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whatever happens happens

壁一面の窓から見える降雪。雨の足音が聞こえていたかと思えば、気づけば随分慎重な足取りに。

本を返しに、そして借りに、大学の図書館にやってきたわけだが、珍しく事前に借りようと決めておいた本をメモしてくることを忘れてしまった。生活が乱れに乱れているおかげで、昼に起床し、ほぼそのまま家を出たものだから、はて一体どんな本を借りようかと、少し眉をひそめる。

しかしたまには、その時に借りたいを思った本を借りるのもありかなと考え及んだので、図書館内を散策しつつ、雪景色の素敵なことにボヤーっと。かれこれ図書館に通い詰めていると、このエリアは好きだな・・・と思う所がある。司書さんほどじゃないけど、図書館の案内が出来そうな気がして来た(無理だな)。養老孟司さんの本を中心に借りて、図書館を後にしてちょっと雪景色を撮影。「おお、雪だ」と、「素敵な『跳躍』」¹(山田真茂留、2010、104)に少し心躍った、と思う。

雪なんてらしくないねと、それは自分の行動を暗に示しているような、そんな感じが今している。

雪が降っている。降雪だ。降雪。大学のバスに乗ろうと、列に連なっているその光景は、蟻の大群のよう。あー。前の人の頭の部分に違和感。雪が降っているのに。でも、予報だと雨だったからなと。その時、東浩紀さんの「弱いつながり」という本を思い出した(どんな内容かは調べてください)。でつい、「傘貸しましょうか と」口から漏れたような気がする。てかそう言いました。

つい話しかけてしまったというか。なんとなく困っていそうというか、ある意味では自分の勝手な思い込みでしかない推測に頼るしかないというか。ともかくも、つい手を差し伸べてしまったというわけではないけれど、つい傘を貸そうかと漏らしてしまった、に近いのかもしれない。とはいうものの、傘を二つ携帯していたわけはないから、一緒に使うしかなかったわけだ。

偶然の・・・。いやそんな大層なもんでもない。偶然傘を共有して、雪の下で、あぁそうなんですかと、初対面の割には笑えたカンバセーション(どうして英語?)。相手も大学生で、今年のオンラインには困りますねと、共通の話題があって一安心。初対面でも案外話せるもんなんだなというか、むしろある程度知っている人よりも、全く知らない人との方が話しやすい謎の性質のおかげというか。

偶然性を大切にしたい、と今年の最初に書いた、去年の価値体系や思想の転換についての記事のことを、偶然に体現できた気がしなくもない。偶然。たまたま雪が降って。たまたま傘を持っていた。たまたま前の人が傘を持っていなくて。たまたま盛り上がることができて。あー。これが「偶発性」なのかなと感じた。(でも、これは偶然性のポジティブな面なのだろうね。)後、緑谷出久のように誰彼構わず助けるというのは難しいなとも感じた。

おお、これが人間のやり取りか・・・と、養老孟司さん(解剖学者)と山極寿一さん(ゴリラの研究している人)の「虫とゴリラ」という本にある内容を読んで思う。「言葉はアナロジーですから、それを頭の中で入れ替えながら、本来ならば違うものを『同じ価値を持つもの』として頭で意識することが出来る」²(山極寿一、2020、72)。傘を共有した(”貸してあげた”という言い方は好かん)人は、「電車の時間大丈夫ですか?」と、その言葉を聞いたときは意図が分からなかったけれど、その次の「なんか買いますよ」を聞いた瞬間、ワタシの言葉の企投的意味を志向する機能は正常に機能した。「いいですよ×2、いいんですか?。じゃあ・・・」というダチョウ俱楽部のようなやり取りは飽きているので、被りぎみに「はい!」と言うと、コンビニでカフェオレを買ってもらった。

傘を共有するという行為と、カフェオレを購入するという行為は、全く異なるもの。それを「『同じ価値を持つもの』」として考え、ワタシにカフェオレを買ってくれたあの人は、いやそのやり取りそのものも、些細なものかもしれないけれど、実に人間的だなぁと感じざるを得ない。(ただ感想を云うよりも、こうやって物事を一歩引いてみないと我慢できない病気にでもかかっているのか・・・)

大学生として、「偶然性」は改めて重要なものだと感じる。それがどのようなものであったとして(道徳や倫理を逸脱しすぎない限り)も、自分にとって新鮮なものになる気がするから。もしかすれば、意外なものが貰えるかもしれないからね・・・。人助けをして、絶対にモノが貰えるということを言いたいわけではないけれど、やっぱり人助け(かどうかはわからないけど)って、良い事かもしれないと感じる。

雪の日の出会い(?)について、買ってもらった雪印メグミルクのカフェオレ(ヒンナヒンナ...)をチビチビと飲みながら。お、「雪」の字が二つ。これも、偶然ですかね。




今日も大学生は惟っている


引用文献

¹ 山田真茂留.2010.非日常性の社会学.学文社

² 養老孟司, 山極寿一著.2020.虫とゴリラ.毎日新聞出版




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p.s.

しばらく人と直接話していなかったので、タノシカッタです。いや、偶然性に感じた、「非日常性」に、有難みを感じたのかもしれません。


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