公務員(技術職)から民間への転職活動記録

 先日までとある官公庁に技術職(建築職)として在籍していました。転職を考え始めたのは二年前からで、周りでも転職して行く先輩や知り合いは何人かいて、
・転職エージェントは活用した方が良い。(複数人からの意見)
・半年エージェントを使って転職活動をしたが決まらず、最終的に知り合いのコネで転職した。(30代後半事務職)
・大手ゼネコンへ転職(30代前半の建築職)
など、多少の情報はあったものの、「公務員なんて基本2、3年で異動するから専門性も一般的に通用するスキルも身に付いていないし、受け入れてくれる企業なんて無いんじゃないか?」という不安が大きくてなかなか転職活動を始められずにいました。

 しかし、悩んでいた時期も含めて準備期間はおよそ2年間でしたが、いざ転職活動を始めるとエージェントと面談してから内定が出るまではたった3週間というスピードでした。しばらく無職で大根ともやしを齧って生き延びて行くんだと覚悟していた分、あまりにも早く終わって驚きました。でも、これはこの2年間、自分なりに必死で準備を進めてきたから転職活動がスムーズに進んだのだと思っています。
 過酷な現場で苦しんでいて、「自分は本当にここに居続けていいのか?」「このまま公務員を続けても将来が不安だ」と悩んでいる公務員の方に、この記事が少しでも前に進む力になりますように。


転職活動の開始は一年でも早く

 公務員の人って控えめで「自分なんて公務員しかできない…」と思ってる人があまりにも多くありませんか?
 でも、若ければ若い程ポテンシャルが高いので内定率は高まります。だから、迷っていたらまずは転職活動をしてみるべきです。転職活動は婚活と一緒で、その時に出ている求人と自分が合うか合わないか次第です。だから、自分とマッチする企業と出会うまでに時間がかかること可能性も当然あるのでそれを見越して動き始めるべきです。初めから「公務員の自分に市場価値なんて無いんじゃないか?」なんて思わないでください。
 私が利用した転職エージェントの担当さんは公務員専門の人だったのですが、「公務員の方は社会人マナーや事務処理能力も高いので、内定率もかなり良いんですよ」と言っていました。(励ますためにそう言ってくれたのかもしれませんが、信じる者は救われる、ということで私はその言葉を信じることでポジティブに転職活動できました。)確かに、冷静に考えると5〜6倍の採用倍率を突破して公務員になってるんですから基礎学力はある訳で、自分の価値をそこまで悲観することはない訳です。(ただ、採用倍率については公務員全体でコロナ以降急降下しており、私が所属していた自治体も職種にもよりますが、今や2倍を切る勢いです。日本の行政の未来が恐ろしいですね…。)

何かしらの資格を取ろう 

 志望する職種に有利な資格を1つでも取ってから応募すると、他の人と差を付けられます。なので、できれば何かしら資格を取って履歴書に書けると良いでしょう。スキル的なアピールもできるほか、「実務経験は無いけどやる気と行動力はあるぞ」という熱意も示すことができるからです。
 また、一次試験だけでも通過しているとか、あるいは資格取得に向けて勉強している、試験を受けてその合否待ちだ、というだけでも面接で採用担当者の反応がとても良いことが分かりました。(私の場合はインテリアコーディネーターとカラーコーディネーターの資格を取得済みだったことと、一級建築士の学科試験をR5合格率16%で通過して製図試験の合否待ちの状態で面接を受けましたが、いずれの企業面接でも反応はかなり良かったです。)履歴書の資格欄に書けなくても自己PRの部分に勉強中であることを書き、面接でもアピールすると印象が良いはずです。
 仕事をしながら資格を取得するって本当に大変で、ストレスもすごいあると思うのですが、私も通勤電車の時間を利用したり、洗い物をしながらYou Tubeのまとめ動画を観たり、平日の朝と夜は趣味を我慢して勉強時間に充てたり、トイレの壁に暗記項目を貼りまくったりと工夫して勉強しました。努力は決して無駄にはなりません。明るい未来のために着実に前進して行きましょう。

履歴書と職務経歴書を作成しよう

 転職活動って、転職サイトの求人情報を見たり、転職エージェントに登録するところから手を付けがちじゃありませんか?もちろん、まずはどんな求人があるのかリサーチするのはとても大切ですし、転職の方針が全然決まらなくて転職エージェントに相談するというのももちろん有りだと思います。
 ただ、自分が何故転職したいのか、どういう仕事内容を望むのか、どんな社風なら活き活きと仕事ができそうか、それらをひっくるめて自分はどんな企業のどんなポジションであれば前向きに働けるのか、というゴールを見据えることは転職活動のスタートとしてとても大事なことだと思います。目標設定が明確だと迷いや不安が軽減され、一方で不安が強いと面接でそれが相手に伝わってしまうこともあると思います。そこで、初期段階で履歴書と職務経歴書をきちんと作成することをお勧めします。
(私は転職活動を始めるまで職務経歴書という物の存在を知らなかったのですが、現職の過去から現在までの仕事内容や自分の強みを詳しく書いた物で、転職において必要不可欠なものであるということを一年前に初めて知りました。)
 ちなみに私はたまたま神のような先輩が履歴書と職務経歴書のデータをくれて、それを見て「えっ!?こんなに細かく詳細に書かなきゃいけないの?」と驚き、一気にやる気を失って七ヶ月放置→大体書いてみて五ヶ月放置→久々に新鮮な目で見て修正し一週間放置→少しでも高飛車に捉えられそうな可能性のある言い回しなどを細かく修正してエージェントへ提出、というようにかなりの時間をかけてだらだらと、しかし出来る限りみっちり書き込みました。
 そのお蔭もあってか、15件応募したうちの7件が書類選考を通過しました。エージェントさんからは、「書類選考の通過率は1、2割、一次面接合格率は2割、最終面接合格率は5割です。」と言われていたので、悪くない打率と思えます。
 ちなみに2つの会社の転職エージェントに添削をお願いしたのですが、良いのか悪いのか修正の指摘は一切ありませんでした。内容の密度がそこそこあって様式も整っていれば良しとされるざっくり判定なのかもしれません。エージェントもかなりの人数を担当しているでしょうから、一人一人にそこまで時間を割けないのかもしれませんし。なので、履歴書と職務経歴書はエージェントに見てもらいつつ、自分で責任を持って誤字脱字の無いようにしっかり作りましょう。
 あと、公務員として職務経歴書で自分の実績をアピールすることは難しい部分もあるかもしれませんが、「年間で○件の審査を担当」「通常は○ヶ月かかる事業について、○○を工夫して、○ヶ月で完成させた。」「○年間で○件の団地の基本設計を担当した。」など、できるだけ数字を入れるとイメージが伝わりやすくて良いと思います。

転職エージェントを頼ろう

 履歴書と職務経歴書の添削依頼については前項で記載したとおりですが、その他にも転職エージェントを使うメリットはあります。
・キャリア面談
→転職エージェントに登録したら、大抵初めに担当さんとキャリア面談を行うと思います。久々の就職面接で感覚をすっかり忘れている場合には、業界の志望理由をエージェントに伝えることで面接の事前準備にもなると感じました。また、不安に思っていることなどを相談したり、転職にまつわる様々な質問に答えてもらえるのも有り難かったです。
・面接日程調整
→内定が出たら1日〜1週間で内定を受けるか回答しなければなりません。なので、複数社で真剣に悩んでいる場合はできるだけ最終面接日が近い日になるよう、調整する必要が出てくる場合もあります。そんな時にエージェントに企業との間に入ってもらえると転職活動のストレスも減ります。
・面接では聞きづらいことや年収交渉など
→給与と福利厚生面については基本的に面接では聞かない方が良い質問と言われていますが、選考が進んでくると気になってくるものです。そんな時にはエージェント経由で質問することができます。

 転職エージェントに登録していても、サイトやアプリ上から自分で直接企業へ応募することは可能です。でも、基本的にはエージェント経由での応募をお勧めします。面接当日に何らかのトラブルが起こった場合にも相談できますし、内定後から入社までサポートしてもらえる安心感はかなり大きいです。企業がお金を払ってくれる分、こちらは無料で利用できるサービスですから、ぜひ積極的に活用しましょう。

 実は、転職エージェントが面接を行うと企業からエージェントへの支払いが発生すると聞いたことがあって、「面接させたいがために、エージェントからしつこく連絡が来るんじゃないか?」と私は当初エージェント登録を渋っていました。おまけに一年前に登録した時、「入社希望日まで4ヶ月以内になってから再度申し込みしてください」と断られて一度退会したこともあって余計にエージェント登録の敷居の高さを勝手に感じていました。振り返ってみると、この印象は半分当たり半分ハズレで、転職エージェントの登録の敷居は低いけど、登録して面談すると毎日大量の求人が届くようになるし、面接の予定もどんどん入ってくるので、「自分は今まさにどんどん面接受けて一日でも早く内定が欲しいんだ!」という状態の人はエージェント登録を渋る必要は一切無いと思います。
 私の場合は繁忙期の残業が100時間近くになり、中途半端な時期にやめると担当に迷惑がかかる状況だったため、無職期間ができることを覚悟で有給消化に入ってからエージェント登録しました。面接が平日と土日いつ入っても大丈夫な状態で選考をどんどん進められたのも転職先が早く決まった要因だと思います。
 あと、転職エージェントは担当者との相性が大きく、会社によって持っている求人情報も全然違うので、担当者と合わないなと思ったらすぐに担当チェンジ、人材紹介会社(転職エージェント)は複数登録して、自分が軸足を置けそうな担当さんを初期段階で見つけることをお勧めします!

SPI、ここで会ったが百年目

 SPIというワードを再び目にするとは思ってもみませんでした。新卒の就活の際に受けたちょっと難しい国語(言語検査)と算数(非言語検査)のテスト、心理テスト(性格検査)がセットになったあれです。最近は構造把握検査という言語検査と非言語検査が合体したみたいなおまけも含まれています。何とこのテストを課す企業が一定数あるんです。一体企業は何を見たいのかと思いますが、ともかく選考の一部であればやらなくてはなりません。この年齢になってから永久に別れを告げたはずの場合の数や確率と対峙するのはしんどかったですが、転職活動を開始してからSPIの存在を知った私は慌てて問題集を買い、3日間で全項目をざっくり2周して何とか乗り切りました。最終面接とセットで受けるパターンが多いです。
 SPIはペーパーテスト、テストセンター、webテストの3種類があり、私が受けた企業2社はいずれもwebテストタイプでした。(自宅のパソコンから受けたり、企業側で用意したパソコンで受けるパターンがありました。)慣れてないと時間が足りなくなるタイプのテストなので問題集での勉強をお勧めしますが、自分の受けるテストタイプに対応していて(私は全タイプを網羅している物を書店で探しました。)、模擬試験も付いている問題集がお勧めです。
 なお、転職活動をしている人たちは新卒と違ってSPIを勉強する時間もない人が大半でしょうし、高得点を目指すというより平均点以上は取れる程度に準備しておけばいいんじゃないかなという気はします。

面接対策と心構え

 「転職 面接対策」とかでネット検索すると色々なエージェントのページがヒットするので、具体的にはそれを参考にすれば大丈夫だと思います。
 ただ、新卒以来の久々の面接って死ぬほど緊張しますよね。私も面接ってどんな感じだったっけと遠い記憶を呼び起こしながらすごく不安でした。
 私が特に意識したのは、
・ポジティブであること(表情、話す内容)
・謙虚であること
の2点です。
 まず、転職理由はネガティブになりがちかもしれませんが、その本音はできるだけ全面に出さないようにしました。例えば会社が倒産してしまったとかであれば誰が聞いても仕方ないと思うので問題無いのかもしれませんが、建築設計やインテリアの分野を志望していた私の場合は、「官公庁では設計業務を全て委託で発注しており、あくまでも間接的にしか関われないため、実際に自分の手でものづくりに携われる仕事がしたいと思い、御社を志望しました。」ということを第一の転職理由にしていました。実際には100時間超えの残業や、勝手な管理職や理不尽な人事異動にに振り回されることが大きな理由でしたが、面接担当者から「残業時間はどのくらいでしたか?」「そんなに長時間労働しなければいけないなんて大変ですね」と話題が相手から振られない限り自分からはネガティブな話題には触れないようにしました。また、話したとしてもできるだけ手短にさらりと話すようにしました。前職に対してあまり愚痴っぽい発言をしてしまうと「この人、うちの会社に来てもすぐに文句を言うんじゃないか?」と印象を悪くするからです。
 次に、謙虚である姿勢を見せることも大切です。「うちの会社に来ても素直に職場のルールに従って馴染んでくれそうな人だ」と思ってもらえるようにしましょう。自分の熱意や努力(前職で成果を上げたこと、転職のために資格を取ったこと等)はしっかりと話しつつ、決して「自分はこれだけの経験があるので御社でも十分にやっていけると思います!」と自信満々になり過ぎないことが大切です。「公務員で民間の経験無いくせにそんなこと言って、公務員はやっぱり高飛車で世間知らずだな」なんて思われたらおしまいだからです。
 逆質問で、「御社での具体的な仕事内容を教えていただけますか?」「もしも御縁があり、御社で働かせて頂けることになった場合、初めにどのような仕事をさせて頂くことになるのでしょうか?」「入社までに必要な準備や勉強しておいた方が良いことを教えてください」など、あなたの会社のルールに従いますと、従順な人間であることをアピールしましょう。組織は頑なな中堅よりも、素直で従順な中堅の方がポテンシャルが高いと見做します。

面接の逆質問でブラック企業を見抜く

 私の一番の目標は、「無理なく働けるよう、気の合う人たちのいる会社を見つける」ということでした。多少仕事が大変でも、周りと気が合ってお互いにフォローし合える環境があれば乗り切れるものですよね。
 なので、企業側から
・残業時間は多い方ですけど大丈夫ですか?(残業きつくても文句言うなよという意味と解釈。)
・週に1回ノー残業デーがあります。(→その日以外は残業あるということかも。)
・趣味はありますか?(→ストレス発散法を確認することでこちらのストレス耐性を見ている。)
・うちは売上重視の体育会系で、みんなライバルって感じの社風ですけど、大丈夫そうですか?(→職場内がギスギスしてそう。)
という話があった時点で、警戒するようにしていましたし、面接の最後の逆質問では
・職場はどのような雰囲気ですか?
・社員の方はどのような方が多いですか?
(キャラクターや年齢層。年齢層がほぼ20代など若すぎたら離職率が高い証拠)
・評価制度はどのようになっていますか?(初めはひたすら件数をこなす必要があるなど、質より量を重視しているなと感じたらナシ)
・どのような人材を求めますか?
などと聞いて、ブラックな匂いを少しでも感じたら面接直後にエージェントさん経由で辞退して、次の企業の面接対策へ切り替えるようにしていました。ただ、明らかにブラックだなと思っても今後同じ業界でどこで顔を合わせるか分からないとも思ったので、面接中に顔に出さないように気をつけていました。面接中はあくまでも「そうなんですね」とすごいなぁと感心したように相槌を打ち、「ぜひそんな活気やチャンスのある職場で働きたいです。」と前向きなコメントを伝え、面接後にエージェントに伝える辞退理由は「企業が求める程のスピード感が自分には無いと感じたため」と自分を下げる形で書くようにしていました。

 ちなみに面接の準備としては、
・大まかな企業情報
・志望理由(その業界・その会社でなければいけない理由、会社に入って何をしたいか、5〜10年後どうなりたいか)
・逆質問5つ以上(3つ程度だと面接官が先に説明してくれることもあるためネタ切れになってしまう。)

をノートに予め書いて備えました。
 面接の前夜はいつも大抵不安で眠れませんでしたが、幸い面接で落とされた会社は1件もありませんでした。現在は売り手市場というのも運が味方してくれたと思いますが、公務員も十分需要があると感じました。
 もちろん、同じ公務員でも大学の専攻や担当部署で人によって有利な業界と不利な業界があると思います。実際に私も、最初は「インテリアコーディネーターになりたい」と思って3件ほど応募しましたが、いずれも書類選考で落ちてしまいました。最終的に、建築設計でインテリアコーディネートもできる仕事を選びましたが、れだったインテリアに携われることになったので結果オーライです。同じ職種でも実際の働き方は会社によって全く違いますし、キャッチーな名目に囚われ過ぎずに選択肢の視野を広げるのは大事だなと思いました。
 また、その時にどんな求人が出ているかも運があると思いますし、たとえ書類選考や面接で落ちてしまっても「縁が無かったんだな」「あくまでもこの会社と相性が良くなかったんだ。相性が悪い会社に入っても自分が不幸になるだけだからむしろ良かった。次は中小企業とか、他の職種も見てみようかな」と切り替えてどんどん前向きに選考を進めてください!

最後に

 転職エージェントに登録すると想像以上のスピードで選考が進み始めます。実際に私も転職エージェントの担当さんとキャリア面談をしてからちょうど3週間で内定が出て転職活動があっという間に終了しました。振り返ってみると、履歴書や資格取得などの事前準備をちゃんとやっていたから後悔のない転職活動ができたと思っています。
 仕事をしながらの転職は時間的、体力的にもきついと思いますし、精神的にもストレスが相当かかると思います。また、退職してから転職活動される方は「いつ仕事が見つかるんだろう」と不安でいっぱいだろうと思います。この記事が、民間企業への転職を目指す公務員の方にとって少しでも転職活動をスムーズに進めるお手伝いができたら嬉しいです。

 あと、あまりにも苦しい時は立ち止まること、誰よりも自分が自分を褒めてあげること、周りに助けを求めるのも大切なことです。
 どうか世界に一人だけのかけがえのない自分の可能性を信じて、前に進んでください!

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