見出し画像

UXデザインプロセスのちょっぴり細かい話〜前編〜

「そもそも、UXデザインってなんなの?」という、ざっくりとしたお話を書いたので、今回は各フェーズに対して、もう少し細かい話をしようと思う。

1. 全体像

細かいフェーズの分け方は、現場によって違う場合もあるかもしれないけれど、だいたい、下図のようなプロセスがスタンダードかと思います。

画像5

正しくものをつくるための前半パートは、ユーザーについてたくさん発見をして、どんなユーザーがそのサービスのユーザーなのか、どんなインサイトの持ち主なのかを定義します。

実際に正しくものをつくる後半パートでは、前半で定義したユーザーに向けてのアイデアを出します。そして、最終的に評価ができるよう、カタチにします。

全部書くと長いので、今回は前半半分だけ。

2. ビジネス要件定義

一番最初に行うことです。仕事でUXデザインを行う場合、必ず、ビジネスゴールや、プロジェクトの背景や目的があります。

また、すでにターゲットユーザーのセグメントがはっきり決まっていることも、けっこうあります。(決まっていない場合は、デスクリサーチなど事前の調査が必要です。)

それらをヒアリングしていって、(受託の場合はクライアント、自社サービスであれば、依頼元の部署や上長など話を持ってきた人に訊きます。)UXデザインのプロジェクトとしてのゴールや、対応範囲、などを明文化します。

たまに、「老若男女すべてに使って欲しいので、ターゲットはすべてです」という方がいらっしゃいますが、年齢や性別、置かれている環境が違うと、ユーザーが求めるものは変わってきます。

画像1

例えば、同じ「30代女性」であっても、独身か既婚か、ひとり暮らしか、誰かと同居をしているか、収入が多いか、少ないかで、ライフスタイルや自分にかけられる金額などが変わってきます。
他にも、共働きか、専業主婦かで、ライフサイクルや時間の使い方が変わってくるでしょうし、子どもの有無や、子供がいる場合でも、赤ちゃんなのか、幼児なのか、小学校低学年なのか、高学年なのかで、いろいろ変わってきます。

「みんなに使って欲しい」という気持ちは一旦横に置いておいて、まずは、やりたいビジネス領域において、どういう戦略で自分たちは戦うのか、どういったポジションに立っているのか(もしくは、立ちたいのか)を考えます。そうすると、自ずと、どこのセグメントをターゲットにするべきかが見えてくると思います。

3. ユーザー調査・分析

ビジネス要件がはっきりしたところで、どういった人に、どのように調査を実施するかを、まずは設計します。

この時、「30代女性」のような、バックリした条件ではなく、サービスに影響を与えそうな外的要因や内的要因も加味して、どんな人に調査を実施するのが効果的かを考え、リクルーティングの条件に追加します。

調査にかけられる予算にもよりますが、ジャストなターゲットユーザー以外の調査をすることもあります。例えば、既存のサービスであれば、競合他社のサービスを使い続けている人であったり、違うツールを代替している人、変な使い方をしている人などです。

これらの人に調査をすることで、ターゲットユーザーしか見なかった時には気づけない新しい発見がたくさんあったりします。そういった発見は、ターゲットユーザーのインサイトを浮き上がらせてくれることもあります。

画像2

インタビューにしろ、行動観察にしろ、調査対象者がひとりだけだと、たまたまその人が特性として持っていたものなのか、同じセグメントの人が持つ共通の価値観や利用文脈なのかが判断がつきません。

数がたくさんいればいいというわけではないですが、(多すぎると分析がメチャクチャ大変ですし、一定量を超えると、新しい発見が徐々に減っていきます。)同じセグメントのユーザーを、最低3人に調査するという方が多いように感じます。

個人的には、同じ予算であるなら、同じセグメントのユーザー6人に対して調査をするよりは、同じセグメントのユーザー3人、違うセグメントのユーザーを3人など、より多くの発見をしにいく方が効果的かなと思っています。

UXデザインの場合、ユーザーのインサイトを元に体験を設計します。

画像5

インサイトは上図のように、意識として顕在化していない部分になります。
顕在化していない分、インサイトを知るためには、背景や理由など、ユーザーのポイントとなる行動の深堀りをしていく必要があります。

たまにアンケート調査とインタビューがごっちゃになっている方を見かけますが、アンケートは定量調査、インタビューは定性調査で、性質が異なります。

アンケートは、質問者が用意した回答の中から答えを選択したり、質問者側が用意した設問に対して、長文で回答をしたりします。前者は、質問者が想定していない答えがひじょうに拾いづらく、後者は設問を見て、回答者が意識に上ったもの、かつ、書いてもいいなと思ったものだけ書かれるので、拾えるのは、顕在化したニーズだけになり、インサイトは拾えません。

対して、インタビューや行動観察などは定性調査にあたります。ユーザーが言語化できない部分を観て取ったり、対話形式で質問と回答をやりとりすることで、ユーザーの意識に上がってきていなかった価値観などに焦点をあてることができるので、UXデザインのこのフェーズで使われます。

調査結果は、セグメントのグループごとに分析をします。分析方法はいくつかあります。分析結果を価値マップとして提出をしたりしています。

4. ユーザーモデリング

続いて、モデリングです。いわば、ユーザーの要件定義書です。
分析をした時点でインサイトは出ていますが、一旦ここで、ユーザー像を明文化します。

画像3

同じセグメントのユーザーグループごとに、ペルソナをつくります。ペルソナは、ユーザーの価値観や利用文脈を人軸でまとめたものです。
ペルソナをつくる時、1人しか当てはまらないものは、その人固有の特性かもしれないので外します。リクルーティングと調査がきちんとできていれば、不思議と1人にまとまります。

ユーザーモデリングで、もうひとつ有名なものは、カスタマージャーニーマップですが、こちらは、ユーザーの価値観や利用文脈を時間軸でまとめたものです。

このフェーズでつくるジャーニーは、現状を可視化したもの(As is)になります。ユーザーの行動軸を基準にまとめていき、ユーザーの行動の中で、ペインやゲインになるポイントを探っていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?