縫製工場経営の僕が、マスクを作って売らない理由
まず最初に、
この記事はマスクを作って売っている人たちを否定したり、批判したりするものでは一切ないと言い切ります。
縫製工場を運営している僕が、どうしてこのタイミングでマスクを作って売らないのか。
それは個人的なこだわりかもしれないし、
そんなことを言ってる場合じゃないかもしれない。
けれど、
どうしても僕はマスクを作って売る。はしない。
いろんな人から問い合わせももらった、だけどそれはできないのだ。
会社の存在意義に関して
僕は前提として会社を経営している。
そして従業員さんも18名抱えている。
月々の給与の支払いは社会保険などを入れると300万円ほどになる。
もちろん他にかかっている経費はたくさんある。
会社を動かす、ということは嫌でも「利益」を出さないと潰れてしまうのだ。
もちろん日本中で、そして周りでマスクが足りなくて困っている人たちがたくさんいることも理解している。
だけれど、会社を動かしてマスクを作るにはそのマスクで利益を取らなくてはいけない。
こんな時だから無償で!
ということも考えた、けれどそれではダメなのだ。
なぜなら会社は従業員さんたち、そして全国で僕たちのパートナーをしてくださっている数百人の職人さんたちの生活の要だから。
会社がある。
それが一番重要なのだ、
今は国民全員がピンチだ、
だからこそやれることはやりたい。
もし今手元に数億円の現金を持っていたら、
多分マスクを作って原価で売っていただろう。
でもそうではない、
この先行きが見通せなく、売上が減少している中で、
会社を存続させ、
パニックが収まった時にしっかりと仕事をしてもらう、
そのために僕は会社を残す必要があるのだ。
僕たちが守らなければいけないもの
会社を存続させるために、十分な利益を取った上でマスクを製造する、
そうするとやはり販売価格はそれなりの価格になってしまう。
「それでもいいから欲しい!」
そうも言われるかもしれない、
だけどマスクを作って売る、ということで失うものが他にもある。
それは"デザイナーたちの生きる道"だ、
僕たちは職人たちと仕事をしている。
だけど同時にデザイナーたちとも仕事をしている。
職人たちに仕事を渡し続けると同時に、
デザイナー達がいつ何時僕たちに依頼をしてきても、対応できるようにしなくてはいけない。
つまり、
今だけマスクを作って、
従来の仕事をおろそかにする。ということはできないのだ。
そして先ほど書いたように、
マスクを作るために数日間会社を動かす、そうすると経費が発生する。
そしてその経費を回収するためにはそれ相応の価格でマスクを売らなくてはいけない。
僕は何度も使えるマスクが、適正な価格で販売されるのはもちろん賛成なのだが、
効果が実証できない、
普段200円くらいで売ってる、
そういうものをこのタイミングで自社で利益が出せる価格で販売することが、
適切だとは思えないのだ。
つまり、
ややこしい性格なのだが、
経済が縮小していて、人が困っているのでやるなら無料、もしくは原価。
でも会社を動かすと経費がかかる、経費を回収できる価格で販売すると上の条件から外れてしまう。
ということだ。
どうしても1000円でマスクを売りたくないのだ。
そしてマスクの製造が復旧した時にまた200円に戻るものを扱うことで、会社をかき乱し、デザイナーや職人の手を止めたくないのだ。
だってこの会社は職人とデザイナーが帰る"家"なんだから。
僕たちは会社を運営している。
会社とはずっとそこにあることが重要なのだ。
だから、
僕はマスクを作って売らない。
じゃあどうするのか
ここまで書いておいて、
「マスク売らへんねやったら書くなよ」
と言われるかもしれない、
だけどやっぱり、僕は自分たちのできることを、できる形でやりたいと思う。
そこで4/7にならの介護施設に入所しているおばあちゃん達に「マスクの作り方」を教える講座を開催することにした。
(もちろんスタッフは大阪、兵庫などに感染が広がっている地域に行っていないことや検温するなど対策は徹底して)
そしてその介護施設がたくさんマスクを作って販売してくれるそうだ。
僕たちはマスクは売らない、
マスクを作る技術を売ることにしたんだ。
そして、
デザイナーさんに協力してもらって、残布を使って、
休みの日に作ることにした。
そして施設や県に寄付することにする。
僕たちが販売することで、困る人たちが出るのが嫌だから。
だから販売はしない、
寄付することにする。
冒頭にも書いたが、
マスクを作って販売する人たちを批判する内容ではありません。
ただ、
僕がマスクを作って販売することで会社をピンチにしてはいけないこと、
そしてマスク専門でない弊社が作ることで効果がわからないものを不本意な価格で販売することになるのが嫌だということ、
だから無料で提供、
もしくは技術を伝えることでよりマスクを普及してもらいたいということ。
これが僕たちがマスクを売らない理由です。
これからさらにCovid19が広がることが懸念されています。
皆さんもどうかお気をつけください。
明けない夜はありません。
そして夜が明けたら、そこにはいつもと変わらないヴァレイがあるように、
我慢していきたいと思います。
Hide
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?