見出し画像

ある日、突然我が家にやってきた”にゃもち”が教えてくれた日常の豊かさ

みなさんは”にゃもち”を知ってますか?
”にゃもち”はキャラクター(ぬいぐるみ?)の名前らしいです。30代男性の僕はぬいぐるみにそこまで縁がなく、半年前までその存在を知りませんでした。
本当の豊かさはすぐそばにある。常に”ないもの”ばかりに目を向けていた僕が、そんな当たり前の事に気づく話です。

"にゃもち"がある日突然家にやってくる

僕たち夫婦は2人でマンションに暮らしており、共働きです。僕の会社が自宅から遠く、妻が先に帰っています。
夜はコートを着ないと冷える2019年の11月。仕事が終わり玄関を開けるとその日も、妻が先に帰っていました。

僕「ただいまー」
妻「おかえりー」

TVがあるリビングに向かい、コートを脱ぐと僕が座っている座椅子に見た事のないぬいぐるみが置かれていました。

iOS の画像 (4)

僕「……?」

僕が戸惑っていると、妻が得意気に「かわいいでしょ?"にゃもち"って言うんだよ」と。
(座れないんだけど、、。しかも割と大きいな、、)

妻が買ってきた”にゃもち”との共同生活が始まりました。

寝る時もTVを見る時も隣に”にゃもち”

にゃもちの主な居場所はリビングです。リビングでは、妻がバラエティ番組を観て、僕が横でPCを使って作業をしたり勉強して過ごしています。
(妻はお笑いやネタ番組が好きで、若手ライブにも足を運んでいました)
妻は両手でにゃもちを抱きながら、TVを観ていました。
僕がふと顔を上げ、

僕「TV見ながら抱いてる時、いつも顔の方が前に向いてるよね」
妻「”にゃもち”がTV観れるようにしてるからね。一緒に楽しんだ方がいいし」
僕「……(ぬいぐるみってお笑い観たいのか??)」

別の日。リビングに置かれた”にゃもち”を別の場所に移動しました。PCで作業をしていると、妻が帰ってきました。
”にゃもち”を見かけるなり、

妻「ちょっと!!”にゃもち”がかわいそうでしょ!」
僕「…??」
妻「裏返ってるじゃん!」

iOS の画像 (6)

にゃもちが裏返っていたのです。顔の上下がパッと見て分かりづらく、僕が置いてしまいました。正直な気持ちとしては「そこ、そんなに大事かなあ、、」と思いつつ謝ります。

僕「ご、ごめん、、」

我が家には"にゃもち"以外にもぬいぐるみがいます。

iOS の画像 (12)

僕「このぬいぐるみちょっと移動していい?」
妻「”ぬいぐるみ”じゃなくて、コウペンちゃんね」
僕「……」

また別の日。
僕「コウペン移動していい?」
妻「”コウペン”じゃなくて”コウペンちゃん”ね」
僕「……」
妻「”ちゃん”までが名前だから」
僕「”コウペンちゃん”こっちに置くね。。」

「ぬいぐるみ」になぜそこまで愛着が持てるのか当時の僕にはよく分かりませんでした。一緒に暮らし始めた時もぬいぐるみが多いなあ、と思った事もありますし、加えて妻が新しいぬいぐるみをちょくちょく連れてきます。
(妻はぬいぐるみを”買った”ではなく、”連れてきた”と言います)

結婚してからはっきりしましたが、妻と僕の趣味はかなり違います。

僕:ベンチャー企業勤務。オンラインのコミュニティに参加したり、SNSもアクティブ。ビジネス系のセミナーやイベントで仕事の情報収集が日課。キャリア、資産形成、健康を含めた”将来”に関心があります。

妻:伝統的な企業勤務。ビール、旅行、食べ物、お笑い、ゆるキャラが好き。若手お笑いコンビのライブにも足を運び、第7世代に注目しています。エンタメ情報はテレ東佐久間さんのオールナイトニッポンで情報収集しているようです。

僕は「将来のための現在」妻は「現在」を大事にしている傾向があります。その日までは、性格が違うなりにお互いを尊重しつつ暮らしてきたつもりでした。しかし、2020年春から僕たち夫婦の生活が大きく変化します。

感染型ウイルスの影響で生活の全てが変わる

画像1

2020年春。感染型ウイルスが蔓延し始め、その影響で世界の様子が大きく変化しました。僕たち夫婦の生活も変わり、ベンチャー企業で働く僕はリモート対応になり、妻も出勤日数は減り、自宅で仕事をする機会が増えました。
ニュースでは、毎日感染者の数が発表され、世の中が全般的に不安を感じていました。買い物に行っても、誰かが多少咳き込んだだけで、怪訝な顔をする方を見かけるようになります。
SNSのタイムラインもどことなく「不安」や「苛立ち」が垣間見える投稿が増えました。

僕たちは、何を信じればいいのか?

誰もが「何を信じればいいのか分からなくなっていた」んだと思います。
僕がフォローしているアカウントはやマーケティング、編集などのビジネス系アカウントになります。タイムラインでこのような投稿を見かけるようになりました。

「このタイミングで何をするか」が大事であり将来に大きな差が付く。

外出の機会が減る事で「何に時間を使うのか?」が個人に委ねられます。この時間を勉強に使おうが、ゆっくり身体を休めようが個人の自由です。
ただ、僕には漠然とした焦りがありました。
このタイミングで「何かをしないといけない」「置いていかれるかもしれない」不安が芽生えました。
さらにフルリモートの環境に、最初は順応していたつもりでしたが、やはりオフラインとは異なる部分も多く戸惑う機会も増えました。

・テキストコミュニケーションによるすれ違い
・顔が見えない不安

オフラインでは様々な物事が「見えない」環境になり、逆にSNSでは周囲が見え過ぎてしまいます。周囲の活躍が目に入る度にじんわり焦りが増します。そして僕は日に日に「ないもの」を求めるようになりました

知識、スキル、物理的な環境etc
将来の資産、健康維持。もっと。もっと。アレが欲しい。コレが欲しい。
生き残れない。成長しないといけない。置いて行かれるかもしれない。

妻は相変わらずTVやお笑い番組を見て、楽しそうに過ごしています。その姿を見て、言いようのない”モヤモヤ”を抱えるようになりました。
将来をきちんと考えているのか?未来のために何かしているのか?」この不安定な状況の中、出来る事は多いはず。なのに、なぜ目の前の事しか見てないんだろう。

画像2

ある日。僕は自分の座椅子に座っていた”にゃもち”を横に置きました。
別の部屋にいて、リビングに戻ってきた妻が”にゃもち”に気付きます。

妻「また、ひっくり返ってる!にゃもちがかわいそうじゃん!」

不安やうっすらとした緊張、焦りに包まれながら過ごしていた僕の何かがフッと切れてしまいました。

僕「…確かに俺が悪いかもしれないけどさ。ぬいぐるみじゃん。そもそもぬいぐるみを買う意味が分からないんだよね。何の役に立つの?勉強だったり、健康維持だったり、何でもいいけど”ためになること”に使おうよ。TVやバラエティもいいけどさ、社会派のドキュメンタリー観るでもいいじゃん。これから世の中どうなるか分からないんだから、将来の事ちゃんと考えようよ」
妻「これからどうなるか分からないから、目の前の事を大事にして楽しもうとしてるんだけど」
僕「……」
妻「常に勉強して、努力してるのは凄いと思うけど、みんながみんなそうじゃないと思う。仕事終わって疲れた後に、ご褒美に美味しいもの食べたいと思ったり、一日の終わりに好きなぬいぐるみと一緒にTV観て笑って過ごしたいと思う人もいるんだよ」
僕「……」
妻「”ないもの”ばっかり欲しがってもキリがないよ。ずっとないものを求めて、焦るより目の前の生活に意味を見つけて、楽しむほうが幸せじゃない?」

ないものを求め過ぎるより”日常”を愛する

簡単に言うと焦っていたんだと思います。僕自身は就職が遅く、向いてるかもな、と思えた職業に出会えたのも30歳を過ぎてからです。世の中の凄い人に出会う度に自分ももっと「努力しないと、、」と思っていました。
リモートによって、見えない何かに不安を感じていたタイミングでもありました。そのタイミングで自分は”ないもの”を求め過ぎていました。

妻は、外出自粛が始まるとバジルを育てるようになりました。朝は日光の位置を気にして、水やりをしています。

iOS の画像 (1)

何も分かってないのは僕の方だったんです。
”ないもの”ばかりを気にして、外にばかり幸せを求めていました。
〇〇が手に入れば、生活が変わる。未来が保障される。安心して暮らせる。
未来のために現在を犠牲にする生き方をしていました

その日から妻と一緒に近所を散歩しています。
今まで気づかなかった道を歩くと、咲いている小さな花や、ふとしたタイミングで出会うネコ、知らなかったお店。日常の近くに新しい発見がたくさんありました。

一緒にバラエティ番組も笑って観るようになりました。今では少しだけお笑い芸人さんも分かるようになっています。
(妻は空気階段、僕はラランドが好きです)

僕も、僕たち夫婦も平凡です。
だからこそ、日常を愛そうと思いました。
ないものを求め続けるのではなく、日常にあるものを愛しいと思う気持ちや自分の周囲を大切にしていく重要さに気付かせてもらいました。

そして、改めて妻を大事にしようと思います。
僕と妻は性格が「違い」ます。その「違い」を愛していこうと。そして「違った」なら話し合えばいいんですよね。
(僕の考えを落ち着いたタイミングで妻に話したところ、妻もつみたてNISAをはじめる事になりました…!)

最近では”にゃもち”が僕の隣にいる機会も増えています。
触ってみると本当にふかふかで柔らかいんです…!しかも改めて見ると可愛い…!気づかなかった…!

僕は焦ったり不安になっていて「あるもの」が見えなくなっていました。
ちゃんと見回してみると、”幸せ”はすぐそばにあったんです。

iOS の画像 (17)

▼Twitterもやってます!

https://twitter.com/ux_market


最後まで読んでいただきありがとうございました! いただいたサポートは今後のnoteに活かすために使いたいと思います。 他のクリエイターさんへの支援や、書籍の購入に使い優しい世界を広めて行きたいです。