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『私の個人主義』(夏目漱石)

*2022年2月朗読教室テキスト②アドバンスコース
*著者 夏目漱石

私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼ら何者ぞやと気概が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実のこの自我本位の四字なのであります。

大正三年十一月、漱石が学習院にて講演を行った際の講演録です。今から100年以上前に、50代を迎えた漱石が大学生を前にして語ったことは、まるで今もう目の前に漱石が現れて、わたしの反省を眺めて諭してくれているような、そんな不思議な数ページでした。

物事を進める時に気になる他人の目。いつからそんな「本当はどこにもないもの」を物差しにするようになったのでしょうか。ふと頭に浮かび、とってもよい案だ!と思っても、それを相手に投げかけようかどうしようか迷い、躊躇しているうちに時間が過ぎていく。手の中のボールは、投げられないまま消えてゆくのです。それどころか、「何者かになりたい」と願うことそれ自体が他人軸であることもしばしば。身についた「他人軸」の癖を、どうやって自分軸に戻すことができるのでしょうか。

幾分かは解けて楽しい毎日を過ごしている、と思っている今の自分も、この漱石の言葉をいちいち噛み締めています。漱石の場合は「英文学」という他国の土壌へあがらなければならなかったのですから、なおさらです。

2月のアドバンスコース、テキストは「私の個人主義」です。講演録より一部抜粋して、漱石先生に若者の気持ちで人生論をお話しいただきます。「個人主義」という言葉の本当の意味を考えてみたいと思います。

2月のスケジュール

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