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私選高知の昔話

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自分の好きな高知の昔話です。
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記事一覧

槇山の不入山

槇山の不入山

今から五百年ほど前のお話。
現在の香美市物部町に伝わるお話。
この話には個人的に思い入れがありまして、と言うのも高知にお住まいでテレビをよく観られる方ならご存知かと思いますが、日曜日の朝7時15分からRKCで放送されている

土佐のむかし話

で、このお話を放送された回がありまして、もう何年か前だとは思いますが、かなり印象に残ってる回です。

子供の名前を悲痛な声で叫びながら森を駆け回る母親の姿が

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マケアレ

マケアレ

大豊町は大田口あたりのお話。
主に大豊町史など参照。

マケアレについて
嶺北の地方では現在でもマケアレという土地があり、この地には大きな蛇が居ると云われている。
そしてマケアレには祟りがあるとされ林業や農作業の際、掟を守らねばならなかったという。

船戸の薬師橋から500mほど下流の附近に
「くるめぎ(車切り)の淵」と称する底無しのように深い淵があり、この淵から更に100mほど下流へと降れば水田

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小僧ヶ淵

小僧ヶ淵

梼原町のお話

梼原町の四万川には、かつて小僧ヶ淵と呼ばれる昼間行くにも恐ろしい淵があったが、何度かの洪水を経て現在は浅瀬となっている。

ある時、仲の川に住む者がこの淵へと釣りに訪れたが先客が居た。

小僧が一人、岩の上から釣り糸を垂らし、淵を
凝視している。

この小僧に言い知れぬ気味の悪さを感じた釣り人は、

「小僧や」

と声を掛けたが、返事がないし、全くこちらを見向きもしない。

いよい

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大蛇天狗のおはなし

大蛇天狗のおはなし

旧土佐山村と土佐町を跨ぐ工石山はかつて不入山とされていた。

あるとき、土佐山村高川の医学生とその友人の学生2人で山を散策したら、祈祷札と見目麗しい大振袖が森の中にあるのを見つけた。

振袖は着古された様子がない真新しい物だったが、雨に濡れたように水がしたたり落ちていた。

よく見れば、何やら血の跡が付いている様子で、その下には大きな蛇のウロコが落ちている。

これを人に見せてやろう、と拾って帰る

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豆腐屋の女房のはなし

豆腐屋の女房のはなし

今回は高知市唐人町(とうじんまち)のお話です。

現在の高知市唐人町と高知市南はりまや町二丁目あたりまでかつて東唐人町、西唐人町と二町に別れていて、長宗我部統治の時代、朝鮮半島から土佐に入国した人達が山内氏入国にともない浦戸からこの地に移り住み豆腐の専売特許を受けて数多くの豆腐屋が軒を連ねていた。

天神橋

豆腐屋の女房
嘉永二年、西唐人町のとある豆腐屋の妻が亡くなった。
豆腐屋には四歳と六歳の

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山中山四郎の話

山中山四郎の話

現在の南国市上倉(あげくら)のお話。
皆山集より参照。

宝暦二年、上倉に山中山四郎という人物が居た。

とある日のこと、山四郎は何を思ったのか
身を清めて衣服を新しくし、出かける様子だった。

家内にどこへ行くのか問われるも、ただ

「行くところがある」

とだけ言い残し出て行った。

その日以来、山四郎は行方知れずとなる。

居なくなった日、山四郎の家はおろか近隣の人々まで大騒ぎとなった。

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夢幻御殿の秘曲と八十年後の供養

夢幻御殿の秘曲と八十年後の供養

今回のお話の前半は越知町の「大樽の滝」が舞台の話です。
以降、その話にまつわる史実の紹介に至ります。
これらのお話は越知町史や佐川町史から引用させていただきました。
大筋の内容は変更せず、ありのままに記載してますが多少、わかりにくい表現をわかりやすくしたりしています。

夢幻御殿の秘曲

越知町文徳から滝のある山を眺める。
右手の谷に大樽の滝がある。

大樽の滝のほとりは樹齢千年はあろうかという巨

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伊東甚五郎の話

伊東甚五郎の話

つい先日ツイートしたいの町寺川に伝わる
伊東甚五郎(いとうじんごろう)の話。

このツイートに関しては旧本川村の村史にあったものを引用しましたが、今回また別の書籍にて伊東甚五郎の話を知ることができ、今回はノートで紹介させていただきます。

伊東甚五郎記時代は江戸時代。土佐二十四万石
山内藩政の時代。

伊予と土佐との境を隔てる奥山に、寺川と呼ばれる地がある。

古くはこの地へと赴任する土佐藩士があ

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