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『我輩は猫である』(夏目漱石)

*2023年2月朗読教室テキスト アドバンスコース
*著者 夏目漱石

吾輩は猫である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

以前にテキストで取り上げた『私の個人主義』では、イギリスに留学したものの、英文学とは何たるやと、漱石の「悶々とした様子」を明瞭な文章で読むことができ、「漱石みたいな天才でも自分と似たような悩みがあったんだなぁ」と親しみを覚えずにいられませんでした。そうして打ちひしがれた漱石が帰国の途につき、2年後に高浜虚子の薦めで書き始めた小説処女作が『我輩は猫である』でした。「我輩は猫である。名前はまだ無い」は、漱石自身のことを指していたのか、あるいはその意図がなかったとしても自身の心境にしっくりきたのかもしれません。

加えて1月に教室で取り上げた寺田寅彦が、この小説には登場します。水島 寒月、猫の飼い主である「苦沙弥(くしゃみ)」の元教え子の理学士で、苦沙弥を「先生」とよび、なかなかの好男子だと描かれています。実際に漱石と寺田寅彦も、熊本第五高等学校からの先生と教え子という間柄で、とても親交が深かったようです。

この小説は「山会」(正岡子規門下の文章会)で朗読され、皆に公表を得たと伝えられています。また、小説の中に「朗読家」という言葉が登場し、私が知るところでは一番古い「朗読家」の出現ともなっていて、「朗読」ととてもゆかりの深い作品でもあります。

2月のアドバンスコースは、夏目漱石の『我輩は猫である』。
朗読の、あるいは文学の原点のようなこの作品を、ご一緒に朗読してみませんか。

2023年2月のオンラインレッスン


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