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JASRACに作品を管理してもらうデメリット?

【主文】デメリットなどは無い

まずデメリットだと言われがちなのは「自分のコンサートで自作品を演奏するときに使用料がかかる」という話し

JASRACに作品管理を委託(信託)しているような音楽作家(作詞家、作曲家)が出演するようなコンサートは、それなりの規模でしょうから必ずコンサートの主催者が存在しています。

楽曲使用料をJASRACに支払う必要がある楽曲利用主体者はコンサートの主催者であり、出演者が支払う必要がある場合などは皆無に近いでしょう。

ライブハウスなどでの演奏の場合でも、ライブハウスがJASRACとの楽曲利用契約を結んでいる場合が殆どです。

もしコンサートの主催者が完全ボランティアであり誰もが対価を得ていない状況で、出演者のみがギャラを貰っているなら楽曲の利用主体者は演奏者自身となる場合や、会場となるライブハウスがJASRACとの楽曲利用契約を結んでいない場合は、出演者がライブの主催者となる場合が稀にあるかもしれません。

念を押しますが、そんなケースは稀でしょうけど。

もし演奏者自身が主催者=楽曲利用の主体者となってしまうようなまれなケースでも、出演者がJASRAC信託者の音楽作家自身であるなら「自作品の自己利用要件」が定められていますので「どこそこのライブハウスで何月何日に自作曲を自分主催のライブでやるよ」と事前にJASRACに届ければ楽曲使用料は不必要となるルールも存在しています。

自分の曲の歌詞をブログに書いたらJASRACに請求されたなんて話しはデマ

有名アーティストが自分の曲の歌詞をブログに書いたらJASRACから請求されたなんて都市伝説的もありましたが、ご本人も「実際にはそんな経験はしていない」と明確に否定なさってますからね。

それに多くのブログサービスや、SNS、UGCサービスでは、予めJASRACとの楽曲利用契約が結ばれているため、ユーザーは著作権侵害の心配をすることなく、ブログに歌詞を書いてみたり、動画でカバー演奏・歌唱が投稿できるようになっていますから、契約未締結のサービス(有名どころではツイッターが2022年8月現在では未契約)から投稿をしない限りはユーザー個人が使用料を請求されるようなケースは少ないでしょう。

自分の作った曲に値段がつけられて広く利用されている自覚が必要

JASRACに自作曲の管理を委託すると、権利者がJASRACに移転する契約なのですが、この件は契約前に作家自身の誤解を無くせるよう、JASRACの会務部がトコトンまで説明をしてくれます。

JASRACに作品管理を任せるということは、例えるなら自社商品が全国展開のコンビニで取り扱ってもらったり、全世界展開のAmazonで販売するようなものでしょう。

自分の作品に値札を付けて不特定多数の第三者に利用・購入してもらえるように分け隔てなく販売してもらえているのですから、例えば自社商品が旅先のコンビニで売られていたとしても、レジで清算もせずに勝手に持って帰ることが許されないということは簡単に理解できますよね?

JASRACに自作品を管理してもらっている場合も全く同じです。

実際のところは、自作品に対して自分のお財布を開いて使用料を支払うような機会は滅多にありませんので、そんな部分をデメリットとして杞憂する必要もありません。

それよりも、日本全国の放送局利用からライブハウスでのカバー演奏、楽譜出版、YouTube等での弾いてみた歌ってみたの投稿、カラオケで歌われる、カルチャーセンター、フィットネスクラブ、ダンススクール、カラオケ教室、楽器教室のレッスン、店舗BGM・・・全世界に向けたインタラクティブ配信での楽曲利用なんてものは作家個人で目が届くようなものでもありませんし、それら全ての楽曲利用を把握~請求~集金なんてことを作家個人ができるはずもないのです。

JASRACは平均11%程度の手数料で楽曲利用の把握~請求~集金が実現

たとえば年に100万円の楽曲使用料を得ている作家なら、JASRACには年に11万円の手数料で済みますので、月に1万円以下ですよね。

それをJASRACに頼らずに自己管理をするとなると、作家自身は楽曲を創作してる時間が無くなってしまうんじゃないでしょうか。

もし、誰かを雇って著作権管理事務をやってもらうとするなら、専属の手当てとして月にいくら払うべきでしょうね?1万円以下の手当てでは誰にも頼めるはずがないということは簡単に想像できることでしょう。

ということでJASRACに自作品の管理を委託するのはメリットしかないのです。

ここで「それでもデメリットが」と感じてしまう人もいらっしゃるかも知れませんが、それはデメリットではなく「他者に作品管理を任せる必要が無いレベル」の作家だと思います。

自作品が広く親しまれ、自分自身では到底把握できない場所で第三者に次々と楽曲が利用されていないのであれば、特にメリットも実感できないでしょうからね。

そのレベルではメリットやデメリットを考える必要すらないのです。

私自身は今までに幾度か自作品に対して使用料を支払っていますが

自作品に自分自身で使用料を支払った経験は決してゼロではないので、その経験も最後に簡単に話しておきましょう。

一つはレーベルの代表者として、自分のアルバム(CD)のリリースにあたり、プレス段階で自作品への楽曲使用料を支払った経験がありますが、ここでは自作品も演奏・収録しますし同時にカバー曲も演奏・収録しているので当然ですよね。

また、ライブハウスがJASRACとの楽曲利用未契約店で幾度か自分自身でライブやイベントを主催したことが有りましたので、私自身が主催者としてつどJASRACに楽曲利用許諾申請を届けて楽曲使用料を支払っていますが、ここでも自作品も演奏・収録しますし同時に他者によって作られたカバー曲も演奏・収録しているので当然ですよね。

ここで自作品に支払った楽曲の楽曲使用料は、JASRACの分配明細書により全額が自分に分配されていることが確認できますので、巷に蔓延する「JASRACはお金を集めるだけ集めてロクに分配もしない」なんていうデマも完全に否定できます。

「作家たちに分配する」と掲げた上で実際には分配しないお金を集めるなら詐欺罪になりますので、わざわざそんなリスクの高いことをするわけがないということは、冷静に物事を考えられる人なら簡単に分かるはずなのですが。

JASRACが管理している楽曲使用料は子どもの頃から大好きだった憧れの作曲、アーティストの楽曲をカバーするときの対価も自作品の対価も同じ値段となるので、自作品が広く流通される楽曲として台頭に扱われている現実を実感できる機会でもあるのですが、それでもなお自作品への出費にデメリットを感じてしまうような人はJASRACへの作品管理委託には向かない人かもしれません。

自分自身が自作品に楽曲使用料の支払いを要する機会なんてものは、第三者に利用される機会と比べると何千、何万・・・分の1以下の割合でしょうから、JASRACに作品管理を委託した場合の恩恵の大きさは計り知れませんし、実際に不便を感じる機会も無いでしょう。

自作品への楽曲使用料支払いを渋るような人は、他者の作品に対する評価も同様の価値観・判断に陥る可能性も高いでしょう。

逆に他者によって作られた作品の価値を素直に認めてあげられるような人は、自分の作品に値札が付けられていて、それを自ら買うことにも違和感が無いのかも知れませんね。

最後に今一度、JASRACに作品を管理してもらうデメリットは無いのです。

実際に困ったことが有ったり疑問に感じることが有れば会務部はいつでも信託者や正・準会員の相談にのってくれるので、頼れるビジネスパートナーとしての心強さ、そして感謝の気持ちが大きいです。

メリットしかないんですよ。

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