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生ジョッキ缶のマーケティング戦略を考察し、勝手に改善案を考えてみた

はじめに

こんにちは、サンチャゴです。
普段はIT系の企業でWebサービスのマーケター兼PdMを行なっております。

今回は一時期品薄で話題にもなった生ジョッキ缶が3月下旬から行なっている、マーケティング戦略について考察していきます。

noteの題材として生ジョッキ缶を選んだ理由としては、私自身がビールが好きであり、それが缶を開けただけで生ビールになる生ジョッキ缶の体験の新しさに感銘を受けたためです。

(コンサル案件と異なり、個人の印象に基づく考察になることご容赦いただけますと幸いです)

記事の構成は、P&Gを卒業した方々のマーケティング戦略の考え方をベースに記載をしております。その考え方については、下記の青木さんが書かれたnoteが詳しくまとまっておりますので、一読いただけるとわかりやすいです。

まずは、現在、生ジョッキ缶がどのようなマーケティング戦略をしているかを確認しましょう。下記が生ジョッキ缶のPRサイトになります。

その中でも注目をしていただきたいのが、左側の
#生ジョッキ缶 やってみた
を選択してスクロールされるコンテンツです。

そこには、

  • Sexy Zoneの中島健人さんと菊池風磨さん

  • 元乃木坂46の白石麻衣さんと西野七瀬さん

がそれぞれ出演している、縦長のTikTok風の動画があることがわかり、これこそがまさに生ジョッキ缶のマーケティング戦略を体現しているものとなります。

ここからはこのプロモーションに込められた思いを、1人のマーケターとして分析していきたいと思います。

※もし、この記事を読んで、コメントやご意見がございましたらお気軽にコメントをいただけると幸いです!

現在のマーケティング戦略の考察

上記で記載させていただいた、P&G流のマーケティング戦略の考え方の基本に基づき、
Object→WHO→WHAT→HOW
の流れで確認をしていきます。

Object(目的の設定)

この動画コンテンツの目的ですが、生ジョッキ缶の認知、利用意向の向上が考えられます。簡単に言うと、
生ジョッキ缶というものがあるんだ、飲んでみようかな
と思ってもらうことを目的にしていると仮定しました。

P&G出身のマーケターである、株式会社クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役の音部大輔さんのパーセプションフロー・モデルを踏襲すると

現状→認知→興味→購入→試用→満足→再購入→発信

音部大輔(2021). THE ART OF MARKETING マーケティング技法 宣伝会議

認知→興味→購入→試用→満足
を促すことが目的であると整理します。

WHO(誰に売るのか)

目的の設定をした後にすることは、誰に売るかを決めることです。

まずは、よくある切り口として性年代別(デモグラフィック)があり、今回のブランドの打ち出し方を見ると、性別については男女両方であり、年代については20、30代くらいの若者だと考えられます。そう想定した理由は単純で、プロモーションに採用しているタレントの年齢層から素直に考えました。

そのほかに考えられるWHOの切り口としては、お客さまの課題でカテゴライズする方法です。マーケターとしてはこちらの切り口の方が重要となりますが、今回のプロモーションは課題解決の提案をしているというより、お客さまへエンターテイメント体験の提案をしているのでこちらの切り口での検討は割愛させていただきます。

WHAT(何を売るのか)

では、WHOを考えた後は、上記のターゲットに提供する便益(ベネフィット)について考察します。

売る商品自体は、生ジョッキ缶と決まっていますが、ここで考える必要があるのは、その商品によってどのような便益をお客さまに提供できるかという点です。便益と似たような言葉として機能があり、それらの違いについて簡単に説明します。

  • 機能主語が商品で、その商品の特徴を表したもの

  • 便益主語がお客さまで、その商品・サービスをお客様が使いたい理由

そのため、機能は「生ビールのように泡が出る」ことであり、便益は別にあるということです。

既に打ち出されている施策から便益を逆算して考えると
家で楽しい生ビールの体験ができる
ということが価値と考えられます。

考察としてはまだまだ甘い気がしますが、表面的な戦略検討としては上記として進めていきます。

HOW(どうやって売るのか)

最後に検討するのは、上記で考えたWHOとWHATをどうやってお客さまに伝えるかという、マーケティングの活動としては目立つ部分になります。

今回、生ジョッキ缶のプロモーションで確認できたのは、主にTVCMとYOUTUBEの縦長動画なので、それぞれの動画を2つずつ紹介します。

TVCM例

アサヒスーパードライ CM 「世界初!生ジョッキ缶」 中島健人&菊池風磨篇 15秒

アサヒスーパードライ CM 「めっちゃ、生ビール!」 白石麻衣篇 30秒

YOUTUBEの縦長動画例

アサヒスーパードライ CM 「生ジョッキ缶やってみた!裏ワザ セクシーカラン」 中島健人&菊池風磨篇

アサヒスーパードライ CM 「生ジョッキ缶やってみた!裏ワザ ぬるま湯につける」 白石麻衣&西野七瀬篇

という感じで、生ジョッキ缶だとこんなに楽しい体験ができるよ!、といった生ジョッキ缶による体験に焦点を当てた動画になっていることがわかります。この体験を若者をメインに知ってもらおうという認知や、最初の購買を促すための良いプロモーションだと考えております。

マーケティング戦略の改善案

一通り現在のプロモーションをもとにマーケティング戦略を考察した上で、ここからは、私が思う課題点や改善策案を挙げたいと思います。

現状考えられる便益(WHAT)の課題

現在のプロモーションの便益(WHAT)は
家で楽しい生ビールの体験ができる
と書かせていただきましたが、その便益だと
面白い体験の提案はあくまでも一時的に楽しむものであり、継続的な利用意向にはつながりにくい
ということです。

確かに、生ジョッキ缶による泡が出る体験や、お湯に入れると泡が復活する体験は、この商品独自のものであり、楽しいものだと思います。しかし、この体験が日常的に行いたいものになるとは考えづらいです。

具体的には、1人でいる場合や、いつもの家族で晩酌をするときに毎回あの泡の体験が楽しめるものではないと思いますし、それが1ケース(24缶分)分、飽きずにやり続けている状況もあまり想像ができません。

そのため、あくまでも友達や親戚が集まるような、特別な日のビールとして売り出していくのであれば、今のままのプロモーションでも良いと思うのですが、毎日飲むような場面においては生ジョッキ缶は想起しにくい状況になっていると思います。

課題解決に向けた便益(WHAT)の再設定

上記の課題を勝手に妄想した上で、さらに私が生ジョッキ缶のブランドマネージャーであればどのような、戦略をするかを簡単に提案したいと思います。

まず、私の場合は生ジョッキ缶の便益(WHAT)を、面白い体験の提供から変えたいと思います。では、具体的にどのように変えるかについですが、それについて考える前に、生ジョッキ缶のオリジナル商品(?)であるお店で飲む生ビールが顧客に提供していた価値について整理します。

基本的には、居酒屋で飲む生ビールには大きく2つ便益があったと考えております。

1つ目が、感情的な便益で、一緒に飲みにきたメンバーと「とりあえず生」と言って同じ商品を頼むことで、メンバー同士の一体感を感じる体験を得ることができるというものです。これは、生ビールがどうかというより、一緒にいるメンバーと同じ体験をすることにポジティブな思いをいだくことを指します。

引用)いらすとや

ただ、この1つ目の便益については、居酒屋で複数人で同じことをすることに意味があり、家で飲むことが基本である生ジョッキ缶では、類似の体験を再現するのは難しいので、今回はここを掘り下げません。

(この、みんなで一緒に体験するものは実際は生ビールでなくてもよく、この「1杯目は生」という文化を作った人は、凄腕のビール会社のマーケターだったんだと思います。)

2つ目が、機能的な便益で、泡によって視覚的、触覚的に炭酸の刺激を体験しやすいものとし、ストレス発散の効果に寄与するという点です。今回はこちらの便益をお客さまに伝えることによる生ジョッキ缶のマーケティング戦略を考えていきます。

そもそも人々がビールを飲む理由ですが、ビールには苦味炭酸冷たさというストレスを解消する働きを持つ刺激を兼ね備えており、日々のストレスの発散を本能的に求めている結果だと思います。そのため、ビールの泡が持つ働きは、上記の炭酸冷たさ視覚的、触覚的な体験を向上させることであり、これこそがビールの泡の価値と考えております。

そのため、今回、私は生ジョッキ缶の便益として
日本で一番ストレス発散ができるビール
と再設定したいと思います。

プロモーション(HOW)の再構築

では、この便益をどのようにお客さまに伝えるのが良いかを考えていきたいと思います。

まずは、上記の便益の裏付けを取るためのユーザーテストをとり、泡があることによって、他の缶ビールと比べてストレスの発散効果が高いかの検証を行います。

この結果、泡があることによってストレスの発散効果が他の缶ビールよりも有意に優れている結果が出れば、その内容を全面に打ち出したCMを打つと思います。

出なければ、別の方法でいかにストレスの発散に寄与するのかを頑張って見つけます(笑)。世の中には、定量的なデータがなくとも、芸能人のイメージを使って美味しく見せる手段あるので、その作戦に舵を切るかと…

(例えば、タモさんを使った本麒麟のCMはタモさんが美味しいって言っているだけで、美味しそうに感じますよね)

少し話がそれましたが、大まかなマーケティング戦略はこのような感じです。

終わりに

以上、自己勝手な考察と改善案を書かせていただきました。アサヒビールのマーケティング担当の方がもしご覧になったら、なんて浅はかな考察なんだと笑われるかもしれませんが、生ジョッキ缶という商品が個人的に物凄く好きだからこそ、記事にさせていただいた次第です。

私の主観まみれの記事であり、いろいろツッコミたい部分も多いと思いますので、どしどしコメントいただけるとありがたいです。

今後もマーケティングや顧客体験に関する記事を定期的に書いていきたいと思いますので、よかったらフォローのほどお願いします。

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