続 久しぶりの次男のこと
次男の家に果物を届けた日。
次男の身体をマッサージしながら、ふと私の目に入ったもの。
テーブルの下に置かれた妊娠検査薬。
うつぶせのままの次男に聞く。
『…この妊娠検査薬なんなん。
どうしたん?彼女赤ちゃんできたん?』
『………』
『赤ちゃんできたん?』
『………』
黙っているので腰をパチパチ叩いて返事を待つ。
『…………。 …そやなぁ…できたなぁ。』
『いつ分かったん。』
『…あ…2日前かな。』
『彼女はなんて?』
『…産むんちゃう?』
『あんた彼女のこと好きなん?』
『好きやな。』
『彼女はあんたのこと好きなん?』
『好きやで。』
『そうね…それが一番大事なことよ。』
本心だった。不思議と私の気持ちは落ち着いていた。
お互い好きで彼女が産みたいと思ってくれてるならそれでいい。
『俺…向こうの親に嫌われてるんちゃうか。』
うつ伏せのまま次男はそう言った。
まだ相手の親に会ったことのない次男。
肉体労働、ボーナスなし、車の免許なし。
高校中退、タトゥーまである。
この数年の次男は、誰かに嫌われようと関係ない、誰の目も気にならない、分かってもらおうとも思わないというような、全てのレールから敢えて外れるように過ごしてきた。
そんな次男がこの日は小さな男の子だった。
『これからのあんたを見てもらうしかないやないの、お母さん応援するから、大丈夫、心配しなさんな。』と言い、次男も『うん。』と言った。
初めて子どもを授かったときにどんな言葉をかけられたかというのは一生心に残る。
好きな人や子どもを守らねばという責任感と、それでも実感がまだ湧かないような、なんともいえない様子の次男だった。
『お父さんだって最初はそんなやったよ、ちゃんとお父さんにも自分で話さんとね。』と言い、次男の家を後にした。
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