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朝日

いつも朝は胃が重い。朝食を変えようか。彼は、誰よりも早く起き、その限られた孤独を愛し、米を洗って土鍋を火にかける。昨晩麹に漬けた魚を焼き、味噌は濾さずにお湯に溶き、四角いフライパンに溶き卵を流す。しばらくそういう生活をしていた。彼は早朝の孤独を愛し、土鍋に炊き立つ米の生命の輝きに、眩しさを計りかねて恍惚する。胃は未だに重い。

彼女はその米を食べると「うまい」と言って、その目に輝きを灯す。彼はそれを見て満足して、ウインナーを焼いて弁当箱に詰める。寝ていた方が片付けをするルールである。「洗い物が多い」と彼女は不平を漏らす。そう言われても出る物は出る。「おいとけば俺が洗っとくよ」と彼は言うが、「そういう問題じゃない、減らして欲しいの」ということらしい。これは次から適当に洗っておくしかない、と彼は思うが、しっかり洗い物は残されているのである。日が昇って雑踏に出ると、世界はすっかり輝きを失くす。

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