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対自という病[ソワカ⇸ミロク]

前略 ミロク様

満月も過ぎて、元気になるのかと思いきやなかなか体調が戻らないわ。わたしは元々引きこもるのが大好き。月曜日の定休日は久しぶりにお家でダラダラと充実した幸せな一日を過ごしたわ。魔女のスイーツも試食の域を超える程にここぞとばかり!鱈腹食べた。体調が戻らない、というよりは食べ過ぎなのね。美味しい甘味も適度な量にしないとダメね。体にくるもの。変なところで「いってしまえ〜」精神が出てしまったわ。
またこの日はミロクに教えてもらった耳鼻科にも行くことができた。産まれた時からアレルギー性鼻炎。それに加え、人よりも鼻の管が細い(狭い)とのこと。この数十年この鼻でやってきたのだから...と諦めていた。幼い頃は頻繁に中耳炎になっていたのでその都度耳鼻科へ連れて行って貰っていたの。今はほとんど耳鼻科に行く機会もなく、「息がしづらいんです」などという名目で病院にかかるのも気が引けたのだけれど、ミロクが鼻で息ができるようになったかも!と言うので遂に行ってきたわ。先生の前に座ると、「今日はどうされました?」と聞かれ、何てお伝えしたら良いのやら...苦肉の策で「妹が先生にいただいたお薬で鼻炎がマシになったと聞いたので一筋の望みをかけてきました」と何やら分からないことを口走って診察していただきました。お薬を飲んで3日経った今、実際鼻炎が良くなっているのかは謎だけれど、少しずつ”自分のこと”もメンテナンスする余裕が出てきているのが嬉しくてこちらでご報告した次第です。

前回のミロクからのお便りはこちらです。
まだお読みでないようでしたらぜひご一読くださいませ。

もちろん!のその先に

前回のミロクのお便りの中で「”こうなりたい””こうでありたい”と思えた人の感覚になれたら面白くないかしら”といっていたわね。明確にその理想像がある人はいいと思う。それがない人もいるのかもしれない。」とあった。
わたしも実際のところ、明確な理想像はないの。今までのお便りで何度も“どんな自分になりたいか”について話してきたのに肩透かしみたいで申し訳ない。

でも、”この人のここが素敵!”と思って取り入れることはしてきたわ。表現方法だったり、考え方だったり、小さなことから大きなことまで。これまた、お世話になった方が良く仰っていた言葉「もちろん」。わたしはいつからかこの言葉が好きになった。言われる側でも嬉しい気持ちになるし、言う側でも然り。
〇〇して良いですか?ー「もちろん!」”
良いよ”や”どうぞ”なんかより感覚的に良いなと思ったの。ミロクの前職の上司の方が良く仰っていた「何の問題もないです」も何だか良いわね。
そういった表現方法やこれは!と思った考え方を取り入れていった先に、”自分”が出来上がっていくような気がしているの。

アリエナシオン

高校生の時、何かの授業で”他有化”という言葉を知ったの。20世紀最大の哲学者・サルトルは知っているわね?彼は数ある哲学の中でも、神という存在に依存しない実存主義(無神論的実存主義)を展開する哲学者。
サルトルは、他者に見られることによって自分自身が規定されてしまうこと、自分の評価が他人のものになることを”他有化”と呼んでいるの。

NHK「100分で名著 サルトル 実存とは何か」でフランス文学者の海老坂武氏がサルトルにおける他者について、をまとめてらっしゃったの。参考になったので宜しければ見て頂戴な。

この世界での関係は、私と物、「対自」と「即自」との関係だけではない。他人がいます。その他人との関係をどう考えるか。対他存在で扱われていることです。他人とは一方で私が見ている対象ですが、他方では私を見ている主観です。そのとき私は相手の対象になる。「対他存在」とは、この他者から見られた対象としての私のことです。自分の意識の中に、「自分に対する」存在としての「対自」だけではなく、「他者に対する」存在としての「対他」があるということです。

この「対他存在」の中で”まなざし”が数多出てくる。他人とは自分にまなざしを向けている者とされる。『存在と無』の中ではまなざしを向けられること自体が「他有化」であると捉えられている。

この「他有化」の原語は「アリエナシオン」(aliénation)で、「疎外」と訳されている。元々「他人のものになる」「他人に譲渡する」の意で、サルトルの「他有化」は自分がつくった物の中に自分が認められない、自分がつくり出した物に逆に支配される、といった意で使われる。

先にもお伝えした通り、高校生の記憶。調べてみると、思っていた「他有化」とは少し違ったわ。けれど良い意味で捉えることもできる。わたしは、自分から離れた事象や意識は全て他者のものになると思っているの。自分のことを”わたしはこういう人間だ”と思っていても、他者から見た自分とは必ずと言っていいほどにズレがある。物でも言葉でも手放した瞬間、他者のもの。そして、この世の中一人では生きていけないわ。一つ一つの言葉や行動は他者がいないと生まれてこない。その中で自分の枠組みを模索している、そんな感覚で”どんな自分になりたいか”を考えているの。

こんなお話になるとまたまた登場の中村うさぎさんの「他者という病」(新潮文庫)を読みたいわ!どんな内容だったかしら...インプットの時間が必要ね!
ミロクは最近新しい本を買っていたわね。姉妹のスケジュール管理をしてくれているミロクさん。いつも本当にありがとう。読書の時間もスケジュールに入れておくれよ。

魏武注孫氏
分かりやすい注釈!

草々

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