見出し画像

マッキンゼーの7S Frameworkで、変化に向けて組織をととのえる!

イントロダクション

組織の診断ツールとして有名なマッキンゼーの7S。
本記事では、7Sとは何か、さらに、フレームワークの効果を実感するための重要ポイントを解説します。

思うように組織が動かない!

と、聞くと、多くの経営者の方が思わず頷いてしまうのではないでしょうか?そんな悩みを解消する手掛かりになるのが、マッキンゼーの7Sフレームワークです。

7Sフレームワーク

7Sとは、組織の有効性に大きく影響する、、”S”から始まる7つの要因。7Sフレームワークは、つかみどこのない「組織」を「診る」、確かな視点を提供してくれます。
このフレームワークは、1980年の論文発表以来40年以上にわたって活用されているパワフルな組織分析フレームワークです。

7つの要素とは、以下の通り。

  • Strategy (戦略)

  • Structure(組織構造のハード面)

  • System(組織構造のソフト面)

  • Skill(ケイパビリティ)

  • Style(マネジメントスタイル)

  • staff(人的資本)

  • Shared value(Raison d'être:存在理由)

Mckinsey社HPより筆者作成
https://www.mckinsey.com/capabilities/strategy-and-corporate-finance/our-insights/enduring-ideas-the-7-s-framework

7つのSが同じ方向を向いているならば、その組織は、戦略方針の実現に向かって動いていける組織です。一方、7つのSで見た組織がちぐはぐで、同じ方向を向いていないのであれば、①どの要素が足を引っ張っているのか、②どうすればそれらの要素を変化させることができるか、を検討する必要があります。

例えば、『新商品開発をして独身男性市場へ新規参入し、5年後に売上〇〇、利益率〇〇を目指す!』という戦略方針を決めた中小企業の経営陣の例で考えてみましょう。
社運をかけて本気の経営陣一同は、連日新商品開発セミナーに足を運び、独身男性の知人の声を聴き、新商品開発会議で喧々諤々の議論をしています。

この場合、StrategyとStyleは同じ方向を向いていますが、その他の5要素は変化していません。

組織全体を戦略実現に向けて動かすのであれば、新事業育成に必要なSkillsを確認し、人材育成やスキル獲得に向けた外部リソースとの連携が必要です。さらに、トライアルエラーに積極的な風土の醸成や評価制度、予算配分のSystemを考える必要がありそうです。Staffの要素としては、まず経営課題と戦略の社内への共有、従業員の新商品開発へのモチベーションの醸成、クリエイティビティのトレーニング、新商品開発をリードしてくれる若手の育成などが思い浮かびます。Structureとしては、意欲ある独身男性と製造・営業からなるプロジェクトチームを発足して、組織の中での位置づけを明確にし、プロジェクトに割く時間を正当化する、といった対応が考えられます。

7つの要素は完全に分離できるものでなく、相互に強く関連しているからこそ、全ての要素を同時に方向づけることが重要です。
この、「7つの要素全部が必要」というのが、このフレームワークの重要ポイントの一つです。

それでは、組織の7要因を詳しく見てみましょう。

Strategy(戦略)

戦略とは、会社の向かうベクトルです。1.どんな外部環境の変化に対応して(Why)、2.私たちはどこへ向かうのか(Vision/Where to)、3.どうやってたどり着くのか(How to)が明瞭に示されていることが理想です。とはいえ戦略を描いただけでは組織は動かない、というのがこの7Sフレームワークの重要なメッセージです。

Structure(組織構造のハード面)

組織図をイメージしてもらうとわかりやすいです。新しい部署を作ったり、逆に統合する、既存部門を跨いだクロス・ファンクショナル・チームを組成して新プロジェクトを立ち上げる、といった、組織図に描かれる構造を見るのがStrucutureの視点です。組織に変化を起こす、という視点では、硬直的な組織構造よりも、柔軟で機敏に変化する組織の在り方が好ましいとされます。
また、組織をいじっただけでも組織は動かないよ、というポイントも、この7Sフレームワークの重要なメッセージです。

7Sフレームワーク誕生の背景

「戦略と組織構造だけでは組織は動かない」ということの意味を、ここで少し解説します。
このフレームワークが誕生した1970年代後半は、組織を主に戦略と組織構造の二つの視点で分析する考えが主流であり、戦略立案と実行を分離して考えていました。荒っぽく言うと、「注意深く分析してよい戦略を作り、適切な組織構造を設計すれば、おのずと結果は出る」、という考えでした。
ところが、慎重に立案されたはずの戦略の90%が機能していない!という状況に直面し、戦略と組織構造だけではなく、戦略の実現を左右する他の要因にも等しく注意を払わなければいけない、という問題意識に至ります。
そして、生み出されたのが、この7Sフレームワークです。

従って、7Sはここからが本番です!

System(組織構造のソフト面)

あらゆる社内ルール。組織図に描かれる組織構造のハード面に対して、組織図に表れない、組織構造のソフト面。具体的には、決済・承認システムや、報告書制度、人事システム、経理システム、ワークフロー、社内規程、非公式のルール、などなど。いわば、会社の日々の営みに関連して定められた手続き制度のすべてです。
例えば、部門別の収益性が高い分野に集中的に投資して企業の成長を実現するなら、部門別の管理会計の仕組みを作り、それらがタイムリーに経営陣に報告される社内システムが必要です。従業員の行動を誘導するための、トレーニングプログラム、適切な評価システムや進捗の可視化は、もっとわかりやすいシステムの例です。

Skills(ケイパビリティ)

個人のスキルではなく、企業全体としての能力です。例えば、きめ細やかなアフターサービス、高い品質管理力など。経営学用語でいうところの”ケイパビリティ”です。
戦略で方向性を示すということは、何らかの新しいスキルの獲得が必要になります。現在持っているスキルと、獲得しなければならないスキルを明確にすることで、そのギャップを意識し、自分たちの向かう方向性を明らかにすることができます。

Style(マネジメントスタイル)

経営陣のマネジメントスタイルです。具体的には、経営陣が①何に時間を使っているのか、そして、②何をしているのか(何を言っているのか、ではない)です。「言行一致」という言葉が、”Style”のポイントをよく表しています。従業員は、経営陣の「言動」よりも「行動」を見ています。従って、経営方針に向けて組織を動かすのであれば、まず、経営陣みずから経営方針に沿った行動をする必要があります。経営陣の行動が核となって従業員に浸透し、時間をかけて組織文化が形成されます。

逆に言えば、経営陣の時間の使い方・行動に意識を向けることで、組織全体を意図する方へ方向づけることができる、ということです。

ただし、組織の要素はほかに6つあるので、すべての要素を同じ方向へ向けなければ、Styleだけで組織文化を変化させることはできません。

Staff(人的資本)

「企業は人なり」と表現されるときの、人的資本としての従業員です。戦略方針に合わせたトレーニングや評価システム、報酬水準などの仕組み面と、モチベーションや意識の持ち方、といった感情面の両方が含まれます。
企業の変化を推進していくにあたっては、特に若手リーダーの育成が重要になります。
(今となっては、資本として人材を捉える発想が当たり前ですが、7Sフレームワーク開発当時のアメリカでは、示唆に富む指摘だったのかもしれない、と想像しています。)

Shared value(Raison d'être:存在理由)

パーパス、ミッション、ヴィジョン、企業によってさまざまに表現されますが、フランス語に最適な表現があります。
Raison d'être(レゾン・デートル:存在理由)。
この企業は、何のためにここに存在しているのか?という問いに答える、長期的な企業の達成目標です。

存在理由を特に掲げない会社の方が多いですが、Shared Valueがあることで、企業が一つにまとまりやすくなり、安定する、と考えられています。

7Sフレームワークの効果を実感するための重要ポイント!

ポイントは三つ。

  1. 全ての”S”に注意を払う
    戦略と組織図の変更だけで組織が変わるというのは過去の幻想。他の5つの”S”にも等しく注意を向けることで、初めて組織を有効に動かすことができる。

  2. 全ての”S”を同時に扱う
    冒頭の例で見た通り、現実には7つの”S”は分離できないほど相互に関連している。したがって、7つの”S”のいくつかを無視したままで組織を動かすことはできない。手つかずの”S”が足かせとなって組織の変化が停滞しないよう、全ての”S”を同時に方向づけることが重要。

  3. 7つの”S”に優劣はない
    冒頭の図のグレーの線が示す通り、7つの”S”は相互に影響しあっていて、優劣関係も順番もない。すべての”S”が齟齬なく調和し、ハーモニーを奏でている状態が理想的。

そうはいっても、いったいどこから手を付ければ?

と、いう疑問に、少しだけ私の私見でお答えします。
外部環境の変化と社内の状況から、戦略方針がある状態の場合、
1.戦略方針を、visionと定量目標、具体的なHow to まで落とし込む
2.戦略を実現するためのシステムを検討する。
3.経営陣が率先して変化を先導するため、戦略実現に向けて①誰と②どれだけの時間、③どんなコミュニケーションをとるか、を検討する。

という3つのポイントから考え始めるとよいでしょう。
もちろん、この段階から組織の7Sの全ての要素を考えることは前提ですが、いざ具体的なアクションに落とし込むとなると、経営陣の判断で変化させやすい要素は、Strategy,Structure,SystemとStyle。中でも、Systemは、Staff,Skills,Style,Shared Valueの全てに強い影響を与えられる要素なので重要です。
自社の方針と現状に合わせて上手なSystem(仕組み)づくりができれば、多くの”S”を、思い描く戦略方針に向かわせることができるでしょう。

まとめ

本記事でお伝えした内容は、Referenceに記載している論文、”Structure is not organization”を参照して作成しています。7Sフレームワークを世に送り出したこの論文は、以下の言葉で締めくくられます。

One of our associates looks at our diagram as a set of
compasses. "When all seven needles are all pointed the same way," he comments, "you're looking at an organized company."
(ある同僚は、この図を複数のコンパスに見立てています。
「7つのコンパスの針がすべて同じ方向を向いて初めて、
企業はととのった、といえるのです。」:槌田意訳)

Robert H. Waterman, Thomas J. Peters, Julien R. Phillips,
”Structure is not organization”, Business Horizons, Volume 23, Issue 3, 1980,
Pages 14-26

40年の時を超えてパワフルなツールであり続ける7Sフレームワーク。
皆さんの組織をととのえるヒントとして、使ってみてはいかがでしょう。


読んでよかった。っと思ったら、
ポチっとフィードバックお願いします。
誰かに届いたと知るだけで、とてもうれしいです。(*‘ω‘ *)


Reference

Robert H. Waterman, Thomas J. Peters, Julien R. Phillips,
”Structure is not organization”, Business Horizons, Volume 23, Issue 3, 1980,
Pages 14-26, ISSN 0007-6813,
https://doi.org/10.1016/0007-6813(80)90027-0.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?