見出し画像

韓国へ観劇旅行に行ってきたので、小劇場を観てきた感想を書いておくよ

今年の初めに「そうだ、韓国に観劇に行こう」と思い立って、HISの初夢ツアーを使って2泊3日の韓国観劇旅行に行ってきた。せっかくなので、その感想を書いておこうと思う。

ちなみに、筆者は日本でちょっと演劇に関わっているので、わりと創作者視点の感想が多いかもしれない。その点はご了承を。

今回の観劇旅行では、1日目に大劇場でミュージカル『レ・ミゼラブル』を、そして2日目に大学路(テハンノ)で小劇場を3つ観た。

大学路はソウルにある小劇場の街で、日本で言う下北沢みたいな所である。ここらへんの紹介は次の記事を参考に。これらの記事は今回の旅行でもとても参考になりました。感謝!

レ・ミゼラブルの感想は別の記事にしたので、ここでは小劇場の感想を。


『キム・ジョンウク探し』

1つ目は『キム・ジョンウク探し』。ラブコメミュージカルと、色々詰め込んだ作品。チケットは当日ボックスオフィスで買って2万ウォン(2,000円ちょっと)。150人くらい入れる劇場に4割くらい入っていた。あと舞台端のテレビで日本語字幕を出してくれたので、物語もほぼ完璧に分かった(ありがたい)。

2006年の作品(すごいロングラン!)なのでさすがに古さは感じたけど、よくできたミュージカル小作品だった。キャストは3人だけで、3人目の人がひとり10役くらいやって成立させるという楽しい仕組み。この俳優さんは歌も踊りもコメディもできて、めちゃくちゃ達者だな~と感心した。主役のふたりも、さすがに昨日のレミゼのような圧倒感はなかったけど、とても上手だった。

これで2万ウォンは満足度高いというか「安すぎ」と思った。

『屋根部屋の猫』

2つ目は『屋根部屋の猫』。10年間人気があるラブコメ作品。チケットは情報センターで割引チケットを買ってなんと1万ウォン(1,000円ちょっと)!200人くらい入る劇場にパンパンで入っていた。下北の駅前劇場みたいに狭い劇場。ネット情報だと字幕があるとのことだったけど、今は無くなったようで韓国語で観劇。

結果、めちゃくちゃ面白かった。言葉が全く分からなくても新喜劇くらい笑ったし、かわいい&かっこいいもあったので、人気あるのも分かるな~と思った。言葉が全く分からなくてもやってることの8割は分かる素晴らしいストーリーテリング。

あと主役の男の人が有名な人みたいで、その人が腹筋を見せたりビンタされたりキスをしたりするたびに客席が「ワー」「キャー」となるのも面白かった(本人も笑ってた)。僕は演劇のスターシステムはあんまり良くないと思っているけれど、このインタラクションは面白かったし、商業演劇は本質的にスターシステムなのかもと思ったりした。今回は、その人を全く知らないからこそ客観的に見れたのが興味深かった。

この作品も脇を固める二人がこれまた8役くらい演じていてお見事だった。1つ目の作品もそうだったけど、ラブコメは「主役の男女だけ固定、あとの役は少人数でまわす」という定番パターンがあるのかな。

とにかく面白かったのでキャスト違うバージョンも観てみたいと思ったし、「ロングランを目指した作品ってこういうことか」と思った。まだ数年はいけそう。

『本当に悪い少女』

3つ目は『本当に悪い少女』。さすがにラブコメにお腹いっぱいになってきたので、最後はシリアスなストレートプレイを観てきた。チケットは当日ボックスオフィスで買って1.5万ウォン(1,600円くらい)。200人くらい入る劇場に8割くらい入っていた。こちらは赤坂レッドシアターのように快適な劇場。

僕は開演15分前に飛び込みでチケットを買ったのだけど、それより後ろの席にまだ30人くらい入ってきたので、当日券文化がすごいなと思った。字幕は無いので、韓国語で観劇。

結果、こちらは全然内容が分からんかった(笑)サスペンススリラーなので分かんないだろうなと思って行ったけど、思った以上に分からなかった(時系列が飛ぶんだけど、それがどこなのか分からない)。

とはいえ、こちらはそもそもストーリーよりも演技を観に行ったので、それでいうとみんな上手だったし、俳優がやりがいを感じそうな作品だなぁと思った。Netflixでやってるような法廷ドラマを舞台にしような雰囲気があった。

思ったこと

まずはチケット安すぎなので、もっと高くしてほしい。具体的には、今の値段は学生料金として残して、大人は倍にしていいと思う。少し前のものだが、植松侑子さんの記事によると、小劇場の俳優はギャラがほとんど出ていないようなので、ギャラを出せるような構造になってほしいと思う(これは日本の小劇場も同じだが)。

あと印象に残ったのは、「ロングランを目指した作品はこうなるのか」ということだった。今回観た3作品の中で一番日本の小劇場でもありそうなのは『本当に悪い少女』だったが、逆に言うとこの作品が一番ロングランっぽさが無かった(実際2023年3月からなので、大学路だとまだ新しいほう)。

反対に『キム・ジョンウク探し』『屋根部屋の猫』に関して言えば、「ロングラン狙い以外の何物でもない」という感じだった。ただ、こういう作品が日本の小劇場にあるかというと、「ベタすぎて逆に無いなぁ」と思った。

言い方を変えると、大学路の演劇はドラマや映画と接続していると感じた。ラブコメは韓国ドラマの定番だが、同じように小劇場でも定番になっていた。日本でもラブコメはドラマの定番だが、小劇場ではほとんど無いというのが興味深いと思った。

これは善し悪しの話ではない。日本の小劇場は「今この瞬間」を「小劇場ならでは」の表現で見せることが多くて、それはアート的にはむしろ正解かもしれない。一方、ロングランに向くような作品はあまり無いし、そもそもそういう視点で創ってないかも(だってロングランできる構造が無いから)、という発見があった。同時に、「ロングランを目指して創ったらどういう作品が生まれるのだろう?」という問いも生まれた。

というわけで韓国観劇旅行はこれでおしまい!単純に旅行としても楽しかったので、年に1回くらい行けたらいいなと思っている。またその時まで。

最後までお読みくださりありがとうございます!サポートは今後の活動に使用します。