ランキング同盟

 美容院に来て、私の好きな髪型のベストスリーは、セミロングパーマ、ミディアムストレート、ボブだったっけ、と思ったところでなんだかもう嫌になった。髪の毛の中に自己嫌悪が詰まっている気がして、切れるだけ切ってもらった。長いところで三センチくらい。

 ペットボトルのお茶は日本人ならゆるりと好きな順位があるだろう。私は一位が緑茶、二位が烏龍茶、三位がほうじ茶、四位が麦茶、五位がジャスミン茶と決めている。

カレールーならジャワカレー(辛口)、バーモントカレー(甘口)、ゴールデンカレーの順かな。
きのこならブナシメジ、マイタケ、シイタケ、エノキ、エリンギとしておこう。

世の中、選択肢が多すぎる。細かいところは正直なんでもいいので、いちいち考えるのも疲れるし、決められないから適当な順位を付けているだけ。その方が楽なだけ。

コーヒーか紅茶ならコーヒー

パンかライスならライス

チキンorフィッシュとは聞かれたことない

何でもいいけれど、選んでるうちに私の輪郭が少しずつ描かれていく。そうやって出来た私の形は、私の投げやりな選択が所々いびつに見える。

「君は何でも、ぱっぱと決めるよね。自分の軸というか、こだわりみたいのがあって、そういうところが好きだよ」

以前付き合っていた彼にそう言われたときはびっくりした。でも私は私になるために、その私を受け入れていった。服のブランド、家電のメーカー、好きな作家、なんでも順位を付けていく、初めに見たものが1、次に知ったものが2、その次に聞いたものが3である。そうやってこだわりのないこだわりを育てていくと、だんだんがんじがらめになってくる。でも本当の私なんてものは幻想であって、ここにある私だけがホンモノなのである。「いいセンスだね」「私もそれ好きなんだ」と女友達に言われるたびに、それなのに息苦しい。

 ランキングをリセットしたくて髪を切った。悪くない髪型だと思った。ここにある私だけが本物だ。

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