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仕事に大きな影響を与えた、マーケティングフレームワーク

森岡毅さんの水色本で、仕事上よく使う図があります。これを初めて読んだ3年前から深く理解し、実践していれば...と強く思う内容です。

仕事をする中で日々意識をしているのですが、改めて原文とともに、整理してみます。自分も何度も読み返すようとして、細かく書いてみました。


必ず目的に近い所から考える

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目的:OBJECTIVE(達成すべき目的は何か?)
目標:WHO(誰に売るのか?)
戦略:WHAT(何を売るのか?)
戦術:HOW(どうやって売るのか?)

何か成したい時、必ず目的→目標→戦略→戦術の順番に考えます。

戦況分析にデータを元にして、適切な目的を設定をし、WHO(誰に?)を決定し、そのWHOに対してWHAT(ブランド価値のどの部分を訴求するのか?)を決定し、最後にHOW(どうやってHOWにWHATを届けるのか?)を決定していきます。

目的、WHO、WHAT、HOW、それぞれが戦況分析によって得られた質の高い情報資源を必要とします。戦況分析に関してはまた深く掘り下げるとして、今回は目的〜HOWに関して触れます。


目的の設定(OBJECTIVE)

戦況分析を進めながら、最初にすべきは仕事の目的設定。この目的の設定によって、蘇直人の目標も戦略も戦術もすべて変わってしまう。目的が適切であることの重要性は、いくら強調してもしすぎることはない。適切な目的設定のポイントは3つあります。

1.実現可能性:
ギリギリ達成するか目的か?適切な目的は「高すぎず低すぎず」という相反する条件を満たすもの。どうやっても達成不可能な目的では戦略の立てようがなく、社員のモチベーションも上がらない。簡単すぎる目的では誰も努力せず、重要な機会ロスになってしまう。ギリギリ達成するかどうかが大事。

2.シンプルさ:
シンプルな目的か?要素が沢山含まれる複雑な目的設定は機能しない。人が理解できる、覚えられる、すぐに思い出せることが大切で、そのためにはシンプルな目的設定を心がけなければならない。限りなくシンプルで明確な目的設定をすることが大事です。

3.魅力的かどうか:
奮い立つ目的か?頭だけでなく、心からどうしても達成できるような目的が設定できれば、どんどんを人を巻き込んでいくことができます。魅力的な目的は、人的資源を増幅させることができます。それは粘り強く戦い続けるために非常に重要です。

USJの目的設定は、局面ごとに1要素だけのシンプルな目的設定をしていました。例えば、「ファミリー層の獲得」「関西依存の集客体質からの脱却」「開業年度の過去最高を大きく超えること」などがあります。


WHO(誰に売るのか?)

目的の後に決めていくのは、その目的を満たすためのマーケティングターゲット(目標)として、誰を狙うのかというWHOの決定。

1.消費者を選ぶ理由:
WHOとは限られたリソースを投下する、目標となる消費者のことです。限られたリソースを消費者全員に投下すれば一人あたりのリソースは薄くなってしまう。また消費者全体の中でも「買う確率」や「購買欲」に大きな偏りがあり、同時に満たすべき消費者ニーズにも偏りがあるからです。闇雲にターゲットを決めずに予算を投下することによって、目的を果たせなくなる可能性があります。

2.「戦略ターゲット」と「コアターゲット」:

コアターゲット.001

WHOを設定するやり方は、戦略ターゲットとコアターゲットとの2つに分かれます。すべての消費者の中から、まず戦略ターゲットを選び、その次にコアターゲットを選びます。

戦略ターゲットとは、ブランドがマーケティング予算を必ず投下する最も大きな括りのこと。戦略ターゲット外にいる消費者には予算を投下しません。最も注意すべきは、この戦略ターゲットの括りが目的達成に照らして小さすぎないようにすることです。USJはかつて戦略ターゲットを「ハリウッド映画が好きな消費者」と定め、ターゲットへの幅を狭くしていました。関西という立地条件で、年間1000万人以上の集客を達成するには狭すぎるターゲットでした。

コアターゲットとは、戦略ターゲットの中から更にマーケティング予算を集中するターゲット消費者の括りのことをいいます。消費者の購入確率や購買力に大きな偏りがある時、ブランドを購入する必然の高い消費者グループをコアターゲットとして設定します。戦略ターゲットと同じく、目的達成に照らして少なすぎないようにすることが大事です。

3.コアターゲットの見つけ方:
既存ブランドが成長したい時に、有効なコアターゲットを発見する6つの切り口が下記になります。

①ペネトレーション:
カテゴリーの中で、自ブランドの世帯浸透率を増やせるグループはどこか。 USJにとって、「小さなな子供連れファミリー」が余白でした。

②ロイヤリティ:
既存の使用者の中で、SOR(Share of Requirement)を伸ばせるグループはないか。SORとは、カテゴリー消費における自ブランドのシェア。

③コンサプション:
既存の消費者の中で、一回あたりの消費量を伸ばせるグループはないか。1回あたりの消費者量が増えれば、自ブランドの売上を伸ばすことができます。

④システム:
既存の使用者の中で、使用商品の種類(SKU数)を増やせるグループはいないか?例えば、シャンプーだけしか使っていない消費者に対し、トリートメントなどを買ってもらうことがここにあたります。

⑤パーチェースサイクル:
既存の消費者の中で、購入頻度を上げられるグループはいないか?例えば、美容院が全客平均で5週間に1回来店していたのを4週間に1回にすることができれば、売上が20%上がることになります。

⑥ブランド・スイッチ:競合ブランド使用者の中に、ブランド変更の可能性が高いグループはいないか?これに関してはエネルギーが多くかかるのでハードルが高めです。

4.消費者インサイト

コアターゲットが明確に定まった場合、コアターゲットの深層心理(消費者インサイト)を探りましょう。消費者インサイトとは、「消費者の隠された真実」のこと。この消費者インサイトをコミュニケーションでつくと、消費者の認識は大きく変わったり、感情が動いたりします。強い消費者インサイトは、理性を「はっと」させるか感情を深く「エグる」ものです。

インサイトを衝かれることで、消費者は自社ブランドのベネフィットを大幅に理解しやすくなったり、欲しくなったりするのです。

認識を大きく変えるインサイトを、「マインド・オープニング・インサイト」と呼び、消費者の感情を大きく動かすインサイトを「ハート・オープニング・インサイト」と呼びます。

例えば、全社の例だと、アリエールの上記の映像がそれにあたります。「衣類には菌が沢山いる」という認識を変える映像です。

後者の代表格としては、USJの感情を抉る映像をみてもらいたいです。2010年からの映像は、娘がいる父親目線で見るとやばいです。


WHAT(何を売るか?)

マーケティングフレームにおけるWHATの使命は、自ブランドの消費者価値を選ぶことです。ブランドの存在理由とも言うべき消費者価値を選んで明確に規定します。消費者がそのブランドを選ぶ必然、そのブランドを購入する根源的な理由、それがWHATでの戦略的な選択となります。

「人々は4分の1インチのドリルをほしいのではない。人々が欲しいのは、4分の1インチの穴である」

という言葉は有名です。自分たちが本当に売っているのは何か(消費者の根源的な価値)を考えるのに強い示唆を与える名言です。

USJでも同様です。消費者がほしいのはアトラクションではなく、そのアトラクションを体感した時に巻き起こる「感情」です。アトラクションそのものではなく、どんな感情が味わえるのかを訴求しないといけないです。これは旅行という領域でも同じことが言えます。

東京ディズニーランドのWHATは「幸福感」であり、キャラクターやアトラクションなどはHOWであると。フェラーリのWHATは「成功者としての優越感」であり、HOWは「かっこいいエンジン音」と言えます。

ポジショニングについて:
マーケティング用語の中に「ポジショニング」という考え方があります。簡単に言うと消費者の頭の中にある競合との相対的な位置づけです。消費者の頭の中で、購入理由の強い理由となるブランド・エクイティに近いポジショニングが有利になります。

例えば、家庭用掃除機市場において「吸引力の強さ」が消費者にとって重要な購買決定理由であれば、「吸引力が強い」というブランド・エクイティを持っているダイソンのポジショニングが有利になります。自動車では「信頼」がそれに当たるでしょう。僕たちも旅行においてはなにか?というのは常に考えておく必要があります。今だと、間違いなく「安心・安全」でしょう。

同時に、ポジションニングは相対的であることも覚えていく必要があります。自分が動かなくても相手が動くことでポジショニングが動かされてしまうことがあります。


HOW(どうやって売るのか?)

マーケティングフレームワークの最後が、HOWです。戦術が強くないとどれだけ素晴らしい戦略であったとしても目的は達成できません。HOWが弱ければ、どんなに強いWHATであっても消費者に届くことはありません。HOWは、WHATをWHOに届けるための仕掛けです。

消費者の目にまつわるほぼすべての要素はHOWである場合が多いです。商品パッケージも製品も、TVCMも価格戦術もHOWです。

マーケティング・ミックス(4P):
マーケティングの4Pと聞いたことがある方も多いと思います。これはHOWの主な領域をまとめた言葉です。製品をどうやって作るのか(Product)、価格をどう設定するのか(Price)、流通をどう設定していくのか(Place)、どうやって顧客に販売促進をするのか(Promotion)の4領域です。

Product(製品):
Product領域の目的は、顧客に提供するものを決めることです。WHATを深く理解し、WHATを効果的に消費者が実感できるように、商品のスペックを決めます。具体的には、形状・形体、ネーミング、包装、セット・パッケージ販売が当たります。

Price(価格):
Price領域の目的は、自ブランドが目指すポジションに適した価格を決めることとその実現です。その実現という言葉が深いですね...。消費者の需要に応じた設定を行う必要があり、かつコストに応じた設定も必要です。具体的には、価格戦略の決定であり、需要に応じた設定、コストに応じた設定、競合他社との関係、価格弾性があります。

Place(流通):
Place領域の目的は、効率的かつ効果的な顧客への販売アクセス方法を決めることです。自社商品が消費者に届くまでの流通経路を設計することです。例えば、卸売業&小売業、小売店のみ、ダイレクトマーケティングなどがあります。MATCHAのようなWEBサイトの場合だと、MATCHA自体がPlaceになります。

Promotion(販促):
Promotion領域の目的は、効率的かつ効果的な顧客への情報伝達方法を決めて実行することです。具体的には、明確化したターゲット設定、コミュニケーション目標の設定、プロモーション手段の選定などがあります。よくマーケティングをプロモーションだけと考える人がいるのですが、実は最後です。


最後に

色々と整理しながら書いていたら、5000文字近くになってしまいました。改めて書いて見てみると、ハッとさせられることがいくつもありました。森岡さん、適切な目的に対してWHO、WHAT、HOWがすべてうまく組み合わさると、爆発的なビジネスの成功が生まれると書いています。

「どう戦うかの前に、どこで戦うかを正しく見極めること」

それが会社をかたせる軍師であるマーケターの最初にして、最重要な仕事であると。この章に書いてあるハロウィーンイベントの事例はめちゃくちゃ面白いので、是非本書を読んでもらいたいです。

また上記を整理して強く感じたのが、深い戦況分析がないと、適切に目的もWHOもWHATもHOWも作れないということ。会社のある資産を経営陣、メンバー含めてしっかりと把握し、共有し合うことの重要性を感じます。やはり知らないことは、人は扱うことができないからです。

このタイミングだからこそ、改めて会社の戦況分析を行い、会社を勝たせるマーケティング戦略を作っていきたいです。

↑前回の森岡さんの水色本エントリーです。

何度も読んでも面白いです。

最後まで記事を読んでいだきありがとうございます。毎日更新をしているので、よかったらまた読んでもらえると嬉しいです。