鴉のおとぎ話
こんなつらい日は誰かに会いたい。
1人で帰って寝るのは虚しい。
ここはただでさえ人気の少ないところだ。
「あーあ、店に入る金さえありゃな」
俯いたところで声をかけられた。
「おい、あんた」
「!!」
「怪しいもんじゃねえ、暗いからわからないだろうが俺は鴉だ」
鴉だと、言葉を喋ってやがる。
「来いよ。鴉酒をご馳走してやる」
俺は戸惑いながらもふらふらとついて行った。
真っ暗闇だが気配はした。
「その酒は美味いんだろうな」
「…」
無言で歩く1人と1羽。
「さあ!ここだ」
着いた…のか?不意に明るい光が。
「来たか」「人間だぜ」「久しぶりのご馳走だ」
不穏な空気に見回すと、そこにいたのは血まみれの嘴の鴉たち。
地面には猫が、もう死んでいる。
骨も散らばってる、喰われたのか。
「逃げられねーぜ、来た道はわかんねーだろ?」
笑いながら鴉たちは近づいてきた。
大量の鴉が飛びかかってきた。
恐怖で押し黙っていた俺はようやく叫んだ!
「助けてくれーっ」
だが遅かったのだ。鋭い嘴は次々と食い込み肉を奪っていく。
「さあ、この人間になりたい奴はいるか?」
鴉たちは喰った人間に変化することができるのだ。
「何人も化けちゃおかしいからな」
「一番たくさん喰った奴に化けさせよう」
俺のわずかばかりの意識は鴉の体内に残留していた。こいつら人間界に紛れ込んで何か企んでるらしい。
「この人間はどう言う素性なのか探る必要があるな」
こいつら、俺の職場に紛れ込む気らしいな。
何をする気だ?
続く
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