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ひかりの素足(宮沢賢治)

*2022年3月朗読教室テキスト アドバンスコース
*2023年1月朗読教室テキスト ビギナーコース①

*著者 宮沢賢治

ビギナーコースは年間を通じて宮沢賢治を扱うので、この作品も通常であればビギナーに属すべきものであるのですが、そうではなくアドバンスに、そして3月に読む理由が確かにある、そんな作品です。2月に読んだ『水仙月の四日』とも類似していて、後の『銀河鉄道の夜』へと繋がっていく、宮沢賢治の死生観に触れられる作品です。
(2022年12月追記:2023年1月のビギナーコースに登場します!)


みちはいつか谷川からはなれて大きな象のやうな形の丘の中腹をまはりはじめました。栗の木が何本か立って枯れた乾いた葉をいっぱい着け、鳥がちょんちょんと鳴いてうしろの方へ飛んで行きました。そして日の光がなんだか少しうすくなり雪がいままでより暗くそして却って強く光って来ました。
 そのとき向ふから一列の馬が鈴をチリンチリンと鳴らしてやって参りました。

二章と五章の章題はどちらも「峠」です。『十力の金剛石』で王子と大臣の子が虹や蜂雀や金剛石の世界へ潜り込む入り口は「森」でしたし、『雪わたり』で四郎とかん子が狐の世界へ繋がった場所は「雪野原」でしたが、それらは地平での横移動だったことに対し、銀河鉄道ではジョバンニが夜空を走る鉄道へ乗り込んだり、この物語では「峠」を上り下りすることで物語が急展開していきます。それが、単なる異世界というだけではないことは、どちらの物語も主人公がともに過ごした大事な人が最後に死ぬことにも表れています。弟とともに吹雪からうす暗い国へ引き込まれ、鞭の音や叫び声の中必死に語(ことば)を唱えた一郎の方へ向かってまっすぐにこちらへ歩いてくる白く光る足は、一体誰だったのでしょうか。

3月、これから本格的な春を迎えようとする今の季節は毎年温まった空気と新年度の華やかさのすぐ脇で憂鬱がやってきます(同じように感じられる方は多いのではないでしょうか)。
「今年は春が早い」と、年明けにお会いした雪国の人達が話していました。世界が揺れてたくさんの不安が生まれる中、ひとりひとりの幸福をじっくり考えてみたいと思います。

3月のスケジュール

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