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作る人間と使う人間とその後の人間

僕たちは服を作っている。

人の心に突き刺さる洋服をデザイナーが頭の中で組み立てる。

パタンナーはその思いを具現化して製図する。

職人は(これが私たちの生業なのだが)これを蓄積してきた技術を持って製品にする。

お客様はその表現物を所有することでなんとも言えぬ感動を味わうのだ。

ファッションは時代を映す鏡であり、自己表現であり、人間だけの楽しみである。


そして地球から見たらただの毒である。


作る人間

ファッションは素晴らしいものだ、素材や造形美などどれを取っても語ることが多すぎる。

建築と料理に並ぶ人が作った最高のクリエイションだと思う。

私たちは服を作っている、僕たちの服作りはできる限り「優しい服作り」を目指している。

工場の廃業や、出産、介護など様々な理由で働けなくなった職人さんたちと共に使う分だけ、すなわち受注会でついた枚数だけ、それが例え一着であっても生産している。

それは洋服の感動をその1着を買った人にも味わってもらうことで、その感動がいつか将来の服作りを変えることになるかもしれないと信じているから。

僕たちは大量生産はしない。

捨てられることが前提の服作りは絶対にやらない。

それは"愛"がないと感じるから。

うちの朝礼ではよく泣く人が出てくる。

その理由のほとんどは「作った商品に愛がない」であるとか「納品方法に愛がない」であるとかとにかく愛を語ることが多い。

僕たちは愛のある服作りをしていたいのだ。

そうして生まれた洋服は一着たりとも新品のまま捨てられたくないと思っている。


使う人間

服を着ることは自己表現だ、服を纏うことで自分がなんなのか表現している。

過去にはシャネルが作ったジャケットを着ることで強い女性を証明した。

ユニフォームを着て試合をすることでサポーターは一体感を作り、スポーツを盛り上げることもある。

こんなに暑い夏は仕事をしやすいように快適なインナーも必要だろうし、

お医者さんは清潔な衣類を纏い身を守りながら患者の命を守っている。

ファストファッションは若い世代含めどんな人にも等しくファッションを楽しむ自由を生み出した。

"人間の文化は服だ"と言っても過言ではないだろう。

今日も人は服を買い自分を表現する。

その後の人間

僕たちは今を生きている。

老後の幸せを考えるよりも今を生きた方が幸せだ、今着たい服を今我慢すると1年後には体型や状況も、流行りも変わって着ることができなくなる。

今を生きるのだ。

だけどそのあとの人間はどうだろう。

今地球上にいる75億人の人類が一新したとしておよそ100年後を生きる僕達の子供、孫、ひ孫たちはどうだろう。

どんな地球を見るのだろうか。

太陽は赤く、星は輝き、緑は生き生きとして、多様な生物を見ることができるだろうか。

依然としてファッションは楽しいもので、冬にコートを着れるのだろうか。

僕が生まれて30年あっという間だった。

僕が今言う100年と言う期間の約1/3が過ぎたことになる。

100年なんて時間はあっという間に過ぎていく。


"今を生きろ"

この言葉を捉え方によって悪い言葉になってしまう前に、もしかしたらすでに手遅れかもしれないが

"今、未来のために生きろ"

と思うのだ。


僕たちの取り組み

僕たちは縫製工場を運営しながら子供たちにむけた商品を展開している。

それがソーイングキットである。

小学生から「自分で作って自分で使う」を学んでもらうために始めたプロジェクトである。

ものを大切に使うことで未来の地球を守る心を子供達に託して行こうと思っている。

僕たち大人は無責任だ、散々作って使ってきた。

そしてボロボロになった地球を次の世代にそのまま渡すことになる。

僕たち大人は無責任だ。

だから僕たちが今できることをやろうと思う。

数年前ある大企業の幹部に「環境ビジネスを儲からない」と言われた、

「環境を良くしようよりもそんなこと考えずに作りまくった方が儲かるだろう、わかってないな」

と言われた。

その時の僕の苦笑いったら見ていられなかっただろう。

その時に考えたことがある、それがビジネスを持って環境問題を制して行こうということだ。

無責任な大人になってはいけない。

できることから、些細なことから大きな動きにしていかないと、

僕たちの子供が生きているうちに地球はもうダメになってしまう。


今回のソーイングキットを発送する際の梱包資材は全て新型コロナウイルス感染防止のために作った10万着のガウンの残布を使用して作っている。

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少しでも廃棄を減らすこと。

そして使いやすいデザインにすること。

それが作る僕らにできることだ、そしてその次にできることは「使い続けてもらう」ということだろう。

僕たちは2021年の春を目処にリペアのお店を始めようと思う。

作るところから直す、そして使い続けてもらう。

そこまでを徹底的に浸透させようと思うのだ。


まだまだ先は長い、だからこそ止まるわけにはいかない。

絶対に諦めない。

僕たちは服作りに関わる人たちの生活、そして地球環境も資本主義の中で解決させて行こう。そう思うのである。


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