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以下同文じゃない

下手側の階段を上る。ステージへ上がり、後ろに向き直り、待機。
およそ500人が見ている。つまり1000個の眼が僕に注がれているのだ。
押しつぶされそうだ。


小学校のクラス替えは2年に一回だったので、5年生になった時点で今のクラス、1組になった。
そして、出席番号が1番に、「い○○」なのに。
少し違和感を感じながらも普通に1年間過ごした。

6年生の中盤に差し掛かると、ある練習が始まる。
気づいてしまった。あの時感じていた違和感が、不安に変わった瞬間だった。

僕はいわゆる、イケてない側の人間で、成績も運動も見た目も。その役目は僕じゃないはずなのに。
そもそも「い○○」だし、「あ」で始まるイケている男子はいたはずなのに。
先生たちは、6年1組1番が「あ」から始まらないのにおかしく思わなかったのだろうか。

五十音順でいうと、言わずもがな1番は「あ」って決まっている。まさか、先生たちの粋な?計らいで、いろは歌順にしてみたりしてないだろうか。
「平成になったばっかりだし、今年のクラス替えはいろは歌順にします?」「斬新ですね!」
ってな感じで、とんとん拍子に進んで、
いざ「い」から始めてみたら、「ろ」から始まる苗字の子がいなかったから、二文字目で断念し五十音順に戻しちゃったとか。
転勤してきた新しい担任が「あ」から始まる苗字だから、「先生込みでの五十音順ってなことで!」、と誤魔化されたとか。


「6年1組1番 い○○○○た!」
「はい!!」
と、同時に左を向き上手方面へ歩き始める。
校長先生に向き直り、一礼し、一歩前へ。
「卒業証書、い○○○○た殿・・・」

後にも先にも、表彰の類で、
「以下同文」じゃなく、内容を読まれたのはこの時だけでした。
たまたま、6年1組1番だったから。
でも、一生に一度しか経験できない卒業証書でした。

後日ビデオを見たら、着席までの導線間違えていましたとさ。

僕「戦場ヶ原での」
みんな「記念撮影!!」
父兄のみなさん「ざわざわ」
みんな「くすくす」
僕「?」

あの時、なんで笑われたのか、いまだに分からない。
張り切り過ぎた?

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