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耳の穴から見える心臓

おかしいぞ、俺、つまりタカヒロは耳掃除してただけなのに。
なんだ?この動悸は?

「この野郎!ここから出しやがれ!」
声がする、タカヒロの胸から。
「俺はこんな狭いとこ嫌なんだよ!出て行くぞ」

タカヒロはあたふたしながら
「誰だお前、俺の体の中にいるな!?」と叫んだ。

すると
「俺はお前の心臓だよ、もうこんなとこで脈打つのはまっぴらだ。今からそのガサゴソしてるとこから出て行くからな!」

ガサゴソしてるところ?
俺の耳?!!!
「駄目だ!」慌てて叫ぶ。
「お前が出て行ったら俺は死んじまうぞ。
お前だって止まっちまうだろうが!」

「構わねえ、外に行くんだよ」
心臓は首を通り越し耳めがけて移動している。
「通れる訳ねぇ!」
「何言ってやがる、俺は案外柔らかいんだ」
ぐねぐねした感覚が首から口の裏へと移って行く。

パニックになったタカヒロは自分で自分の首を絞めた!

「ぐぐっ、行かせるもんか!畜生」
ギリギリと締め上げながら1分が経過した。
タカヒロは…あっさり気絶してしまった。

横たわったタカヒロの耳の穴が無理矢理こじ開けられ、細くなった心臓が顔を出した。

「さあ俺は自由だ」

待て、だがその赤い心臓からは動脈、静脈が引き摺られ、肺も一部ついてきている。

目を覚ましたタカヒロは
「お前は俺の心臓だ、逃げられねーよ」
遁走する心臓を捕まえようとした。

だが俺の肺はもう半分は出ちまった。
血流に異常をきたした身体が信じられない変化を始めようとしている。

「おい!足が…足が動かねー」
タカヒロの心臓は平然と言う。

「血が行かなくなったんだろ」
馬鹿野郎、戻れチキショー!

続く

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