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【創作エッセイ】アイドルになれたら⑨

※作中に登場する団体や固有名詞等は、現実とは一切関係ありません。全て「うゆ」の夢をもとに書かれたフィクションです。


心の扉から、数cmだけ顔を出して。


『今日はありがとうございました。プレゼントもたくさんいただいて申し訳ないです。全て大切にします。またお会いできる日を楽しみにしています。』

うゆ「送信、っと」

送った瞬間、今までにない身の震えを覚えた。
ジヒョンとのトークルームにメッセージの吹き出しが表示され、未読を意味する「1」がついている。

まだ心が浮ついていて、とてもじゃないけど眠れそうにない。オタクが墓場に持っていくにはあまりにも多すぎるプレゼントをいただいてしまったという事実と、とにかく一日中ジヒョンが傍にいたという事実が、サンドバッグを殴るが如く心臓に強烈なパンチをくらわせる。
今日の出来事が全て妄想だったとしても、悔いなく死ねるくらいには贅沢すぎた。

そんなこんなでボーっとしていると、メッセージの数字が消え、着信が来る。

うゆ「え、ビデオ通話?!」

マメに連絡を取り合う文化だとは知りつつも、推しと顔を見ながら会話するのは心臓爆発案件。化粧を落とさずにいたのが幸いだった。
震える指先をなんとか制御ながら応答する。

うゆ「もしもし?」

ジヒョン「うゆさん、今大丈夫ですか?」

うゆ「大丈夫ですよ。あ、プレゼント本当にありがとうございました」

ジヒョン「あぁ、バレちゃいましたか(笑)」

うゆ「文字でわかりました。ジヒョンさんの字、すごく上手ですよね」

ジヒョン「ありがとうございます。あと…プレゼントの中身、見ました?」

うゆ「はい。すごく素敵なものばかりで、本当になんか申し訳ないです…」

ジヒョンの口元が歪んだ。きっと私が素直に「ありがとう」と言わなかったからだろう。

うゆ「あ…ありがとうございました。本当にすごく気に入りました」

ジヒョン「...もしかして、負担になってますか?」

うゆ「え?」

ジヒョンの表情が悲しげになる。眉毛が下がり、怒られた犬のようにシュンとしてしまった。
か、可愛い…!!と思いつつ、そんな顔をさせた自分を全力で殴りたい衝動に駆られた。

そんなこちらに構うことなく、ジヒョンが話を続ける。

ジヒョン「僕、良くしてあげたい気持ちがいつも空回りしちゃうんです。何をしてあげたら喜んでもらえるか、自分なりにたくさん考えても相手にとってはそうじゃないってことが多くて」

うゆ「そうなんですか?」

ジヒョン「この前のシウさんの誕生日に、シウさんが好きなブランドのセットアップと欲しがってたスニーカーをプレゼントしたら、“嬉しいけど、普段は着れないね”って言われて...」

確かにそのやりとりは先々週の配信で聴いた。でも実際シウオッパはめちゃくちゃ喜んで全身コーデをSNSにアップしていたし、海外スケジュールのため空港に出向いた際もジャケットとスニーカーを着用していた。ファンから見ても、負担になっているとは到底思えない愛用っぷりだった。

うゆ「とっても素敵だからこそ、特別な日に着たいってことだと思いますよ。本当に気に入ってなかったらそもそも受け取ってくれないはずですし」

ジヒョン「そう、ですかね」

うゆ「私はそう思います。今日頂いたアクセサリーも、大事なスケジュールの時に身につけたいと思ってます。ジヒョンさんの相手を思う気持ちは、ちゃんと届いていますよ」

ジヒョン「...ありがとうございます。やっぱりうゆさんはいつでも前向きで素敵です」

そう言う目はまだ光が無く、落ち込んでいることが一目で分かった。

ジヒョンもこういう顔するんだ。今までファンにそんな感情見せたことなかったのに。
心配になりつつも、誰も知らない推しの一面を知れたことに少なからぬ喜びを感じた。それだけ心を許してくれているということなのだろうか。

うゆ「とんでもないです。私もジヒョンさんの優しさに感動しました。また今度お礼させてください」

ジヒョン「それなら、日本に戻る前に時間ありますか?」

うゆ「え、ありますけど…」

ジヒョン「一緒に行きたい場所があるんです」

心臓が、ドキッと音を立てた。

ジヒョン「明日の夜、迎えに行きます」


キャプション

「U-MELLOD」(ユーメロディ)
由来:「君(U)に向けて(-)音楽(MELLOD)を届ける」という意味を持つ5人組ボーイズグループ。
どんなコンセプトも消化するため、天才アイドル集団という異名を持つ。
ファンダム名は「U-HALMONY」(ユーハーモニー、通称ユハモニ)。
・ジュンホ:95年生まれ。長男。メインラッパー。
・シウ:98年生まれ。リードボーカル。
・ジョンソク:99年生まれ。リーダー。メインボーカル。
・ジヒョン:00年生まれ。メインダンサー。
・チャンミ:01年生まれ。サブラッパー、ビジュアル担当。愛称はローズ。

「WellBee」(ウェルビー)
由来:「音楽を通じて”自分らしい豊かな生き方”(=ウェルビーイング)を実現する」「全てをこなすオールラウンダー集団になる(doing WELL + BEcomE)」の意味が込められた5人組のガールズグループ。
現実に少しだけ幻想が混ざったような世界観を得意としており、ダイナミックなダンスと繊細かつ緩急の効いた歌声に定評がある。
ファンダム名は「WeBelieve」(ウィービリー)。
・レミ:99年生まれ。長女兼リーダー。ビジュアル担当。リードダンサー。
・うゆ:01年生まれ。WellBeeの音楽PD。リードボーカル。
・ルイ:02年生まれの01Line(早生まれ)。メインダンサー兼サブラッパー。
・カヤ:04年生まれの03Line(早生まれ)。メインラッパー。
・ヒヨ:04年生まれ。マンネ。メインボーカル。

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