの役割は、組織目標の「自分事化」

最後に、冒頭の質問、「組織におけるマネジャーの役割」に答えて本文を終えようと思います。マネジャーの役割、それは、『組織の目標を、メンバー一人一人に自分事として腹落ちさせること』です。組織の目標は、大きな会社では明文化されたパーパスやミッション・ビジョンかもしれませんし、小さな会社や組織では、社長がいつも熱っぽく語っている「こんな会社にしていこう」かもしれません。

今、皆さんのもとで働いてくれているメンバーは、日々、その目標にどうかかわっているのでしょうか?彼ら・彼女らにとって、今日一日の仕事は、会社・顧客・世の中に対して何か意味があったのでしょうか。それとも、積み木を積み上げては崩すように、「お金をもらえる作業」をして帰っただけなのでしょうか。

「今、目の前の仕事が、組織の目標に直接つながっている」という感覚をメンバーに芽生えさせること、言い換えれば、「自分事化」こそ、マネジャーの本質的な役割であり、「自分事化」ができて初めて、メンバーは組織目標のために積極的に能力を発揮できるようになるのです。

まとめ

マネジャーの役割と必要なスキル・マインドセット、いかがでしたか?
本当はこの背景にある脳科学や心理学の話など、まだまだ沢山伝えたいことがあるのですが、今日はここまでといたします。

マネジャーの仕事に行き詰ったら、また、このページに帰ってきてください。

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