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小説、SSなど

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2023年10月の記事一覧

鴉のおとぎ話

鴉のおとぎ話

こんなつらい日は誰かに会いたい。
1人で帰って寝るのは虚しい。

ここはただでさえ人気の少ないところだ。
「あーあ、店に入る金さえありゃな」
俯いたところで声をかけられた。
「おい、あんた」
「!!」
「怪しいもんじゃねえ、暗いからわからないだろうが俺は鴉だ」

鴉だと、言葉を喋ってやがる。

「来いよ。鴉酒をご馳走してやる」

俺は戸惑いながらもふらふらとついて行った。
真っ暗闇だが気配はした。

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サワガニ姫 4

サワガニ姫 4

数日間愛らしい妖精姿のサワガニ姫と暮らした。
だが、その日はやってきた。
「ねえ、私、故郷の川の様子を見てきたいわ」
俺は慌てた。
「川に帰っちまうのか?」
「違うわよ、あなたも来るのよ。蟹になって」
!!俺も蟹に!
「私があなたを蟹に変えるから、故郷の蟹たちに挨拶してちょうだい」
え、それって…
「も、もしかして結納??」

「あなたさえよければ」
はにかむサワガニ姫。

人間、俺は人間だ。

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耳の穴から見える心臓

耳の穴から見える心臓

おかしいぞ、俺、つまりタカヒロは耳掃除してただけなのに。
なんだ?この動悸は?

「この野郎!ここから出しやがれ!」
声がする、タカヒロの胸から。
「俺はこんな狭いとこ嫌なんだよ!出て行くぞ」

タカヒロはあたふたしながら
「誰だお前、俺の体の中にいるな!?」と叫んだ。

すると
「俺はお前の心臓だよ、もうこんなとこで脈打つのはまっぴらだ。今からそのガサゴソしてるとこから出て行くからな!」

ガサ

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