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『ワールドブルー物語』木と林と森と

長い研修期間を終えて、僕はここワールド・ブルー本社の『お先します部』に配属になった。

時刻は8時35分。
朝礼で、蒼木部長が僕を紹介してくれている。
「…と言う訳で、蒼森君は 社長のイチオシだ。よろしく頼むぞ」
すると突然、陽気な着信音が鳴り響いた。

「お、このタイミングかぁ」
誰かがつぶやいた。
みんなが不敵な笑みを浮かべて部長を見守る。
え、なんだ?

「はい。蒼木です。おはようございます。…はい。分かりました。失礼します。」
部長も不敵な笑みを浮かべ、そっと受話器をおろす。
なんだこの雰囲気は?

「部長、社長は何て?」先程の声がたずねた。
僕のほぼ正面に立っている 爽やかな黒縁メガネ。

「アパレル参入だ」部長が応える。
「アパレルかぁ。で、期限は?」もう不敵な笑み どころかニヤついている。

「それを聞くのか?」
部長もニヤニヤしながら僕を見る。
この感じ…
あぁ、そうだ。
中学生が悪巧みしている あの時の感じだ。
嫌な予感がする…

部長が僕を見たまま続けた。
「もちろん、今日中だ」
「今日中!?」思わず大きな声を出してしまった。

「面白くなってきやがった。なあ、新人くん」
先程の爽やかメガネだ。
「あおばやしだ。よろしく」
右手を差し出す。
あぁ、大人って普通に握手するんだ。などと思いつつ握り返す。
「蒼森です。よろしくお願いします」
つーか、『蒼木部長』に『あおばやし』?
もしかして『青林』じゃなくて『蒼林』なのか?

少し離れたところでは「オラわくわくすっぞ」とおちゃらけている者も。
つーか、なんでみんな、こんなにも余裕なんだ?

「今日中って、そんなのどうやって?」
状況と現状のギャップに混乱しそうだ。

「ところで新人くん、採用面接の時に何て言われた?」
「え?面接ですか…?」


僕は面接を思い返してみた。
疲れた感じの中年男性と、笑顔を絶やさず包み込むような雰囲気の女性が担当だった。
あれが大人の女性なんだな。
ふとそんなことを考えたのを覚えている。

その時の担当が蒼社長と秘書のゆにさんだということは、しばらくしてから知った。
つーか、会社案内の社長の画像とまったく違うんですけど!
社長、オーラをどこに置いてきた?

そんなことはどうでもいい。
何て言われたか…
「蒼森君と言うのか。いい名前だ。有能だな。『お先します部』に採用決定だ」
「え、まだ面接では…」
「面接中に採用決定してはいけないと誰が決めた?」
え、マジか…
何て応えればいい?
若干パニックになる。
ええい!
「ありがとうございます。名前に恥じない仕事をします」咄嗟に力士の口上のような応えをしてしまった。
「よし、しっかりな」


「…と、まぁこんな感じでした」
「どうして『名前に恥じない』と?」
「名前で有能だと言われたので…」
こんな変なやり取りで採用とは…

「あれが社長の常套手段なんだ。『誰が決めた?』と言われてしどろもどろになったら『冗談だよ』と言って、不採用確定」

「本当ですか!?」
なんて面接だ…

「いや、冗談だ」ニカッと爽やかに笑う。
何だこのひと…

「んで、今日中に出来ると思うか?」爽やかなまま聞いてくる。
「あ、アパレル立ち上げですか?うーん…そうだな…出来ると思います」
「根拠は?」
根拠は…むしろ、この人達のこの余裕の根拠を知りたい。えっと…
「根拠は、先輩方の表情です。『絶対無理だ』って考えてるのは、ひとりも居ないように感じます。だから出来ます」

「いいねぇ。部長! 彼、いい感じですよ。俺が面倒見てもいいですか?」蒼林が爽やかに提案する。
「最初からそのつもりだ」部長も負けずに爽やかに返す。
は、はあ…。

「そう言えばやっぱり『蒼』林さんなんですか?」
先程から疑問に思っていたことを聞いてみた。

「そうだよ。ちなみに、あそこに居るのが、蒼田と蒼畑。その奥が蒼空と蒼海と蒼川。今ここには居ないけど蒼石と蒼岩、あとは蒼柳…他には…」
「あ、今度改めて紹介してください」

何なんだこの部署は…
完全に名前だけで採用決めてるじゃねーか。
大丈夫なのかこの会社…

「…村と蒼井、蒼島と…」
まだ続けてた。
話題を変えないと。
「あ、あの!『お先します部』ってどんな部署なんですか?」
「あ?あぁ、『お先に失礼します』って思った?残業とは無縁の」
「ええ。何となく。」

「残念ながら違うんだな。早い話が先兵隊だな」
「先兵隊?」
「そう。1番は情報収集。そこから道筋を考えてとりあえずカタチにする。『お先に始めます』って感じかな。その後は別の部署に引き継ぐ」
「なるほど…」

すると突然、蒼林さんが肩を抱き寄せて耳打ちした。
「まぁ、心配すんなって」
「え…?」

「みんな集まってくれ!」
蒼木部長が号令をかけた。
「今回のプロジェクトリーダーは、蒼森君でいく。全力でフォローする様に!」

え?えーー!?
「そう言えばさっき、『出来ます』って言ってたもんなぁ」
蒼林さんが僕に向かってウインクした。


#ワールドブルー物語

171話目。
どうも、あおです😄
下手くそだっていいじゃない。
楽しいんだもの。あおを。

懲りずに書いちゃいました。
読みにくくて申し訳ないけど、伝わるといいな~。

ちょっと新たな試みを思いついたので、今回頑張って書きました。
その試みは、近いうちに『ひとりごとがダダ漏れ』で書こうと思います。


では、今回の「木と林と森と」の裏話を少し。
数日前にある程度 書いたんですけど、そしたらマイトンさんが…

ふざけた話だけど、うちの会社は挨拶が各部署の名前になっている。

『ミッション 南野教授を攻略せよ』より抜粋


こんな縛りをぶつけてきた。
そもそも『精鋭部』で話を書いていたのに なんて日だ!何てことしてくれたんだ!

名前に『蒼』が付いたら有能 優秀。
そんな社長の思い込みで成り立っている『精鋭部』という設定が!

まぁ、でも部署の名前が挨拶って設定は らしくて良いよね(笑)

ところで『ワールドブルー物語』って?
同じ世界で、あなたが主役の物語を書きませんか?という企画です。
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という訳で今回は、

誰かサイトマップ作ってくれないかなぁ

ってお話でした。


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