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学部3年生が振り返るコロナ禍での後期課程進学

影響が少なかった世代
私は現在学部3年生のピアサポーターだ。現在学部3年という学年は正直なところ、コロナ禍で最も影響の少ない学年だと思っている。というのも、東京大学では、学部1、2年生は前期課程として駒場キャンパスで活動し、進学選択といった制度を経て3、4年で所属が完全に変更されるからだ。そして大体の学生は余裕をもって進学選択を迎えるために1年生で前期課程の単位を取りきってしまう。2年の内は後期課程の単位取得に制限がかかるので通常の場合、インターンやサークルなど各々のやりたいことに打ち込むのである。東大においては最も余裕があるといえる学部2年にコロナ禍最初の1年を過ごしたという意味では最も影響が少ない世代と言えるだろう。もちろん失ったものは決して少なくはないけれども感染症前を知らない2年生より下の世代や後期課程最初の1年を厳しい制限下で暮らさなければいけなかった4年生と比べればその影響が少なかった世代であることにほっとしたことも確かである。


対面活動の緩和
後期課程に進学した2021年は世の中の制限が緩和されてきた1年であった。もちろん東京大学においても、段階的に対面授業が再開され、キャンパス内の入構制限も徐々に緩和されてきたと言えよう。感染症以前のような状況に回帰してきており、喜ばしい1年だったという人も多いだろう。しかし、私にとっては制限緩和に振り回された1年であった。
そもそも対面の活動のメリットとは何であろうか。1つには、文献を利用しやすくなることが挙げられよう。授業のために必要な論文、文献は図書館や研究室で手に入れることができる。依然としてあらゆる文献がオンラインで手に入るわけではないために、対面で図書館、書庫が利用できる環境の方が学習・研究のために優れた環境といえるだろう。また、仮にオンライン下であらゆる文献を手に入れることができたとしても書棚を実際にブラウジングすることで思わぬ資料が手に入ることもある。他にも対面活動においては人間関係を深めるという点でも大きな効果があるといえる。オンライン上で名前のみ目にするよりも、実際に対面で人と会う方が授業外での交流にもつながるだろうし、教員にも授業後に質問しやすい。
対面活動が緩和されてきた2021年において私はこのメリットを実感することができた。昨年度も後期課程の授業をいくつか受講していたのだが、対面でいくつかの授業を受けるようになってから所属の同期の学生をしっかりと認識することができるようになったし、教員にも質問がしやすくなった。3年になって授業のために論文を読まなければならないことも増えたのだが、昨年度の厳しい制限下では十分に文献を手に入れることはできなかっただろうと感じる。


移行期ゆえの戸惑いと新たな決意
このように対面活動の緩和という情況を享受することができたのであったが、一方でこの状況は新たな格差を生み出しているということを実感する。これは、対面への移行期特有のものであろう。実のところ、私は感染症を恐れ、対面活動にはどちらかというと慎重なタイプである。そのため、今年の前半は対面の授業に参加していなかった。卒業することのみを考えれば、オンラインの授業のみで十分なのである。しかし、対面活動に参加する同期の学生の様子を聞いていると、学習効率の差を実感してしまった。対面活動を通じて実力をつけている同期に対して、自分が置いていかれているように感じてしまったのである。自分にやる気が無いわけでは決して無いと思っていたのだが、感染症への慎重さよりも質の良い学びをとったほうが良いのではという不安に襲われることが多くなった。そこで秋からは覚悟を決めて、対面の授業にも参加するようになった。そして、実際に上に挙げたように対面活動で得られる学びは非常に大きいと感じたのである。すると今度は、今年度の春からすぐに対面活動に参加していればよかったと後悔することも多くなってしまった。そこまで気にすることでないとは分かっているのだが、ふとした時にそのような感情が襲ってきてしまうのである。感染症への態度は人それぞれではあり、定まった正解はないと思う。しかし、全員が絶対に対面活動に参加できず、環境を恨んでいい状況ではなくなってしまった。対面の活動の参加の有無が、明言はされずとも積極性に代ってしまう状況になってしまったのである。コロナ禍の2年間で感染症下の生活に徐々に慣れてしまったことは確かだが、頑張って無理矢理にでも慣らしていったという表現のほうが正確だ。事実、私自身を振り返ってみた時に去年よりも今年のほうが遥かに活動的になっている。これは決して対面活動が安全になったからという理由のみではないのである。
対面活動が再開されてきた今年度であっても図書館の開館時間など、依然として一部の制限は続いている。果たして来年度はどこまでの制限緩和が許されるのだろうか。来年度はいよいよ4年生になり、大学での学問のラストスパートに突入する。自分の気持ちと社会の変化を慎重に観察しながら、来年度を迎えたい。


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