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オンライン・インプロショーは「役者の悪夢」である

ショーン・キンリーのニュースレターによると、キース・ジョンストンはオンラインでのインプロレッスンをしているらしい。

僕はその様子にとても唸らされたので、少し引用したい(日本語は英語の下に)。

Here's an example taken from a rehearsal last week with Keith Johnstone and some improvising friends.

The exercise is an online variation of the Word At A Time storytelling between two performers. In this version, a "director" stays on screen. The two performers focus on trying to PLEASE the director. The director stops the performers if she isn't pleased with the story. The director is not there to perform or to make the storytellers jump through hoops. If the director isn't honest, the presentation falls flat and feels affected.

When the Director is honest and says what she sees-

"I am not pleased! Why wouldn't you go into the water if you are just standing there in front of it!"

-then it starts feeling alive, honest, and a little dangerous. The performers try again playing at the top of their game and with an honest feeling, connecting to the person they are trying to inspire.

Most performers are "Performing" but good clowns and good improvisers respond and react truthfully and obviously. That's the real risk I think.
ここでは、キース・ジョンストンと何人かのインプロバイザーが先週リハーサルで行った例を紹介します。

このエクササイズは、二人で行われるワンワードのストーリーテリングのオンラインバリエーションです。 このバージョンでは、「ディレクター」が画面に残ります。二人のパフォーマーは、ディレクターを喜ばせることに焦点を当てます。ディレクターは物語に満足していない場合、パフォーマーを止めます。ディレクターは演技をしたり、ストーリーテラーをどうにかさせるためにそこにいるわけではありません。 ディレクターが正直でない場合は、パフォーマンスは平坦になったと感じられます。

もしディレクターが正直で、彼女が見たことを言うなら――

「私は満足していない!なんで水の前に立っているだけで入らないんだ!」

――すると、生き生きとした、正直な、そして少し危険な感じが出てきます。パフォーマーはインスパイアしようとしている相手とつながりながら、正直に、最高の状態でもう一度演じようとします。

ほとんどのパフォーマーは「パフォーマンス」していますが、良いクラウンや良いインプロヴァイザーは、本当らしく(truthfully)、明らかに(obviously)、反応します。それが本当のリスクだと思います。

これを読んだ僕の感想。

「いやぁ、キース・ジョンストンはいまだにクリエイティブだな~。やっぱり創始者は違うなー。ゲームを作った理由を本当に知ってるんだな―」

と熱くなった僕は置いといて……笑

僕はこれを読んで、オンラインでのインプロを見てきたときの違和感を明らかに(obvious)された感じがした。

オフラインのインプロではお客さんの反応(もしくは無反応)が見えるから、退屈なシーンを続けるのは難しい。一方で、オンラインのインプロではお客さんの反応が見えないから、退屈なシーンでも延々と続けることができる。だからお客さんは退屈していても、プレイヤーは「楽しかった(全然つらくなかった)」ということが起きやすいと感じている。

これはプレイヤーにとっては「楽」なことだけれど、それではいいインプロバイザーは育たない。

インプロゲームには「役者の悪夢」というゲームがある。これはプレイヤーが舞台の上でパフォーマンスをして、それを見ているお客さんが「もういいや」と思ったら後ろを向くというゲームである。そして半分以上が後ろを向いたら終了という、まさに悪夢のようなゲームである。

オンラインのインプロショーは、その「楽」の代償に、全てこの「悪夢」の構造を持っている。オフラインのインプロショーではたとえ退屈でも途中でお客さんが抜けることはほぼないが(キース・ジョンストンは途中で帰るらしいけれど笑)、オンラインのインプロショーでは退屈だと思ったらワンクリックで抜けられてしまう。

昨日・一昨日の『Impro for Storytellers』ワークショップでは、「お客さん代表」を置いての「次どうなるの?(What Comes Next?)」をたくさんやった。これはプレイヤーが画面上でパフォーマンスをして、それを見ているお客さん代表が「もういいや」と思ったらビデオをオフにするというバージョンである。そしてこれはプレイヤーにとってもお客さんにとっても学びの多い方法だと分かった。

幸いなことに、このスタイルはオンラインでのほうがやりやすい。オフラインの「後ろを向く」「出ていく」というアクションはプレイヤーへの影響がとても大きい。しかしオンラインの「ビデオをオフにする」というアクションはそれに比べると影響がかなり少なく、なんならちょっと滑稽ですらあるので、プレイヤーは傷つきにくい。

総じて、オンラインでは客観性が重要になると感じている。オフラインでは客観的にはグダグダでも、やっている当人たちのエネルギーだけでもどうにかなったりするが(たぶんキースはそれだと帰るけど笑)、それは画面越しだと伝わりづらい。

僕はインプロの舞台は「誰もが輝ける場所」であってほしいと考えているので、この状況が理想的だとは思わない。しかし、理想的ではない状況でもそれを受け入れて進んでいくのがインプロバイザーだとも思っているから、この状況の中でできることを、楽しんで試行錯誤していきたいと思っている。興味のある人は一緒にやりましょう!

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